乳児健診

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乳幼児健診は、疾病や障害を早期発見、早期治療(対応)を主目的として行われてきましたが、最近ではそれ以上に、育児不安への対応から、子育て支援という側面が強くなってきています。

たつの市では、 予防接種事業などは、どんどん個別へと移行していますが、 乳幼児健診は、集団健診で行われています。(本当は、4ヶ月や10ヶ月、5歳など、どこかで、小児科医による公費での個別健診ができれば、理想的ですが・・・たつの市には、八木小児科しかないんですね。内科医が手伝わなければしかたがない状況なのです。)しかし、医師だけでなく、保健師、栄養士、助産師、ボランティアなど多彩な職種が参加し、いろいろな教室や相談ミーティング、友達作りなど、より総合的な視野での支援が行えるメリットはあります。

たつの市では、生後3ヶ月、1歳6ヶ月、3歳児に集団で乳幼児健診を実施しています。
今年の日程は、ここを見てください。

http://www.city.tatsuno.lg.jp/kurashi/ninshin/shussan/documents/30boshikenkoukarenda-.pdf

(下図は、大分以前のものです。サンプル画像)

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3ヶ月健診 

画像の説明発達神経学的に異常が発見されやすい月例は、4ヶ月健診とされていますが、たつの市では、BCG接種も併せて、3ヶ月健診として行っています。 3ヶ月頃より、腹ばいで頭を上げたり、首が坐ってきます。 笑ったり、音に反応したり、視線を合わすこともできてるようになります。
3ヶ月健診は、あかちゃんもちっちゃいし、反射も含め、チェック項目がたくさんあり、医師にとってもなかなか大変な作業です。

まずは、あかちゃんをベットの上に仰臥位で寝かせてもらいます。姿勢を含めた全体像を観察し、恒常的な異常姿勢はないかどうかをみます。外表奇形、皮膚の状態、外陰部の観察します。頭のてっぺんから大泉門を触って、頸を診て、胸部の聴診、腹部の触診を行います。

引き起こし反射

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このキーマンスで、最も重要な反射です。この反射で全身の筋トーヌス、頸がどの程度座っているかを調べます。背臥位から引き起こして、45度ぐらいの角度で首がついてくるかどうかをみます。正常なら、頭部と体幹が平行になります。 グニャグニャといった印象がありば、6ヶ月までは経過をみましょう。


ランド−反射
赤ちゃんの腹部を支えて水平位にします。正常では、少し頭を持ち上げようとし、頸は伸展位を保つのが普通です。3ヶ月でグニャといった感じだだり、反対に反り返って下肢も過度に伸展しているようなら異常です。

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視性立ち直り反射

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頸が座ってくると、視覚や平衡覚の統合反応として、原始反射が消えてきて、姿勢を立ち直らせるような防御的は正常姿勢の反射が出てきます。腰を支えて、左右に傾けると正常では、頚部を垂直に保とうとする反射が見られます。

 


脳性麻痺
は、1000人に2人と言われています。これらの反射は、異常な筋緊張や筋弛緩から、小児神経疾患を疑うわけですが、所詮は、早く見つけても治らない病気です。さらに、たつの市では3ヶ月健診ですので、まだ約1/4は頸が座っていなくても正常範囲なのです。発達にはバリエーションがあります。スロースターターかもしれません。なかなかその判定が難しく、見逃したとしても、1歳過ぎて歩かないことで見つかってからでも遅くはありません。お母さんから質問がない限りは、なまじ内科医が知ったかぶりで、へたな説明をしてもお母さんの不安をあおり、ネットに走らせるなど弊害の方が大きくて、なにも言わないで6ヶ月ぐらいまでは様子をみたほうがよっぽど得策だと思っています。

斜頸

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多くは、筋性斜頸で胸鎖乳突筋の拘縮による。胸鎖乳突筋のしこり触知します。頭部を患側に傾け、顔面を健側へ回旋した姿勢を示します。 マッサージや徒手矯正は有害無益である。1歳までの約90%が自然治癒する。1歳半を過ぎても回旋制限や胸鎖乳突筋の索状化が見られるものが専門医に紹介する。

 

苺状血管腫 

生後数日してから鮮紅色の斑として現れ、急速に増大して半球状、扁平に隆起した赤い腫瘤となる。表面は顆粒状の凹凸があり、弾力に富む。4〜8ヶ月でピークとなり、1歳頃から暗赤色となり、徐々に縮小し、大部分は、4〜6歳で自然消退する。(腫瘤を形成したものは 9〜10歳で自然消退する)

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サーモンパッチ

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新生児の20〜30%に見られるほぼ生理的なもの。上眼瞼、額の正中部、鼻の下にみられる境界不明瞭な淡い紅斑で、細かい毛細血管拡張からなる。大部分は、1歳半ごろまでに自然消退するので様子を見る。

 

ウンナ母斑

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新生児の10〜20%に見られる。後頭部から項部に見られる比較的境界鮮明な濃いめの紅斑で、半数は自然消退するが、半数は細かい毛細血管拡張からなる。大部分は、1歳半ごろまでに自然消退するので様子を見る。

 

ポートワイン母斑(単純性血管腫)

新生児の1〜2%に見られる境界明瞭な紅斑で、体のどの部分にも見られる。拡大することも消退することもない。特に眼の周囲(三叉神経第一枝領域)にあるものは、スタージウェーバー症候群を考え、早期に専門医での精査が必要である。紅斑自体は、自然消退しないので、顔面など目立つ部位にある場合は、レーザー治療の適応になる。治療をする年齢は、早いほど良好な効果が期待出来る。

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扁平母斑

境界明瞭な淡褐色の色素斑で、皮膚表面から隆起しない。出生時または生後まもなく明瞭となり、生涯不変である。有毛性のものをベッカー母斑と呼びます。5〜6個以上多発するものはRecklinghausen病、巨大なものはAlbright症候群の可能性があります。

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有毛性母斑

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体幹、四肢、顔面の広範囲を占めるもので、出生直後は母斑だけでも、2歳頃から有毛性となりやすい。皮膚科を紹介しましょう。

 

黒子

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出生時は存在せず、生後4ヶ月以降に出現し始め次第に増加する。粟粒〜大豆大の大きさで、褐色〜黒褐色を呈する。円形〜不整形で皮面より盛り上がらない。放置可。

 

母斑細胞性母斑

出生時より存在。粟粒〜手掌以上まで大小さまざま。平らなものから半球状に隆起するものまでさまざま。形も円形〜不整形までさまざま。色も褐色〜黒色、点状に黒色が混在するものまでさまざま。5cm以上大きいもの、有毛性獣皮様母斑、足底や指趾先端部など刺激の加わりやすいものは、将来の悪性黒色腫の発生母地になる可能性も考えて、専門医に紹介する。

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太田母斑

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淡青色〜淡褐色の小さな斑点が播種状に集積し、全体として境界不明瞭な青色と褐色が混在した斑となる。淡褐色の色素斑で、出生時または生後まもなく出現し消退することはない。片側性に眼瞼、頬部、こめかみの三叉神経第一、第二枝の領域に生じる(まれに両側性)顔面で目立つ部位にあり、整容的問題が大きいため、幼児期でのレーザー治療の適応となる。

 

蒙古斑

境界明瞭な青色斑。出生時または生後まもなく出現し消退することはない通常仙骨部に主斑があり、背中や臀部に小さな副斑を有する。四肢や顔、胸腹部に生じるものを異所性蒙古斑という。薄いものは、6〜7歳頃までに自然消退するが、濃いものは成人まで残存する。

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白斑性母斑

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片側性に体幹、四肢、顔などに不規則な形をした不完全脱色素斑。出生時または生後まもなく明瞭になり、生涯変わらず持続。治療はない。2カ所以上にあれば、伊藤白斑との鑑別に注意する。

 

尋常性白斑

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後天性の白斑で、幼児や学童に見られ、地図状に広がる。境界鮮明な完全脱色素斑で、体中どもにでもできるが、髪の生え際、頸、そけい部などに多い。PUVA療法などが有効。

 

連れ舌(舌小帯短縮症)

ハート型のかわいい舌ですね。大多数は自然退縮。4〜5歳までは様子をみることが多くなっています。昔は、切ってたそうですね。痛そ〜。

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鵞口瘡

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カンジダ(かびの一種)感染により、舌や頬に白苔が付着します。あかちゃんの陰部の紅斑やお母さんの乳頭に痛みがないか確認しましょう。

 

乳児脂漏性湿疹

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頭頂部や前額部にかひ

頭に丸いうろこのようなものができる赤ちゃんもい ますし、髪の毛の生え際や眉毛などに黄色いふけや脂っぽいかさぶたのようなものがつく赤ちゃんもいます。赤ちゃんは、ママのおなかの中にいたときに女性ホルモンの影響を受けています。そのため新生児期から3カ月くらいまでは皮脂の分泌が非常に活発で、皮脂の“脂が漏れて”湿疹になってしまうのです。生後1~4ヶ月頃、頭や顔に皮脂がたくさん出てきます。この皮脂が黄色いかさぶたのようになったのが脂漏で、かゆみはあまり無いと言われています。

授乳や食事のあとはぬるま湯で絞ったタオルで優しく汚れをふき取り、1日1回は顔も石けんで洗いましょう。スキンケアをていねいに行えば3~4週間くらいで治っていきます。6ヶ月を過ぎると自然に治ります

 

カンジダ皮膚炎

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おむつの下の臀部、陰股部から始まり、拡大する。 周辺部にも小膿疱や小赤色丘疹が見られます。鑑別疾患として、おむつ皮膚炎は、尿や便によって起こる接触性皮膚炎です。まめにおむつを取り替えるしかありません。お湯でやさしく洗って、やわらかい布で押さえるように拭きます。接触性皮膚炎なので、出っ張ったところが紅くなって、しわの中はきれいですが、カンジダ皮膚炎は、しわの中まで紅くなっています。

 

上皮真珠

まだ歯が出てくる前 生後2〜3ヶ月ごろに歯槽部に見られる白い膨らみ。 栗粒大の白くてややかたいぽちぽちしたものが見られます。 真珠のような色をしているので「上皮真珠」と言う名前が付いています。大きさは1〜2mm程度の物が多いが、5mm程度になることもあります。一箇所に数個見られることもあります。新生児の8割程度に出現するようです。赤ちゃんの口の中にはまだ歯は出てきていませんが、すでにあごの中で乳歯が作られていて、その乳歯が作られたときに残った組織が表面に出てきたものです。通常、かゆみや痛みは無く、特に処置も必要ありません。歯が生えてくるまでに自然になくなります

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陰嚢水腫

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この病気は、お母さんのお腹の中にいるときに腹膜が鞘状に飛び出したもの(腹膜鞘状突起)が引っ込まないで残った状態で,その鞘状突起に腸などが入ると鼠径ヘルニアになりますが、水が貯まると水腫になります。 乳児(1歳未満)の場合は自然に治癒することが多いので、経過観察します。1歳を過ぎると自然治癒がしにくくなります.鼠径へルニアを合併していたり,痛みが強い場合や本人が腫れを気にするようなら手術が望ましいでしょう。

 

鼠径ヘルニア

生後1年以内に全体の2/3が発症します。また両側ある場合は8%といわれています。 男の子が女の子の約3倍多九、右側が左側よりも多いです。鼠径ヘルニアは発症すれば、早期手術が治療の原則です。

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臍ヘルニア

自然治癒が期待できます。かんとんの危険もほとんどない。6ヶ月の時点でピンポン球より大きい臍ヘルニアは自然治癒しても皮膚のたるみがのこりやすいので、保護者と相談しています。

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包茎

真性包茎は、新生児ではほぼ100%,1歳までの乳児では約80%,1歳から5歳の幼児では約60%,小学生では約30%でみられ、年齢が上がるにしたがって少くなくなり、基本的には、治療を必要ありません。昔は、手術をしていた時代もありますが、今は、亀頭包皮炎を繰り返したり、排尿障害、嵌頓包茎、家族の希望が強い場合は、ステロイド軟膏によるに保存的療法が行われています。

真性包茎
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仮性包茎
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未熟児

昔は、2500g未満児を未熟児と呼んでいましたが、今では、低出生体重児なんて、小難しい名前がついています。やはり、未熟児は体が弱いのでいろいろなケアが必要ですが、未熟児を出産したお母さんが、一番嫌な言葉は「おいくつですか?」と聞かれることらしいのです。あまり、気にしていなかったので少しドキッとしましたが、「ちっちゃく生まれたけれど、頑張っているね」と肯定的な声かけが大事なようです。

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乳児健診では、身長、体重、頭囲の測定が行われます。最も重要なのが頭囲です。上に3人、下に3人外れます。外れたら経過観察が必要です。大泉門を1〜2cmの大きさで触知します。3cm以上と大きくても頭囲の増大が正常範囲で、体重増加や全身状態に異常がなければ、とりあえずは、経過観察です。頭位がまず、追いついて、次いで体重が追いついてきます。身長は、なかなか追いつかないのが普通です。頭囲が神経学的予後を決定するので、頭位が大きくならないのは問題です。( 染色体異常や代謝異常を考慮)急に大きくなるのも精査が必要です。( 水痘症や巨脳症を疑う )

 

先天性股関節脱臼

頻度は、1000人に3人に発症し、第1子、女児、左側に多い(9割の赤ちゃんが右を向くので)診断は、股関節の開排制限(優しく、ゆっくりと扱うこと)と仰臥位で膝関節の高さを比較すると差をみとめます。また、患側の大腿部のしわの数や臀部の膨らみ(大きい←)そけい部と連続したしわが長く深く、くっきりしている(細い↑)などが重要な所見である。診断が遅れると、歩行の遅延だけでなく、関節の変形などで手術が必要になることもあります。

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便秘 

元気が良く、食欲も順調であれば問題ありませんが、4日以上便通がなく、哺乳量が低下している場合には、病院へ行きましょう。

 

心雑音

静脈コマ音 頚部から鎖骨直下に聞かれる連続性雑音。臥位にすると消えたりする。一過性肺動脈分岐部狭窄は、3〜4ヶ月の経過で自然消失する

 

聴力や視力

大変、重要な項目ですが、この時期での検査は、なかなか難しいです。ガラガラの音に反応して追うようであれば高度の難聴はありません。おもちゃを目で追いますか?など、聞いてみますが、よく見ているお母さんなら気づいている場合もあります。お母さんが気にしているようなら、精査にまわしたほうがいいでしょう。

 

SIDS(乳幼児突然死症候群)

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事故や被虐待を疑うものではなく、決して保護者のせいではありません。元気であった子どもが突然呼吸停止を起こして死亡する疾患で、生後1~6ヵ月のベビーに多く、わが国でも年間数百名が死亡しています。真の原因は、解明されていませんが、脳機能が未熟なために起こると考えられています。

厚労省が、1997年より取り組んできたSIDS予防キャンペーン、(1)うつぶせ寝はやめましょう。(2)暖めすぎに気をつけましょう。(3)タバコは止めましょう。(4)できるだけ母乳で育てましょう。で、確実にその発生数は減少しています。

 

誤嚥事故

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乳幼児の誤嚥事故の原因として、タバコが約半数を占める。乳幼児にとって、タバコ1本食べると致死量です。勤務医時代に、救急で運ばれてきたタバコの誤嚥で、なんとかせいと言われて、胃洗浄をしたことがありますが、ひどいことをされてかわいそうにと怒られて・・・。しかし、冷静に考えると、そもそもタバコを吸うあんたが悪いんでしょって感じですよね。

 

乳幼児健診の短い時間内で、すべてを完璧に診断できるわけでなく、確実に「異常なし」と言い切れるものでもないので、「元気ですね」「順調ですね」とお話しして、 その後に気になる所見については「様子を見ましょう」と付け加えています。しかし、「様子をみましょう」だけでは微妙なな表現で、放っといてもいいんだと勘違いされて、次の健診(1歳6ヶ月)まで様子をみてしまいますので、必ず1〜2ヶ月ぐらいとか期限を区切ることが大切です。
健診に来られる母親の1割は抑うつ状態との報告もあります。健診時に、化粧をしていない元気のなさそうな母親(マタニティーブルー)への配慮も大切で、「寝れてますか」「子育ては楽しいですか」など声かけするようにしています。

 

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ブックスタート“Share books with your baby”

ブックスタートは、乳幼児健診に参加したすべての赤ちゃんと保護者に、絵本の入ったブックスタート・パックを、説明の言葉とともにプレゼントする運動です。ブックスタートは、1992年英国バーミンガムで始められ、0歳児から本の時間を習慣として持つことが、言語面、計数面双方の思考能力の発達に大きな影響を与えることが報告されました。我が国でも2001年から導入され、赤ちゃんに直接本を手渡すことができ、それによって楽しい時間を持つ「本を通して赤ちゃんと保護者が楽しいひとときを分かち合うこと」というシンプルさやメッセージの優しさに対する共感によって、多くの自治体で採用され、日本社会にも広がっています。当院でも、待合室には、様々な年齢に合わせて、いろいろな絵本を用意しています。診察の待ち時間に、予防接種の終了後に、忙しい日常ではなかなか読み聞かせもできていないお母さんも子供といっしょに本を読んでいる暖かな親子の空間ができています。

1歳6ヶ月健診

ヒトとして、基本的な機能が完成する時期であり、ほとんどすべての子どもが歩けるようになり、周囲に対して興味を抱き、感情表現が豊かになり、言葉も数語言えるようになります。どれを採っても、発達を評価するうえでのキーエイジです。

(1)運動
99%のこどもは、ひとりで歩くことができます。歩行の姿勢も両手を下げて歩きます。実際に歩いてもらって、転びやすさ、バランスの悪さ、骨盤の動揺がないか確認しましょう。精神発達の遅れでは、運動発達の遅れも合併していることも多い。また、微細運動として、ものをつまむ、ひねるという動作が上手になってきます。健診では、積み木(3cm四方)を指ではさんで持ち、2〜3個以上積めるかどうかを見ます。上手くできない場合は、脳性麻痺や脳障害を考えて、精密検査が必要です。

(2)社会性
視線が合うか、落ち着きがあるか、簡単な指示を理解できるか(バイバイっと言ってみたり、おもちゃの受け渡しなど)などに問題があれば、 コミュニケーション障害(広汎性発達障害)を疑います。

(3)言語
意味ある単語(パパ、ママ、ワンワン、ニャンニャンなど)を最低ひとつは言うことができるか、言葉の意味が理解できていない、簡単な指示が理解できない場合は、聴覚障害があるか、精神発達障害があるか、コミュニケーション障害(広汎性発達障害)があるかを疑います。家で名前を呼んだら振りむくかどうかを確かめましょう。歩けていたのに歩けなくなった、言葉が出ていたのに出なくなったなど、発達の退行が見られる場合も精密検査の必要があります。

 

停留精巣

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精巣は、お母さんのお腹にいる時に腎臓に近いところから次第に下降し,鼠径管を通って陰嚢の中に下降します。途中で停まったものが停留精巣です。陰嚢の中に精巣(睾丸)を触れないときは,停留精巣(停留睾丸)の可能性があります。(一部は手術が必要) 1歳で1%前後に見られます。一旦、正常な位置まで下降しても固定が不十分で普段,陰嚢が空のようでもお風呂に入っている時、リラックスして座っている時などに精巣が陰嚢内に触れるような場合,移動性精巣と呼びます。精巣は男性ホルモンと精子を造る仕事をしています。お腹の中では精巣が陰嚢の中にある場合に比べ、2〜3度高い温度環境にさらされていると、精子を作る細胞が少しづつ機能を失い数も減少してゆきます。また,お腹の中にある停留精巣を放置しておくと,成人になってから癌化することもあるといわれています。1歳までは、自然下降の可能性があるので,しばらくは経過を観察します。精巣の機能低下を防ぐためには、遅くとも2歳迄に手術をするのが良いとされています。手術は、1泊2日で約1時間ほどで終わります。

 

視力

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通常、子どもの両目での視力は生まれたてで0.02程度、1歳ごろには0.1程度になり、その後3歳ごろまでに急速に発達し、4歳ごろには一般的な検査でほぼ大人と同じ1.0の視力に発達します。視力の発達は8~10歳くらいまでは続きますが、小さいうちの方が視力の発達がよく、しかるべき時期に発達しなかった視力はあとから取り戻すことができません。遠視や乱視といった屈折異常や不同視、斜視などがあると、視力の発達の妨げになります。様子が気になるときは、ぜひ早目に眼科を受診しましょう。

 

斜視

斜視とは、視線が一致せず、片方の目の向きがずれてしまいます。通常、物を見る時には、左右の目の視線が同じ方向を向けられ、光の反射は黒目の瞳の中心に映ってきます。しかし、斜視になると片方の目の視線が正面を向いているのに、もう片方の目の視線が別の方向を向いています。この視線のずれる方向によって「内斜視」「外斜視」「上斜視」「下斜視」と呼び、また視線のずれる目が左右交互に変わる場合もあります。

斜視は、外見上の問題だけでなく、早期発見が重要です。目の機能は、生後、適切な視覚刺激を受けることで発達します。特に3歳までは、急速に発達する時期です。この時期に斜視を放置すると斜視のない方の目だけでものを見て、斜視のある方の目が使われなくなって、目の発達が遅れ、眼鏡やコンタクトレンズを使っても視力が上がらない「弱視」になったり、左右両方の目で立体的にものを見る「両眼視機能」が育たなかったりします。早期発見するためには、周囲の人が子どもの視線のずれを見逃さないことが大切です。なにかおかしいと思ったら、早めに眼科に相談しましょう。

斜視の判定法
ペンライトを30cmほどの距離から見つめさせ、光の反射(黒目の中の白い点)の位置で判定します。黒目の反射が外側にずれると内斜視です。間違いやすいのは、特に乳児では鼻根部が低いため、一見内斜視に見えますが、光の反射は、黒目の中心からずれておらず、斜視ではありません。(偽内斜視)
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外斜視はすべて病的なので、放っておくと弱視になってしまうので、すぐに眼科に診てもらいましょう。

斜視には、手術が必要なものもあれば、メガネで治療するものもあります。乳児内斜視は、生後6ヶ月までに発症する内斜視で、原因は不明ですが、出来るだけ早く診断し、手術をした方がいいようです。調整性内斜視は、1歳ぐらいから発症します。原因は、遠視で、焦点が網膜より後で合うため、近くが見えにくくなります。そのため、網膜上に焦点が合うように水晶体を過度に調節することによって目を異常に寄せてしまい内斜視になります。治療は、メガネをかけて、遠視を矯正することで斜視が改善します。間欠性外斜視は、眠たい時やボーとしている時に片方の目の視線が外にずれます。原因は不明ですが、外斜視の9割以上がこのタイプで症状は、1歳ぐらいから現れます。興味のあるおもちゃなどには、視線が合い、両方の目を上手に使えるのでそんなに心配はいりません。経過をみて、外斜視になる頻度が増えるようなら眼科医に相談しましょう。先天性上斜筋麻痺は、眼球に付着する上斜筋の腱が生まれつき細く緩かったり、付着部がずれていたりして起こります。1歳ごろから首を傾けるという症状が目立つようになり、逆に傾けさせると麻痺のある目の視線が上にずれるのがわかります。多くは3歳ごろに手術を行います。

 

O脚

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出生時より2歳までは、O脚であり(生理的O脚)それが次第に外反傾向となり、3〜5歳まではむしろX脚となる。(生理的X脚)6〜7歳でまっすぐになります。2歳頃までは自然経過で、3横指以上で専門医へ相談しましょう。

 

スキン・タグ(肛門)

肛門のしわの一部が襞状に盛り上がっていて、12時の方向にできることが多い。いぼ痔ではありません。硬いうんちがでるときに、この部分が切れ痔になるやすく、よけいに盛り上がりが強くなることがあります。女児に多い。外科的な手術は必要でありません。切れ痔を繰り返さなければ、小さく気にならなくなります。便秘にならないように気をつけて、うんちが硬いときは肛門に軟膏をぬったり、排便後、ぬるま湯で洗ってあげたりしましょう。

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マルトリートメント

「マルトリートメント」とは、大人の子どもに対する不適切な関わりを意味しており、「虐待」より広い概念である。 親に限定せず、例えば、学校・塾などの教師や保育所の保育士などによる体罰、施設内での年長児による年少児への暴力など家庭外での不当な行為も「マルトリートメント」と考えられる。

我が国では、昭和8年に児童虐待防止法が制定されています。その時代背景には、絶対的な貧困と儒教的家父長的家族制度に基づく「私物的我が子観」がありました。平成元年、国連総会で「児童の権利に関する条約」が採択され、初めて国際条約の中に子ども虐待やネグレクトが明記されています。虐待の定義はあくまでも子ども側の定義であり、親の意図とは無関係です。その子が嫌いだから、憎いから、意図的にするから、虐待と言うのではありません。 親はいくら一生懸命であっても、その子をかわいいと思っていても、子ども側にとって有害な行為であれば虐待なのです。

人格は、親子関係に大きな影響を受け、そしてそれは、親も子も気がつかないうちに形成されていきます。何の自覚もなくごく日常的に行われていることで、もしかすると「子どものために良かれと思って」日々間違いをし、我が子に悪影響を及ぼしているかもしれません。 本当に子どもを大事にするということはどういうことなのでしょうか。 乳幼児健診でも、極端に体格が小さい時は神経疾患や虐待の可能性もありますが、外傷、やけど、身の回りの不潔さなど、虐待を疑わせる所見がないか注意しましょう。

子どもへの不適切な関わり(マルトリートメント)の範囲と社会的介入

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A レッドゾーン(要保護):子どもの命や安全を確保するために、児童相談所が強制的に介入するレベル。
B イエローゾーン(要支援):問題を重度化、深刻化させないために、児童福祉司、心理職、保健婦、保育士、児童委員などが、セーフティー・ネットワークを形成し、子どもを見守りつつ、親への支援を行うレベル。
C グレーゾーン(啓発・教育):子どもの権利条約や子どもへの不適切な関わりについて、大人に啓発・教育することで、マルトリートメントを予防していくレベル。

3歳児健診

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「三つ子の魂100まで」3歳は、お子様の成長にとって非常に大切な時期と言えます。幼稚園や保育園などでの集団生活の場に参加する準備ができているか、生活面の自立、友達関係が築けるか、自我の形成が始まっているか(いたずら好きなこの頃から第一反抗期が見られるのは正常な発育に大事なことです)などを総合的に判断する健診として位置づけられています。

診察の手順
(1)まずは、しっかり安定して歩けているか(跳んだりもできるか)
身長はおおむね90cmを超え、運動面では、走る、跳ぶなど大まかな運動ができるようになります。また、クレヨンを持って書いたり、積み木が積めたり出来るようになっています。排便、排尿ができ、年齢、名前が言えて、簡単な文章がいえるようになります。(パパ会社行ったなど。二語文は9割以上で可能) 発音がうまくできない場合は、中等度の難聴が否定できないので、精査が必要です。

(2)座って、目線がしっかり合わせることができるか?
(3)「お名前は?」「お年は?」など、質問の意味をちゃんと理解できるか
言葉がでない、指示が通らない、友達遊びができないなどからは、知的障害や自閉症などを考慮することになります。目がまったく合わないときは、広汎性発達障害(自閉症)を疑います。

 

発達障害

精神遅延(知的障害)については、話す力、ことばの理解、形や状況を認識する知的な能力が低く、社会生活をしていく上で支援が必要です。 知的な遅れが追いつくのは、年長までです。小学校に上がる時に、IQ50だった児童が、中学校でIQ90になることはありません。いずれ追いつきますよなどと無責任な言動は避けるべきです。

広汎性発達障害(自閉症)は、対人関係が薄く、社会性の発達が悪い。コミュニケーションに障害があり、興味、活動に強いこだわりがあり、反復的行動が見られます。具体的には、ごっご遊びなど集団に入れないで(他児に関心がない) 一人で扇風機や水の流れなどじっと見ていたり、 奇声を発したり、自己刺激(耳を覆って音遊び、くるくる回る、壁を触り廻る)の単調な遊びをずっとしている。文字や記号、国旗、道順、服装、食事などへの尋常でないこだわりがあるなど。

注意欠陥多動性障害は、抑制機能、実行機能の障害により、日常生活に著しく支障をきたすほど多動、注意集中困難、気が散る、衝動性の目立つ場合をいいます。しかし、3歳児が、じっとしないで歩き回っているのは、正常範囲内です。多動性障害と診断するのには、ちょっと早すぎると思われます。

心身障害の領域では「療育」という語が使われます。療育訓練により、生活能力を向上させることで障害は、見かけ上、軽度になります。身近な目標を決めて、ひとつづつクリアすることで、自信をつけさせ、できる範囲での自立を促します。

3歳児健診を契機に発見される疾患に、身長や体重の伸びが悪くて見つかる、成長ホルモンの欠乏や軟骨異栄養症、ターナー症候群などの先天性のものなどがあります。また、歩き方がおかしい、転びやすいなどから、筋・神経疾患がなどが見つかることもあります。

痙攣については、熱性痙攣なら問題ありませんが、3歳になって初めて起こす痙攣については、精査が必要です。夜尿症は3割の子どもに日常的に見られ、心配はありません。

左利きは、無理に右利きに変えるよりも、両手が上手につかえるようになることを目標にしましょう。

 

側彎症

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後ろ向きでまっすぐ立って、背骨が曲がっていないか、両肩、肩甲骨の左右差がないかを確認します。側彎症が低年齢の女児で見つかった場合は、進行の危険性が高まります。

 

漏斗胸

ほとんどの場合は、ごく軽度の漏斗胸ですので、成長と供にしだいに目立たなくなっていきます。経過観察し、中等度や重度の場合は、臓器を圧迫し、さまざまな症状が現れる場合もあります。漏斗胸の外科的治療の至適年齢は3歳以上〜就学前といわれている。
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早発乳房

機能性排卵嚢胞が一時的に腫大し、エストロゲンが過剰に分泌されることによるとされ、数年以内に消退する一過性のものである。しかし、乳房の発達(乳房と乳頭が隆起し、乳頭輪の大きさが増す)以外にも、性器出血や身長のスパートなどの二次性徴が認められる場合は、視床下部過誤腫を考慮する必要がある。

 

母乳保育について

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妊娠中には、母乳で育てたいと考えている女性がほとんどですが、生後1ヶ月後には、完全母乳育児率は、半分以下になってしまいます。母乳中には生きた細胞、免疫物質、抗感染物質など、あかちゃんを病原体から守る物質がたくさん含まれています。あかちゃんが欲しがるときに、欲しがるままの授乳をすることで、母乳の分泌が確立し、維持されるので、1日8回以上の頻回授乳を勧めています。3ヶ月前後に、反射的、本能的な哺乳から随意的な哺乳に変わる時期に、母乳を飲まなくなる時期がまま見られます。勝手に母乳が出にくくなったと判断したり、体重の増えがよくない、栄養不良を言われた、夜泣きがひどい、いつまでも吸い続けて満足しないなどの雑音に負けて、安易に人工乳に移行してしまうことがありますが、母乳の分泌は乳首を吸う刺激によって作られるので、とにかく、赤ちゃんに繰り返し、乳首を吸わせる頻回に授乳するで、母乳の出がよくなるので、母親自身が、気分をゆったりもつように努め、母乳で育てられるという自信をもつことが最も大切です。しかし、そうはいうものの、日本のミルクも大変質の良いものなので、無理に母乳にこだわる必要もありません
母乳を中止する時期は、自然にまかせましょう。お母さんがあげたいと思い、子どもが欲しがる間は、飲みたいだけ飲んで、卒業するまで飲ませましょう(卒乳)


離乳食
初めてドロドロした食物を与えたときを言います。重湯やスープは離乳食といいません。およそ生後5ヶ月になったころが適当とされています。
牛乳は、1歳未満の乳児では、鉄の吸収を阻害したり、少量ながら消化管出血を起こすことがあり、望ましくないとされています。
ハチミツは、乳児ボツリヌス菌予防のため、 1歳未満の乳児には使わないとされています。
フォローアップミルクの意義については、賛否両論あるようですが、牛乳の代替品であって、母乳の代替品ではなく、離乳が支障なく行われていれば、積極的に勧める理由はないとされています。

 

事故の予防

この年齢の死亡原因は事故によるものが第1位である。家庭内の乳幼児の事故の多くは、保護者などの注意によって防ぐことができるものが大部分です。
タバコ(誤飲、 なんでも口に入れます) → 3ヶ月健診
◎こんにゃくゼリー、ピーナッツに注意(気管内異物 窒息)
◎風呂の残り湯をしない(浴槽での溺水)
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トイレットトレーニング

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あまりあせらずに、気長にやるようにしましょう。早く始めても、結局は、トレーニングにかかった期間は長くなったということもよくあります。日中、少なくとも2時間おしっこをしない、昼寝の後、おむつが濡れていない。排尿、排便しようとする時に、表情や姿勢、言葉でわかるなど子供にとっても、ストレスなくできそうな時期がくるのを待って開始する方がいいでしょう。

 

母子(健康)手帳

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妊娠していることが分かった時点で「妊娠届」を提出すると、たつの市から母子手帳がもらえます。この手帳は、妊婦の健康やアドバイス・そして出産時の情報、出産後の予防接種や成長記録等を記入できるようになっていますが、保護者が書いて欲しくない情報は、書かないようにする配慮も必要です。母子手帳は、内容も充実しており、世界に誇れるミニ育児書です。上手に活用しましょう。

 

乳児健診に思うこと

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開業した当初、学校医のあり方について、医師会のある理事の先生とは、かなり考え方の隔たりがあり、一悶着あり意見書まで提出しましたこともありました。(のれんに腕押し、糠に釘でしたが・・・)乳幼児健診でも、なんの説明もなくあたりまえのように名前が入っているのを見て、丁重にお断りしたのですが、「みんなやっているんだから」の一言で一蹴されてしまいました。予防接種ぐらいならいざ知らず(本当は、予防接種もちゃんとオリエンテーションがあってしかるべきと思います。今の時代、勤務医の仕事と開業医の仕事(役割)がまったく異なっているという意識がないのだと思います。実際に近隣の自治体ではBCGを1カ所だけ接種するということが起こりましたが、これは個人的な問題ではなく、組織としての危機管理がうまく機能していない一例と思っています)本当に今まで大きな事故なく過ごせているのを不思議に感じ、こんなええかげんなことでいいのだろうかと疑問に思ったりしたものです。仕方なく、小児科の先生の健診を何回か見学させてもらい(小児科の先生にとっても、たかが健診、されど健診)おそるおそる健診に望んだわけですが(まじで、万年研修医を実践させられます)健診を受けに来られる保護者は「健康で疾患や障害がない保証」をもらいにこられるわけで、あんなちっちゃな3ヶ月のあかちゃんなんか1回も見たこともない私が、健常であろう?乳幼児を診察して「異常なし」と診断するのも結構、ストレスになるものなのです。いつか、痛み目にあわないうちに、内科医でもなんとか60点が取れるよう、将来的には、小児科の先生になんらかのオリエンテーションをしていただけるようなシステムを作っていかないといけないと思っています。