注意していても起こってしまうのが、針刺し事故。やってしまった…どうしよう…! とにかくパニックになるかと思いますが、そんな時こそ慌てずに、適切な対応を取れるようにしましょう。

 

 

針刺し事故が起こったら、うろ憶えの知識ではなく「針刺し事故対応マニュアル」に従って対処しましょう。

 

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針刺し事故
(1)針に血液等の汚染がある場合

まずは落ち着いて、直ちに「針刺しした部位」を大量の水道水で十分に洗い流してください。この時血液を絞り出すように、押し出しながら洗い流しします。

 

傷口の洗浄後は直ちに院長へ報告してください。不注意で起きてしまったミス。報告するのってすごく勇気がいりますよね。できれば報告したくないな…「このまま報告しないでおこうか…。」と頭をよぎるかと思いますが、必ず報告して下さい。後々、針刺し事故を起こしてしまった後悔よりも「報告しなかった後悔」の方が自分自身を苦しめてしまいます。

院長に報告し、「針刺し事故報告書」に記入して下さい。「いつ」「どこで」「誰が」「どういう状況で」「どのようにして」起きた事故なのか出来るだけ詳しく具体的に書くようにしてください。今回起きた事故を報告する事で、他のスタッフと状況を共有する事ができ、同じミスが二度と起こらないよう、再発防止になりますし、対策がとられるきっかけともなります。

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針刺し事故報告書

 

まず、職員がキャリアかどうかを調べるために、血液検査を行いましょう。(労災扱い)
HBs抗原、HBs抗体、HCV抗体、HIV抗体、GOT、GPT、LDH、ALP、γGTP、T.Bil(ただし、HIV抗体は、職員本人の承諾を得る)

既に、職員がキャリアであることがわかっている場合、HBs抗原陽性もしくはHBs抗体陽性(16倍以上)HCV抗体陽性、HIV抗体陽性は、
新たな感染の可能性はありません。

次に患者さんがキャリアかどうかを調べるために、血液検査を行います。

患者さんに承諾書にサインしてもらう。(本人がサイン出来ない場合は、家族にサインしてもらう(電話でも可)
HBs抗原、HBs抗体、HCV抗体、HIV抗体(1年以内の血液検査結果があれば、有効する。ただし、HIV抗体は、患者背景から院長が判断する)

*患者さんが、感染症の採血を拒否した場合
院長が、HBV感染、HIV感染のリスクが高いと判断した場合、さらに何回か患者さんの説得して検査の承諾を得られるように努力するもどうしても同意が得られない場合は、職員と相談の上で、抗HBグロブリンの筋注を考慮、もしくは姫路医療センターへ相談する。

 

患者さんが、HBs抗原(+)の場合

職員もHBs抗原陽性もしくはHBs抗体陽性(16倍以上)のときは、新たなB型肝炎の感染の可能性はありません。
職員がHBs抗原陰性かつHBs抗体陰性の時、B型肝炎感染の可能性があります。

職員は、「輸血・血漿分画製剤に関する説明、同意書」に署名してから、抗HBグロブリンを、48時間以内に筋注する。

HBワクチンを、直後(1〜2日以内)、1ヶ月後、3ヶ月後の計3回皮下注する。

事故直後、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月後に職員の採血を行う。
HBs抗原、HBs抗体、GOT、GPT、LDH、ALP、γGTP、T.Bil

(これらは、労災扱いとして、カルテに記載する)

 

患者さんがHBs抗原陰性、HBs抗体陽性、HBc抗体陽性(患者さんのアナムネーゼで肝炎の疑いが強ければHBc抗体まで検査しておく方が無難かも)の感染治癒後と判断される場合は、血液中に感染力のあるHBV-DNAが存在することがあるので、患者さんのHBV-DNAを高感度のリアルタイムPCR法を用いて測定し、HBV-DNAが陰性であれば、針刺しによる感染は心配ないど思われます。HBV-DNAが陽性であれば、抗HBグロブリンを打つことで感染防御可能です。

 

患者さんが、HCV抗体陽性の場合

職員もHCV抗体陽性のときは、新たなC型肝炎の感染の可能性はありません。
職員がHCV抗体陰性(もしくは不明)の時は、C型肝炎感染の可能性があります。

現在のところ、C型肝炎の予防する方法はありません。

事故直後、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月後に職員の採血を行う。
HCV抗体、GOT、GPT、LDH、ALP、γGTP、T.Bil

(これらは、労災扱いとして、カルテに記載する)

 

患者さんが、HIV抗体陽性のとき

職員もHIV抗体陽性のときは、新たなHIVの感染の可能性はありません。
職員がHIV抗体陰性(もしくは不明)の時は、HIV感染の可能性があります。

HIVの検査は、迅速キットでも常備していないと検査結果がすぐにわからないため、事故後、2時間以内に予防服薬をすることは現実的には困難です

すぐに、姫路医療センターに連絡、対応をお願いする

 

針刺し事故の患者さんが特定出来ない(感染源が不明、例えば医療廃棄物での針刺し事故等)の場合(p16 別紙10)

職員がキャリアかどうかを調べるために、血液検査を行いましょう。(労災扱い)
HBs抗原、HBs抗体、HCV抗体、HIV抗体、GOT、GPT、LDH、ALP、γGTP、T.Bil(ただし、HIV抗体の検査は、職員本人の承諾を得る)

2ヶ月後に同じ内容で採血を行う。(HBVやHIVの潜伏期を考えて確認のため)

有病率と感染率の計算からは、HBV約0.8% HCV約0.03% HIV約1.2×10-5%と推定され、感染の可能性は低いと考えられます。よって、感染源不明な針刺し事故の場合は、HBVのみが問題となりますが、抗HBグロブリンについては、HBVの感染を90%防ぎますが、高HBグロブリン自体が血液製剤であることからアレルギーや未知の感染症への感染の問題もあり、接種は勧められていません。職員が強く希望した場合のみ個人の責任で接種を受けることとする。今後の感染予防のためには、HBワクチンの接種を行うことが勧められています。

以上ここまでを針刺し事故発生後、30分以内を目標に行う。

 

 

針刺し事故を起こさないためには

リキャップをしない事
針刺し事故で最も多いのは、リキャップ時です。もし、どうしてもリキャップをしないといけない場合は、テーブルなどの安定した場所にキャップを置き、針でキャップをすくい上げてください。

針を扱う時は手袋をする事
採血などをする時、指先の感覚が分からないからと手袋を好まない人もいますが、もし針刺しをしてしまった場合でも、手袋をしていた事で皮膚まで到達せずに済む事があります。(血液量を46〜86%減少させる)自分の身を守るためにもフィットした手袋の着用をしましょう。

使用済みの針は最後まで責任を持って破棄する
使用した注射針などをトレーに置いたままその場を離れたりせず、必ず使用者が責任を持って終わったらすぐに破棄するようにしましょう。

針を持ったまま、他の動作を行わない(同時操作回避の原則)
注射針を持ったままの状態で、他の行動を行えば、針刺し切創のリスクは高まります。複数の作業を同時に行うことは、ある作業については、それだけ集中して行うことができないということです。点滴用又は、採血用の翼状針の抜針直後において、採血時の分注や止血などの作業を行おうとしたというものがあります。