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診療所にも救急の患者さんは来ます。救急車からの要請も自院にかかりつけの患者さんなら受けています。幸運な事?に、昔はずいぶん寛容な時代でした。救急車が一晩で何台入る野戦病院で、ピ〜ポ〜ピ〜ポ〜と鳴るたびに、研修医ひとりで冷や汗をかきながら、ずいぶんと鍛えられたものです。「重症度」と「緊急度」は必ずしも一致しません。がんは重症の病気ですけど緊急性はありませんし、肩関節の脱臼などは緊急性はありますが、死ぬわけでもありません。

救急は、なんと言っても初期治療が最も重要です。

診断がついたら、ある意味簡単かもしれません。究極は、心肺蘇生とAEDです。ACLS(Advanced Cardiovascular Life Support)講習会で、突然「人が倒れています。意識がありません。呼吸もありません。はい、どうしますか?なにが一番大事ですか?「え〜 え〜」ABCだから、人工呼吸、心臓マッサージ・・・・さて、正解はというと?「人を呼ぶこと」です。みんなで心肺蘇生を始めて、なるべく早くAEDをかけることが必要なのです。救急車は同時に呼んでおきましょう。

「意識がありません。呼吸もありません」というシチュエーションはそうそう出会いません。はあはあ言いながら、胸が苦しい、お腹が痛いってケース、いかにもヤバいぞって感じが、一般救急のお決まりです。初期段階で最も必要な情報はバイタルです。

目次

バイタルサイン(Vital signs)

日本語では生命徴候=生きている証という意味です。
最も基本的な情報です。血圧、脈拍、呼吸、体温(意識レベル)の4(5)項目をいいます。

バイタルサインの異常は、急性期に激しい症状とともに出てくる。生命が危機にさらされるとその身体的ストレスから交感神経の興奮(カテコラミンリリース)が起こり、収縮期血圧の上昇や心拍数が増加する。また、末梢の血管平滑筋が収縮して末梢冷感、汗腺の平滑筋も収縮し冷や汗が出ます。さらに、興奮系の意識障害が起こります。

 

カテコラミンリリースの5病態

(1)呼吸不全(低酸素血症、高CO2血症) SPO2<90%になっている
(2)心不全、循環不全(ショック
(3)低血糖
(4)発熱(敗血症
(5)疼痛、不安、運動後

 

血圧

血圧の正常値は120/60mmHg前後ですね。血圧の異常となると高い場合と低い場合があります。よくあるパターンは、血圧が高くて、意識障害で、脳出血というパターン。血圧が70mmHgを切ってショックってパターンですね。

症例1

体温 37.2度
血圧 170/80mmHg
心拍数 120 bpm
呼吸回数 24回/分
SpO2 94%
意識レベル JCS 30点

大脈圧を伴う高血圧があれば、カテコラミンリリースの病態で起こりやすいとされています。脈圧の正常値は、40〜50mmHgです。大脈圧の定義は、大脈圧>収縮期血圧/2なので、この症例の脈圧は、170–80=90mmHgと収縮期血圧/2(170/2=85)よりも大きいので大脈圧となります。

在宅見取りで、血圧が70mmHgを切ってくると早いですよね。もういつ呼吸が止まってもおかしくないって感じですかね。遠い人は、間に合いません。

 

脈拍(心拍数) 

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脈拍数の正常値は、60回前後で(50〜100回/分)で50以下を徐脈、100以上を頻脈といいます。ちなみに漢方の診察では、脈診と言って、脈の元気さ?で患者さんの「証」を診ます。

安静にしていて、脈が非常に速い(140回/分以上)、脈が非常に遅い(40回/分以下)などの場合は、明らかに異常です。体温が1℃上がったら、 心拍数は分時20回上昇します。患者さんを診るときは、不整脈があるかどうかや脈の数が正常範囲でも、体温が高い割には脈が少ないとかいう感覚が大事です。脈拍数が増える病態は、心不全か呼吸不全ですが、呼吸不全だけで脈拍数が130を越えることは稀です。脈拍数が130以上であれば、心不全の可能性が高いと考えましょう。

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呼吸

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呼吸回数は必ず測りましょう

呼吸数の正常値は、12〜18回/分です。(年齢差あり、小児は多い)呼吸数が、20回以上はなにか異常があります。30回/分以上は、なんらかの処置が必要です。(熱などがあれば、敗血症も疑う)呼吸数が、8回/分以下になるともう危ないですよね。

原因としては、換気不全(喘息、COPD、肺線維症など)呼吸不全(SpO2 90%以下)敗血症などです。

 

呼吸パターン

呼吸しているかどうかは、一見、見えないのが正常です。呼吸しているのが見えたら異常と考えましょう。

  • チェーンストーク呼吸

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弱い呼吸が次第に強く大きな呼吸となり、また次第に弱くなり、無呼吸(数秒〜数分間)となるサイクルを繰り返すもので、大脳が広範囲に障害された時や脳幹機能障害、心不全、睡眠時無呼吸症候群でみられるものです。

  • クスマウル呼吸

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深く大きな呼吸です。アシドーシスの時に見られます(代謝性アシドーシス、尿毒症性アシドーシス、糖尿病性ケトアシドーシス、アルコール性ケトアシドーシス、乳酸アシドースなど)呼吸が見えれば異常です。(見える呼吸=クスマウル呼吸)

もっと状態が悪くなって、死期が近づくと、失調性呼吸(不規則な呼吸)下顎呼吸(下顎だけを動かして努力性呼吸)などが見られるようになります。

パルスオキシメーター

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最近は、便利なものが出来ました。SpO2(saturation of pulse oximetory oxygen)は、パルスオキシメーターによって、非侵襲的に得られる呼吸のバイタルサインです。SpO2ってなんでしょうか?SpO2とは、動脈血中の酸素の割合(酸素飽和度)を表したものです。

呼吸によって取り込まれた空気は(酸素は約20%)鼻から喉を通って、気管、気管支、細気管支と約23回分岐して、最終的には肺胞という約0.1mmの小さな袋状の空洞になっています。

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肺胞はの周りには、無数の静脈と動脈が取り巻いています。

 

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この血管と肺胞の間で、静脈(酸素が使われてしまった青い血液)から二酸化炭素が肺胞に掃き出され、肺胞から酸素が赤血球(ヘモグロビン)に取り込まれて、動脈血(酸素をたくさん含んだ赤い血液)となって、心臓から全身に回っていきます。この酸素と二酸化炭素の交換を呼吸と言います。

 

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ヘモグロビンは、血液中の成分のひとつで、呼吸で取り入れた酸素を体中に運ぶ役割を担っています。1つのヘモグロビンは酸素を運ぶために4つの席を持っています。ここに酸素を積んで各組織に運ばれていきます。しかし、呼吸状態が悪くなり、酸素が少ししかなければ、席は空いたまま出発することになります。このヘモグロビンが持つ席がどれくらい埋まっているかを表す指標が酸素飽和度です。

しかし、患者さんも診ずに、数値だけに囚われてはいけません。測定したSpO2の値が、臨床症状とかけ離れている場合は、その数値が妥当がどうか評価する必要があります。呼吸の問題以外にも、末梢循環不全(心不全や出血性ショックなど)でも低下します。その他のSpO2に影響を与える因子としては、マネキュアをしていたり、体動や外光の影響、圧迫などがあります。

健康な人のSpO2の値は、通常96〜99%と言われています。93%以下は黄色信号で、90%以下になると呼吸不全に陥っている場合があり、適切な対応が必要です。
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SpO2が90%以下の場合は、呼吸不全と言います。呼吸不全の分類には換気障害とガス交換障害があります。

 

呼吸不全と診断した時には、その呼吸不全がⅠ型なのかⅡ型なのかを鑑別しなくてはいけません。Ⅰ型は酸素が低いだけですが、Ⅱ型は二酸化炭素も溜まっています。Ⅰ型なら酸素投与だけでいいですが、Ⅱ型は酸素投与と換気補助が必要です。Ⅰ型かⅡ型かを見分けるためには、動脈血ガス分析が必要ですが、簡易的には意識をみます。興奮、不穏になります。二酸化炭素が溜まると手が温かくなって、傾眠になります。

低酸素血症の症状

低酸素血症

高CO2血症の症状

心外膜炎(かぜの後の胸痛)は前屈みになる。

 

体温

体温の基準値は、一般的には腋窩温で36.0〜37.0℃ですが、生理的な個人差があるので、個人の平熱について測っておく必要があります。体温は寝ているときが最低で、午後3時〜10時頃は高くなります。乳幼児は、外界の温度に左右されやすく、高齢者は皮膚の熱の伝導度が低いため、低くなりがちです。閉経前の女性の体温は、一般的に排卵日を境に前2週間は低値、後2週間は高値の二相性を示します。

悪寒戦慄(毛布を何枚かけても、歯がガチガチして体の震えが止まらない)を伴えば、本物です。なんらかの感染源があります。

では、、血圧、心拍数、SpO2、呼吸数、意識レベル、体温、いわゆるバイタルサインからなにがわかるでしょうか?

重要なのは、生命が危機にさらされるとカテコールアミンがリリースされて、血圧上昇、心拍数増加、尿量減少、末梢冷感と冷や汗がでます。(入江先生)

ショック

quick SOFA

 

頭痛

絶対に放置してはいけない危険な頭痛の特徴は、

 

(1)突然発症の頭痛 発症した時刻が何時何分、テレビでCMになってトイレに行こうとした時など具体的に言える場合

(2)人生最悪の頭痛 「痛みの程度を0〜10として10が想像できないほど痛いとしてどのくらいですか」と聞きて、8以上を答えた場合

(3)どんどん痛みが悪化 髄膜炎とかクモ膜下出血、脳出血を考える

その他、全くの初めての頭痛(今までの頭痛とは違う)5歳未満、50歳以上の頭痛、手足の麻痺など神経症状を伴う頭痛、発熱や痙攣、意識障害を伴う頭痛、項部硬直を伴う頭痛、外傷歴のある頭痛、担がん患者の頭痛などは注意が必要です。

 

くも膜下出血

(1)(2)(3)の一つでも当てはまれば、すぐに専門医療機関に紹介しましょう。人生最大の突然発症の頭痛と言われたこと場合、実際にCT検査をして「くも膜下出血」と診断されるのはどれくらいか知ってますか?実は1割だけなんですね。実臨床では9割がオーバートリアージでOKなんですね。アンダートリアージにならないようにしましょう

可逆性脳血管収縮症候群 RCVS:Reversible Cerebral Vasoconstriction Syndrome

クモ膜下出血の除外が最も大事なので、バットで殴られたような激しい頭痛となると紹介でいいんですが、頭部CTを撮ったけれど、異常ありませんでしたというお返事、さて、ではこの頭痛は何?いわゆる雷鳴頭痛として発症し、クモ膜下出血との鑑別が難しい疾患です。単純CTでは診断がつかず、MRIやCTアンギオで確定診断しますが、血管が収縮している時に撮らないと診断できないため、初診時に診断がつくのは半数ぐらいになってしまいます。誘因薬剤としてトリプタン製剤(片頭痛)や抗うつ薬があります。

 

一次性穿刺様頭痛

針で突き刺されたような鋭い痛み(程度はさまざま)で、前頭部、側頭部に多いがさまざまで、70%の症例で三叉神経領域以外に生じ、1つの領域からほかに移動し、同側あるいは反対側(両側)の頭部に移動することもある。有病率は2〜35%と稀な疾患ではない。片頭痛や緊張型頭痛と併存することも多い。女性に多く(男性の2倍)平均年齢は20〜50歳。ストレスや体調不良、天候、睡眠不足、疲労などが増悪因子になることが多い。痛みは不規則な頻度で、1日に1回(68%)複数回(4%)数秒以内の穿刺様頭痛が繰り返し起こる。通常は3秒以内(80%)であるが、120秒まで持続することもある。悪心、嘔吐、光、音過敏、アロディニア、めまいなど伴うことがあるが、結膜充血、流涙、鼻汁などの自律神経症状は認めない。治療は、インドメタシンが良く効く。手を温めるのも有効です。予後は良好で多くの症例で自然寛解します。

 

一次性咳嗽性頭痛

咳嗽性頭痛の大半はアルノルド・キアリ奇形I型で、他には脳脊髄液圧低下、動脈解離、中咽頭・喉頭蓋窩の腫瘍が原因のことがあります。一度は画像で精査をして症候性が否定できれば一次性咳嗽性頭痛となります。一次性咳嗽性頭痛は咳やいきみ、息ごらえで胸腔内圧の上昇により誘発される突発的に起こる頭痛で、持続時間は1秒〜2時間となっておりますが,多くは頭痛出現直後にピークに達し,数秒〜数分の間で良くなります。主に40歳以上で見られることが多く,咳が多いとそれに比例して頭痛の強さが強くなります。通常は両側性で後頭部に痛みがあり、60〜70%の方にめまい,悪心,睡眠異常といった随伴症状を認めます。高血圧症、COPDの合併例が多い。治療は、インドメタシンが有効で、予後は良好で自然経過で軽快します。

 

頭部打撲 24時間の経過観察が必要です。

胸痛

胸痛といえば、鑑別診断に挙げなければならない疾患に、急性冠症候群、急性大動脈解離、肺血管塞栓症、緊張性気胸、食道破裂が5Killersと呼ばれています。緊張性気胸や食道破裂は頻度も少なく、前者3つを押さえておけばいいでしょう。肺血管塞栓症は、昔は解剖して初めてわかる稀な疾患でしたが、最近では、どこでも造影CTができるようになって簡単に見つかるようになってきました。頻度的には、急性冠症候群と急性大動脈解離の2つですが、急性冠症候群が、急性大動脈解離より100倍は多いわけです。

急性心筋梗塞 メタボリックシンドロームのMさんが「胸が痛い」

肺塞栓 昔は、診断できないと言われていましたが、今見逃すと・・・

precordial catch syndrome 小児の胸痛の8割を占める。

ボルンホルム病 夏から秋、発熱と胸痛(体動で悪化)

モンドール病 圧痛を伴う洗浄の索状物と胸痛

 

腹痛

僕が、救急外来で最も苦手な主訴は「腹痛」です。問診票に「腹痛」と書いてあったらちょっと嫌ですね。少し構えて、気合を入れ直す感じですかね。なにせ鑑別診断をする疾患が多すぎです。心筋梗塞など腹部以外の疾患も混じってきます。まあ、実際の臨床では、軽い急性の胃腸炎から便秘なんてものも多いわけですが、安易に胃腸炎、便秘って診断しているときは、ゴミ箱診断になっていないか自問自答しなければなりません。胃腸炎は、必ず「嘔気」「嘔吐」「水様性下痢」の三徴が揃わないと診断したらダメですね。ノロウイルスやロタウイルスは、口から入って上部空腸に感染します。胃の動きが止まってゲ〜ゲ〜吐きます。小腸から水分がたくさん出て、おしっこのような水様便が何回も出ます。下痢が伴わない時は、安易に胃腸炎とは診断しないようにしましょう。便秘も浣腸して「少しよくなった」とよしよしと思っていても、帰る間際にやっぱり痛くなった?これって便秘じゃないわけですね。これらの中から急がなくてはならない腹痛を拾い上げる作業がまずは必要です。高齢者や乳幼児、精神疾患の患者さんは、症状が乏しい場合もあります。特に血管系疾患は腹膜炎を伴いません。腹膜炎症状があるだけが重症ではないわけです。

 

急性腹症 最もやっかいな、最も苦手な・・・訴えです。

尿路結石 七転八倒してたらちょっと安心 

前皮神経絞扼症候群(ACNES) 腹直筋外縁付近の腹痛でカーネット徴候陽性 

Fits-Hugh-Curtis症候群 若年女性の深呼吸で増悪する右季肋部痛

 

意識障害

低血糖 意識がない! 見逃し厳禁、まず否定すること。

糖尿病昏睡(高血糖) ケトアシドーシスと高浸透圧性があります。

失神 恐るるに足らず。原因により、予後が全然違います。

 

 

アナフィラキシー 蜂、クスリ、食物アレルギー

高カリウム血症 透析しているKさんが「しんどい」 

不整脈 手を出すのは血行動態の落ち着いてるnarrow QRSまで。

喘息発作 苦しい〜「ヒューヒュー ゼイゼイ」

急性喉頭蓋炎 「喉が痛くて、唾も飲み込めません」

鼻出血 マイナーエマージェンシーの代表です。

 

小児救急

耳前瘻孔 耳の前が腫れて、膿が出て痛がっています

耳瘻孔とは、生まれつき耳の周囲に小さな穴が開いて、その下方に管(または袋状)があり、その管の先端は耳介軟骨で終わっているものを言います。これは耳を形成する時の異常により生じたものと言われています。耳の異常の中ではかなり頻度の高い疾患の1つです。感染を起こしたことのない耳瘻孔の場合は、そのまま様子みても差し支えないと思います。この状態で一生経過することもありますが、この小さい穴から細菌が入って感染を繰り返す場合もあります。耳瘻孔から臭いのあるチーズ様の分泌物が出てきたりすることもあります。一度感染を起こすと、その腫脹したところを切開して膿を出したり、抗生剤を内服するなどの治療が必要になります。慢性化すると耳前部や耳後部に膿瘍(不良肉芽)がみられることがあります。一度でも感染を起こした既往があれば再感染を起こす確率が高いので手術による摘出を勧めます。

成人の場合、外来通院で局所麻酔下に摘出手術が可能です。幼少時は手術中の鎮痛・鎮静が必要になるため、全身麻酔下に行います。この場合は3日から約1週間の入院が必要になります。手術は、耳瘻孔を含めて管状や袋状のものを全て取り去ります。

 

頚部嚢胞性疾患(正中頚嚢胞、側頸嚢胞、梨状窩瘻)

正中頚嚢胞は、魚類では成熟すると鰓(エラ)と呼ばれている器官を形づくる鰓(サイ)性器官(鰓弓、咽頭嚢、鰓溝と呼ばれる場所)から発生すると考えられています。人間では、ほほ、あごからくびの大部分の構造はほとんどこの鰓弓と咽頭嚢からできます。これらの発生の過程で体の中に取り残された細胞が元になって袋(風船)状のできものができることがあります。首の正中にできるものは正中頚嚢胞(先天性頚部腫瘤の約70%を占める)と呼ばれています。この正中頚嚢胞は、舌のつけ根から鎖骨の上端中央部までのいろいろな場所にできると言われていて、アゴと首の境目付近で首の真中の辺りにできるものがもっとも多いとされています。嚢胞が小さなうちは無症状に経過しますが、大きくなって来ると(こどものうちは小さく腫瘤の存在に気付かないことも多い)外見上首の膨らみが目立ってきたり、化膿すると急に腫れたり場合によっては小さな穴が開き分泌液が出てくることがあります(生まれつきこのような穴があいている場合もあり、これは正中頚瘻孔と呼ばれています)。また、場合によっては、ものを飲み込みにくいという症状が出ることもあります。リンパ節炎(特に結核性)、リンパ管腫、血管腫、皮様嚢腫、脂肪腫、嚢胞形成性唾液腺腫瘍などの良性疾患が主として鑑別疾患としてあげらます。また、側頸嚢胞は、第2鰓裂に由来するものが最も頻度が高く、梨状窩瘻は、第3あ類は第4鰓嚢遺残による先天異常で、瘻管よりの感染が甲状腺周囲間隙から甲状腺に波及し急性化膿性 甲状腺炎を起 こす疾患である。

 

耳前瘻孔

「」

胎生5週頃に第一及び第2弓に各3個の耳介結節が発生するが、この耳介結節の発生過程の異常で生じる。抗生剤処方、痛み止め処方、小児外科外来へ紹介、後日、摘出術予定

頚部嚢胞性疾患(正中頚嚢胞、側頚嚢胞、梨状窩瘻)

抗生剤処方、痛み止め処方、小児外科外来へ紹介、後日、摘出術予定 ただし、呼吸苦、頻脈には要注意

鼠径ヘルニア

「股が膨れています」

小児外科疾患で最も多い 入浴時によく出る、気づかれるので夕方受診することが多い。大切なのは痛み、不機嫌があるかどうか。症状なし 腸や大網が出ているだけ、もしくは水腫 後日、小児科外来へ 症状あり、嵌頓の可能性あり、整復の必要があるかもしれない 用手還納もしくは小児外科へ

臍ヘルニア

「臍がすごく飛び出しています。中でグチュグチュ音がします」

すでに出生時、1ヶ月健診時に指摘されていることが多い。しかし、中に腸が出ていることを知らないことが多い。2歳くらいまでに9割以上が自然に改善する。綿球、スポンジ圧迫法の効果が報告されている。 後日 小児外科外来へ、臍ヘルニアが嵌頓することはセロではないが稀。

尿膜管遺残症

臍から膿が

尿膜管瘻(尿膜管開存)尿膜管洞 尿膜管嚢胞 尿膜管性膀胱憩室

抗生剤処方、痛み止め処方、小児外科外来へ紹介、ただし、新生児、乳児の臍感染には要注意

肛門周囲膿瘍

「お尻が腫れて、痛がっています」

直腸と肛門の境の歯状線にある1mm程度の小さな窪み(肛門陰窩)の感染 新生児〜乳児 男児に多い

治療方針が様々 切開排膿 漢方 抗生剤内服 抗生剤塗布 悪化、遷延すると痔瘻になる可能性あり

精巣捻転

「玉が痛い」陰嚢、精巣の診察が行われる

「下腹が痛い」腹部は平坦、軟。陰嚢所見が見落とされる

症状が出てから24時間以内、できれば6〜8時間以内に手術により捻転を解除すれば精巣を温存できることが多いが、それ以上経過すると壊死に陥った精巣を摘出

精巣炎、精巣上体炎とその鑑別が必要だが、疑わしきは手術が原則

異物誤飲

「手に持っていたコインがなくなった」「リモコンの蓋が開いていて、ボタン電池が見当たらない」

基本的には胃内に落ちたものはお尻から出てくる プラスチックの玩具や破片は経過を見るしかない 食道に滞ったものは食道潰瘍を起こす 特にリチウム電池は放電力が強く、短時間で潰瘍 複数の磁石は腸をまたいでくっつく可能性あり 胸腹部レントゲン撮影 食道異物は摘出がマスト 胃内異物もボタン電池は摘出がベター

異物誤嚥

何かを飲み込んで噎せて、咳をしている」

CTが有用、気管支に落ちていれば窒息はない(咳で気管まで上がってきて窒息した症例がある)気管にある場合は、場合によって挿管して片方の気管支に押し込む

小児外科に

外傷(Walk in)

打撲傷、擦過傷 挫創 切傷 刺傷 噛傷 熱傷

「いつ、どこで、なにによって怪我をしたのか」受傷からの経過時間、屋内か屋外か 鋭利なもので切ったか 不潔なものが刺さったか

抗生剤の有無、創を開放しておくか、縫合によって閉鎖か

破傷風トキソイド、グロブリン製剤の有無

 

小児救急 子どもの救急ガイドライン 〜兵庫県医師会〜