ALP

ALPはアルカリ側(pH が9.8 付近)に至適活性をもつリン酸モノエステル類を加水分解する酵素です。γ-GT,LAPとともに、肝胆道系酵素と呼ばれ、閉塞性黄疸や肝内胆汁うっ滞の指標となります。一方、骨の活動性とも強く関係しており、小児期のALPの主体は骨性ALPである。その他、胎盤や小腸でも産生され、ALP の上昇原因を調べるには、アイソザイムの測定が必要となります。

一般的に、GOTやGPT、γGTPなど他の肝機能異常も伴っていれば、その解釈はそう難しくはありませんが、検診などでALPだけが高値である場合は、臓器や病態により下記の6 つの異なるアイソザイムが認められ、鑑別診断上、重要です。

 

1型は肝由来で肝管上皮の膜にあり、胆管の内圧上昇で胆汁中に排泄される。閉塞性黄疸で上昇します。健常人には存在しません。
2型も肝由来で肝細胞疾患、胆道疾患で上昇、健常成人にもあります。
3型は骨芽細胞由来で、健常人でもありますが、小児で高くなります。
4型は胎盤由来で妊娠後期に上昇します。
5型は小腸由来で肝硬変や血液型でB型、O型の分泌型で上昇します
6型は通常認めませんが、免疫グロブリンと結合します。

 

あるふぉすあいそざいむ

ALPの健常成人では2型と3型が主体です。肝臓、胆道系の疾患では1型と2型が増えます。1型は、通常は健常では見られないのであると異常です。閉塞性黄疸(1型)を考えます。2型もGOTやGPT、γGTPなど他の肝機能異常も伴っていれば肝炎、肝癌(主に2型)薬剤性肝障害(2型)などを考えます。閉経後の女性では2型3型の増加を認めます。(女性ホルモンの変化と関係)3型が高値の場合は、骨折、骨粗鬆症、がんの骨転移などの可能性があり、甲状腺機能亢進症(骨代謝の亢進)でも3型が増えます。また、小児の一過性ALP上昇(成人の2〜4倍、20倍以上になる場合もあり)は3型の割合が多くなります。正常妊娠後期には4型が基準値の2〜3倍になります。5型は小腸型で、肝硬変や腎不全(代謝の遅延)糖尿病で上昇します。また、血液型がB型とO型の分泌型で、特に脂肪食の摂取後に上昇します。極端に高い場合は、家族性高ALP血症を疑います。肝または骨由来のALPが免疫グロブリンと結合したものが6型です。潰瘍性大腸炎の極期に出現しやすいと言われています。

一過性高ALP血症とは、ALPアイソザイムの1型と2型の中間位に認めることが特長とされていて、発症頻度は10歳以下の小児科外来の約0.7%と言われ、好発年齢は3歳くらいまでの乳幼児で、嘔吐や下痢などの消化器症状、発熱、咳などの呼吸器症状を伴い(全く症状のない症例の報告もあり)RSウイルスやロタウイルス、サイトメガロウイルス、水痘などのウイルス感染との関係が示唆されています。小児期は骨の成長に伴い、骨型ALP(3型)が上昇するため、1歳〜思春期では成人の3〜4倍、成長期のピークは成人の4〜6倍にも達します。しかし、稀に成人の10〜30倍の異常高値を示す症例があり、一過性ALP血症と呼ばれています。症例の多くは、乳幼児から小児に見えられますが、成人でもみられます。一過性の上昇であり、数ヶ月で戻るので、3〜6ヶ月後に再検して頂ければと思います。

 

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ALPと血液型

血液型というとABO式やRh型が有名ですが、分泌型、非分泌型というのもあるようです。B型またはO型で分泌型の人は、小腸由来のALP(アイソザイム3型)その中でもノーマル分子サイズのALPは、半減期が短く(4時間ほど)脂肪食後に、小腸から血中に分泌されて、3倍ほどに急激に増加して(個人差あり)ALPが高値となりますが、病的なものではありません。

 

体内で産生されるビリルビンの約75%はヘモグロビンのヘムに由来し、その他、菌のミオグロビン(15%)カタラーゼやチトクローム(10%)寿命となった赤血球の多くは血管外で溶血し網内系(肝臓、脾臓、骨髄)で処理される。一部(約10%)の赤血球は血管内で崩壊し、ヘモグロビンは遊離し血中ハプトグロブリンと結合し網内系に運ばれる。網内系マクロファージ内でヘムとグロビンに分解される。ヘムはビリベルジンから非抱合型ビリルビンに代謝されて、血中でアルブミンと結合して肝臓に運ばれる。肝細胞内に取り込まれてミクロゾームグルクロン酸抱合されて胆汁中に放出される。胆汁中に放出された抱合型ビリルビンは腸内細菌によりウロビリノーゲンに代謝されてその20%は腸から再吸収されて肝臓にて処理される。一部は肝臓から体循環を循環して腎臓から排出されて尿ウロビリノーゲンとなる。