たかが便秘と思いがちですが、それは、便秘で苦しんだことがない人の台詞でしょう。僕の場合、病態的には過敏性大腸症候群の便秘型>下痢型に近い慢性便秘でしょうか?普段はあまり気にもしていないのですが、気がつくとそう言えば何日も便が出ていないちょっとお腹が張った感じですが、そのうち出るかなって感じで、コロコロ便がでたりしながらなんとなくやり過ごせている程度のものです。しかし、年に数回はかなり強めの左の下腹部痛を伴う便秘があり、コロコロ便〜粘土様〜泥状便に細切れになってゴロゴロ、キュルキュル腹鳴を伴いながら最終的には下痢になって治ります。ここまで来るとやはり出かけていてもトイレを気にしないといけないレベルなので生活に支障がある=便秘症という疾患をもっているということになるんでしょうね。

便秘って教科書に載ってましたっけ?学生時代ほとんど勉強した記憶がありません。国家試験にでないからでしょうね。日常診療では多い「かぜ」もいっしょです。たしかに便秘で死ぬわけではありませんが、QOLの低下は免れません。便秘の有訴者数は、人口1,000人につき男性は24.7人、女性は50.6人となっており、若年層では女性に多く、加齢に伴い男女ともに増加します。実際に病院での処方箋を検討した報告では、いろいろな疾患で病院にかかられていますが、約15%の患者さんに下剤が処方されているようです。また、慢性便秘症に限定した疫学調査は日本では行われていませんが、前述の調査からは、便秘症と同様に慢性便秘症の患者も女性で多くみられ、加齢とともに男女ともに増加していると考えられます。

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消化管として、口から肛門まで、消化管の機能はいろいろ重要なものがたくさんありますが、その中のひとつとして食べた食べ物を肛門の方へ運んでいく運搬として機能があります。このために消化管は大きく分けて二種類の運動をしています。ひとつは蠕動運動と言って口から肛門へ内容物を運んでいくような運動と分節運動で中身を混ぜ合わせるような運動があります。で、場所によってスピードが随分違っていて0.2cm/秒しか動かないところや20cm/秒も動くところもあります。消化管から分泌される胃液や胆汁、膵液は、1日に約6リットルに達すると言われ、これに食べものの中の水分や唾液を加えると、合計9リットルぐらいの量になります。小腸に流れ込む9リットルのうち7リットルぐらいは栄養素と共に小腸で吸収され、残り2リットルが大腸に入ります。食物繊維が混ざったこの2リットルは、完全に水のような状態です。大腸では主に水分や電解質が吸収されるので、食べもののカス(食物残渣)だけが集められ、それが固まりとなったものが便になります。小腸を通過するのに5〜6時間 大腸を通過するのに1〜2日ぐらいかかると言われています。大腸の中でも均一でなく場所によってかなり違います。上行結腸では行ったり来たりしながらゆっくり動き、肛門に近づくほどだんだん早くなっていきます。直腸まで運ばれると排便反射が起こって出て行くわけですが、1日150gぐらいの便が排出されます。便の内容を見てみると70-80%が水分で、7%腸内細菌、7%超粘膜の脱落、6%が食物残差ガスの成分は99%が窒素、酸素、二酸化炭素、水素、メタンであり、独特の臭いとなるアンモニア、硫化水素、インドール、スカトールは1%程度である。

定義

(1)3日以上便が出てない状態または毎日排便があっても残便感がある状態(日本内科学会)
(2)排便が数日に1回程度に減少し、排便間隔不規則で便の水分含有量が低下している状態(硬便)(日本消化器病学会)
(3)腸管内容物の通過が遅延・停滞し、排便に困難を伴う状態(日本緩和医療学会)

など明確にコンセンサスの得られた便秘の定義は存在しません。実際に一般の患者さんへのアンケート調査でも「便が硬い」「頑張らないと便がでない」「排便の回数が少なくなる」「残便感がある」など便秘は主観的な症状のため、人によって困っていることは違うわけです。国際的にも、便秘という主観的症状を極力客観的に評価する目的で、ローマ基準による「機能性便秘」の診断基準である排便回数、排便困難感、残便感、腹痛、排便時間、便秘の病悩期間など便秘が生活の質に及ぼす影響を評価する方法が広く用いられています。

便秘

僕の場合、過敏性大腸症候群の便秘型と書きましたが、お腹が痛くて、便が硬くなってなかなか出ない場合ですが、普通の便秘は便が硬くてでなくなってもお腹は痛くはないってことになっているようですが、普通の便秘でもお腹が少し痛くなることもあるんじゃないかと思います。この二つを分けることが可能でしょうか?また意味があるんでしょうか?排便習慣は個人差が大きく、そもそも便が硬くても、1週間出なくても、お腹も痛くなくてその人自身がなにも困っていなければ、何の問題もないわけで、誰も大騒ぎする必要はないと思っています。いずれにしろ患者さんが便秘だと思って訴える症状は多彩であり、いろいろな疾患を含んだ塊であるという意識は大切です。

IBS

分類

便秘は、器質性便秘と症候性便秘、薬剤性便秘、機能性便秘とに分類されます。機能性便秘というのは大腸の働きの異常が原因で起こるもので、さらに弛緩性便秘、痙攣性便秘、直腸性便秘の三種類に分類されます。

 
便秘の分類

 

 

(1)器質性便秘

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器質性便秘というのは大腸の形の異常や、傷を伴う病気がもとで起こる便秘のことです。たとえば虫垂炎などお腹の手術のあとの腸の癒着や、大腸の炎症、あるいは巨大結腸症のように腸の長さや大きさに異常があったり・腫瘍などによって腸管の中が狭くなった場合に起こる便秘です。器質性便秘の場合はすみやかに医師の診察と治療を受ける必要があります。

 

(2)症候性便秘 神経疾患、内分泌疾患、精神疾患、糖尿病、膠原病などの疾患は便秘を伴いやすいと言われています。

(3)薬剤性便秘 抗コリン薬(向精神薬、頻尿治療薬、鎮痙薬など)オピオイド(MSコンチン、ディロテップ、トラムセットなど)抗パーキンソン薬、利尿剤、抗がん剤(オンコビン、メトトレキセート、シスプラチンなど

 

(4)弛緩性便秘

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健康な大腸は一定の緊張とリズムをもって運動しています。ところが、大腸の運動と緊張が低下すると、腸のなかの内容物の通過が遅れ水分の吸収が増加するために便秘が起こります。これが弛緩性便秘です。排便時に腹圧をかけるのに必要な、腹筋などの筋力が弱まることも便秘の原因になります。

 
 

(5)けいれん性便秘

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ストレスや感情の高まりにともなう自律神経のアンバランス、特に副交感神経が緊張しすぎることによって起きる便秘が痙攣性便秘です。下行結腸に痙攣した部分が生じ、その部分が狭くなり便の正常な移送が妨げられるために起こります。痙攣を起こした上部は腸の圧力が高くなるため、腹が張った感じがして、不快感や痛みを感じます。排便があっても、便の量が少なく、固い塊(兎糞状)となります。排便後には少しは気持ちがよくなりますが、十分に出きった感じがなく、すっきりしないなど、便の残留感を訴える人が多いようです。
このような人は便秘の後に、腸の収縮した部分より上のほうで水分の量が増えるため、水様の下痢を伴うことがあります。

 
 

(6)直腸性便秘

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便が直腸のなかに進入すると、直腸の壁がのびてその刺激で便意が起こります。ところが、せっかく起こった便意をこらえて排便を怠たったり、我慢するとやがて便意がなくなります。我慢が度重なると、刺激に対する直腸の感受性が低下して、直腸内に便が入っても便意が起こらなくなってしまい、便秘となります。このタイプは直腸性便秘、あるいは習慣性便秘と呼ばれる便秘です。

 
 

 

診断

便秘症の診断では問診が重要であり「どんな便秘ですか」「硬いんですか」「回数が少ないんですか」「残便感があるんですか」「頑張らないと出ないんですか」「お腹が痛いんですか」など詳しく聞いて、患者さん自身が困っているかどうがかまずは大事です。初診時や下剤を最多種類かつ最大量服用しても十分な効果が得られない患者では、排便回数や便の性状などは、排便日誌やブリストル便性状スケールを用いて排便状態を客観的に評価する必要がある。

便形状

そして症状を解決して欲しいとなると身体診察、腹部Xp、一般血液検査ぐらいまでがプライマリーケア医の便秘診療になります。

まずは、器質的疾患の除外です。世界消化器病学会(WGO)による便秘の警告徴候に該当する項目があれば、患者さん自身が困っていなくても、大腸内視鏡検査などの精査を実施することが推奨されています。

警告兆候

警告兆候がなさそうなら、次に薬剤のチェックです。今の時代、薬剤性便秘の除外は必須です。高齢者になるとやたら薬を飲んでいるんですね。70歳以上になると10剤以上、75歳以上になると15剤以上処方されているケースも稀ではありません。こうなるとこの中に1〜2種類の便秘を起こす薬が紛れ込んでいる場合も多いわけです。便秘を起こす薬の代表選手は抗コリン薬で、向精神薬、泌尿器の薬、神経の薬などがあります。オピオイドを処方する時は必ず便秘薬を併用します。

薬剤性便秘

 

さらに、症候性便秘の原因となる疾患がないかをチェックします。

症候性便秘

 

残ってくるのが機能性便秘です

 

治療

便秘と言えば、浸透圧性下剤(酸化マグネシウム)と刺激性下剤(センノシド)の2剤が薬物治療のほぼ全てを占めるといっても過言ではなかったと思います。(当院では漢方薬も3割ぐらいは占めています)しかし、ピコスルファート以来32年ぶりの新薬となるルビプロストン(アミティーザ)が2012 年に発売され、新しくグーフィスも登場し、リンゼスが慢性便秘に保険収載され、検査前の処置 が慢性便秘にも認められ、この数年間で新たに便秘の薬が4種類も出揃い、日本消化器病学会による国内初の「慢性便秘症診療ガイドライン」も発表されて「ガラパゴス化」していた日本の便秘もやっと国際基準に合わせた診断、治療が始まりました。最近,機能性便秘(腸管の器質的な病変は認められない)を胃結腸反射の低下や排便排出機能の障害などにより発症する便秘で、2排便回数減少型(排便回数が週3回未満に減少)と排便困難型の2つに大別する新分類が提唱されている。この分類は,便秘を原因や病態別にわけることで個々の症例に適した治療法の選択が行えることを目的としている。

便秘の分類

排便回数減少型と排便困難型の2つの型はさらに2つのタイプに分かれそれぞれ治療法が異なります。まず、排便回数減少型は、食事の内容や量が便秘の要因になっている大腸通過正常型と、腸管の動きが悪く便が腸内に滞りがちな大腸通過遅延型に分かれます。どちらのタイプか正確に見極めるには、20個の小さなバリウムの粒を含む検査薬を服用し、5日後に腹部のエックス線検査を受けて、4個以上が大腸に残っていれば通過遅延型、3個以下なら通過正常型と診断します。(保険適応ありません)大腸通過正常型便秘症では、食物繊維摂取不足が原因であることが多く、食物繊維摂取量の適正化 (18〜20g/ 日が目標)が勧められます。しかし、排便回数減少型は、大腸通過遅延型である可能性が高く、食物繊維を増やすとさらに便秘が悪化する恐れがあり注意が必要です。大腸通過遅延型に対する薬物治療の基本は、酸化マグネシウム、ビーマス 、ルビプロスト ン、リナクロチドなどの非刺激性下剤の量や種類を調整することによって排便回数を2日に1回 〜1日2回に調整する。

酸化マグネシウム 腸管内の水分量を増やして便を柔らかくするとともに腸管内容量が増加することで蠕動を誘発しやすくする。

ビーマス 浸軟性下剤としてのジオクチルソジウムスルホサクシネート(DSS)と刺激性下剤としてのカサンスラノールの合剤であり、カサンスラノールの腸管刺激性はセンノシドの10分の1程度と極めて弱く、1日最大用量が6錠なので微調整も可能である。

ルビプロストン(アミティーザ) 2012年12月に本邦で発売開始。上皮機能変容薬と呼ばれ、小腸粘膜のタイプ2クロライドチャネル活性化による塩素イオ ンの腸管内への能動輸送に伴って、小腸で水分分泌を促進して軟便化や排便回数を増加する非刺激性下剤である。

エロビキシバット(グーフィス)2018年4月に発売。回腸末端の胆汁酸トランスポーターへ直接作用し、体内への吸収はわずかです。胆汁酸の再吸収を抑制することで、胆汁酸の作用で(大腸への水分分泌と消化管運動の促進)便秘を改善します。

モビコール 2018年11月に発売。慢性便秘症に対して使用可能な国内初のポリエチレングリコール(PEG)製剤で、2歳以上の小児および成人において使用が可能。本剤は、主成分のポリエチレングリコール(マクロゴール4000)の浸透圧効果により、腸管内の水分量を増加させ、その結果、便中水分量が増加、便が軟化、便容積が増大することで、生理的に大腸の蠕動運動が活発化し、排便が促されることを期待した薬剤です。大腸内視鏡検査前の経口腸管洗浄剤であるニフレックの有効成分もポリエチレングリコール(PEG)でほとんど一緒です。

リナクロチド(リンゼス) 2017年3月に便秘型過敏性腸症候群にのみ保険適応で発売。ルビプロストンと同様に上皮機能変容薬であり、腸粘膜 上皮のグアニル酸シクラーゼ C 受容体活性化による塩素イオンと重炭酸イオンの腸管内への能動輸送に伴って、小腸で水分分泌を促進して軟便化や排便回数を増加する非刺激性下剤である。2018 年8月に慢性便秘症に保険適応が拡大された。また、用法では食前投与とされているが、これは下痢の有害事象を避けるためであり、排便回数増加や軟便化といった下剤としての効果を期待する場合は、むしろ食後投与にした方が効果が高い可能性がある。

センノシドなどの刺激性下剤は、上記の非刺激性下剤が適量に達するまでのレスキューとしてのみ使用する。 その使用のポイントは、排便は毎日ある必要がないことを患者に教育し、排便が全くなかった日の睡眠前に刺激性下剤を服用し、排便があった日には服用しないように指導する。これは大腸壁の無用かつ過度な収縮を避ける ためであり、刺激性下剤を長期にわたって使用するために有用と考えるからである。しかし刺激性下剤の耐性や嗜癖性自体は証明されていないどころか国際的にはむしろ否定的な意見が多く、刺激性下剤を過度に忌避する必要はない。

ガイドラインでは、第一段階として膨張性下剤(人工食物繊維)であるポリカルボフィルカルシウムやカル ボキシメチルセルロースを使用することが推奨されていますが、これらの薬物の有効性に関してはエビデンスは多くありません。第一段階の治療で十分な効果が得られなければ第二段階として浸透圧下剤や腸管上皮からのクロライドイオン分泌促進薬であるルビプロストンやリナクロチドを使用します。 この段階で使用される薬剤は腸管内の水分量を増加させる作用機序を持つものです。 酸化マグネシウムの高齢者への使用に関しては腎機能を含めて慎重に検討を行った後に使用する。小児であれば浸透圧下剤の中でも糖類下剤のラクツロースを使用することもできる。これらの薬剤でも治療効果が十分ではないときには大腸刺激性下剤の屯用使用を追加する。漢方薬に関しても便秘の治療に使用される漢方薬の多くは大黄を含有しており、その性格は刺激性下剤に近いものが多いため漢方薬も連用は避け屯用使用を原則とするべきであろうと考えられる。腸管の運動能を高める薬剤の連用が必要な時には大腸刺激性下剤を選択せずモサプリドなどの消化管運動機能改善薬を選択するようにする。 

便秘薬

便秘薬

 

そして、最大量の下剤でも十分な排便が得られない高度大腸通過遅延型便秘症である結腸無力症に対しては結腸全摘+回腸直腸吻合術が適応となる場合があるが、その条件として、大腸通過時間検査を用いて最大量の下剤でも糞便が十分に排出されないことを客観的に確認すること、上部消化管に機能異常が存在せず慢性偽性腸閉塞症が否定されていること、排便造影検査等で便排出障害の併存が否定されていること、高度な精神・心理的障害を有さないの4条件が挙げられる。ま た、手術によって排便回数が正常化して糞便が十分に排出されるようになっても、腹痛や腹部膨満感は必ずしも改善しない可能性を、術前に十分に説明しておくことも重要である。

排便困難型について、骨盤底筋協調運動障害が原因である患者では生活・食事指導も薬物療法も治療効果が低い。病因は排便時に腹筋の収縮と内外の肛門括約筋、恥骨直腸筋の弛緩を同時に行うことができないことにあるため腹筋と肛門括約筋の収縮・弛緩状態を筋電図や内圧検査でモニタリングしながら視覚的に患者に認識させることにより、肛門挙筋や肛門括約筋などの排便関連筋群や腹圧を生じる腹筋群の協調運動を良好にコントロールできるように訓練する治療法です。バイオフィードバック療法による便秘の症状改善率は約70%であり、メタ解析によっても有効性が高いと報告されている。下剤は大腸通過時間を短縮する目的では不要であるが、軟便化することによって排便困難を軽減する目的では有効な場合が多い。酸化マグ ネシウムなどの浸透圧性下剤を用いて、便性状をブリストル便性状スケールで 4〜5 型に調整する。また新レシカルボン坐剤などの坐剤も便排出障害の原因に関わらず排便を誘発する刺激として有用なことが多い。

便秘治療の基本は生活習慣の改善や薬物療法といった内科的治療であるが、症例によっては外科的治療が必要となる。直腸瘤は器質性便排出障害の原因の一つであり、直腸膣中隔の脆弱化によって排便時に直腸前壁が膣腔内に膨隆する病態で、排便困難感、残便感、頻回便、会 陰部不快感などの原因となる。治療法として、下剤やバイオフィードバック療法もある程度は有効であるが、根本的治療法は手術による直腸膣中隔の修復・補強である。直腸重積も器質性便排出障害の原因の一つであり、怒責時に直腸内でたるんだ余剰の直腸粘膜が重積することによって便排出経路が閉塞されたり、重積した粘膜が糞便と誤認されたりするために、排便困難や残便感を生じる病態である。排便造影検査で直腸重積の有無や程度を診断することが出来るが、直腸重積があっても排便障害症状を有しない者もいるため、その病的意義の評価は困難である。主な治療法は手術である。

 

 

排便姿勢

実は和式トイレが排便には最適の姿勢になります。排便姿勢として「しゃがむ」姿勢が見直されています。つまり蹲踞(そんきょ)しているしゃがんだ姿勢で「スクワットポジション」と呼ばれている姿勢が解剖学的に恥骨と直腸が近接し、直腸肛門角が直線に近くなり、下腿が上行結腸や下行結腸を圧迫して腹圧がかかり、排便が容易になる姿勢なのです。便秘症の患者において、排便姿勢は非常に重要です。排便時にしゃがむことが少ない現在、踵をつけて座ることができない小学生がなんと多いことか(側弯症検診でやってもらうことがあります)様式トイレでも理想的な排便姿勢に近づけるには、踵を挙げてつま先立ちにして(足置きを置く)膝を臀部よりも高くして、背筋を伸ばして前かがみ35度の前傾姿勢を取るように(和式トイレの姿勢がを知っている人はそのように)指導しています。姿勢

排便姿勢

 

食物繊維

便秘の生活指導では、患者さんに水分摂りましょうとか食物線維を摂りましょうとか運動をしましょうなどと勧めることが多いのではないでしょうか。しかしこれらの生活指導が有用であることを示すエビデンスはあまりないようなんですね。

日本人の食物繊維の摂取量は減少の一途をたどっている。食物繊維の摂取比率は1947~1965年まで穀物が最も多く約30〜40%を占めていたが、1987年には穀物が減少し、野菜類が30%前後で最も多くなった。


日本家政学会誌, 45(12), 1079, 1994


食物繊維は、水溶性と不溶性の2種類に分類されます。水溶性食物繊維は、昆布、わかめ、こんにゃく、果物、サトイモなどに多く含まれる。粘着性により胃腸内をゆっくり移動するので、お腹が空きにくく、食べ過ぎ防止効果あり。糖質の吸収を緩やかにし、食後血糖の急激な上昇を抑える。不溶性食物繊維は、成熟した野菜などに含まれる糸状で長い筋。ボツボツ、ザラザラしているのが特徴。穀類、野菜、豆類の他、エビやカニの表皮にも含まれる。胃や腸で水分を吸収して大きく膨らみ腸を刺激して蠕動運動を活発にし便通を促進する。

野菜に含まれる食物繊維量と水溶性/不溶性の割合を以下に示す。

食物繊維の水溶性/不溶性の食物繊維の比率が大事であり、理想的には、水溶性:不溶性=1:2が理想とされている。ゴボウは上記表で見ると水溶性:不溶性の比率がよく、繊維量もそれなりに多く、理想的な食材と言えるが、水溶性繊維は、長時間水の中に付けておくと流出することがあり、食物繊維を多く含む食材を探すだけでなく調理法も問題である。

食物繊維が便秘に効果があるというお話の根拠となっている文献を探してみると、確かに食物繊維の摂取量が多い人、運動している人の方が便秘の罹患率が低いことが報告されていますが、では、今現在、便秘の人が食物繊維をたくさん摂ったら、運動したら便秘が改善するかどうかはわかりませんよね。2005年のAJGのレビューでは運動や排便習慣の改善を含む生活習慣の改善や食物繊維や水分摂取を含む食事の改善と便秘症の改善との相関そ示すエビデンスはないと結論づけられています。その後も便秘に効果があるとする論文と効果がないとする論文があり、その有効性はファジーな感じではっきりしていないようです。水分摂取のエビデンスも1日の水分摂取量が500ml以下の場合は便秘になるとの報告はありますが、便秘の人に水分摂取を促しても脱水がない場合は水分摂取量の増加による排便状態を改善するとする報告はないようです。島根医大の木下先生が、水溶性食物繊維が多いごぼうを機能性食品として開発できるかどうか産学連携研究として、ごぼう粉末10g入りのみそ汁を1日2回2週間投与(現在の日本人の食物繊維の摂取量50%増)で便秘が改善するかどうかをクロスオーバー試験で追試をされていますが、便の性状、排便回数、腸管の通過時間とも全く差がなかった(食物繊維を食べても効果がなかった)と言われていました。

しかし、運動や水分、食物繊維の摂取などが便秘にどうかはさておき、生活習慣や食生活を改善することは、一般論としては体に悪い事をしているわけではないので、副作用はありませんし患者さんに勧めるのはOKかと思います。