血液の病気

まず、血液の病気のお話をするためには、末梢血像がたびたび出てくるので、その解説から始めましょう。

血液を顕微鏡(400〜1000倍)で見てみるとたくさんある赤い円盤(中央部は薄いので明るく見える)が赤血球(7〜8μm)です。淡青紫色の小さなゴミのように見えるのが、血小板です。赤血球よりちょっと大きめの青紫色(分葉したり丸い塊)細胞が白血球です。

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初めに、とくに白血球の分類が難しいし、白血病を含む病気もシビアのなで、白血球の見方からです。

末梢血にみられる白血球の種類として
①顆粒球  細胞質内に豊富な顆粒を有する白血球で、好中球、好酸球、好塩基球があります。
②単球   一番大きな細胞。
③リンパ球 小、中、大に 分けられる。

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好中球は、白血球の60%~70%を占め、微細な淡紅色の顆粒と少数のアズール顆粒が細胞質を満たしている。核は通常4分葉まで、女性では、核に「たいこばち」のあるものが含まれる。好中球は、細菌感染での増加します。遊走性があり、炎症機転で血管から血管外(組織中)に遊走して、細菌などを貪食します。食細胞としての機能はマクロファージの方が強く、好中球は細菌を食べて死滅し、これが膿となります。

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好酸球は、淡橙色の顆粒が細胞質を満たしているのが特徴で、細胞からケミカルメディエーターと呼ばれる種々の作用の強い物質を分泌放出させます。核は通常2分葉~3分葉。気管支喘息などや寄生虫などによって増加します。

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好塩基球は、茶褐色(黒紫色)の大小不同の顆粒が特徴。正常末梢血液像でみられないことが多い細胞で、好塩基球が増加した場合は、CML を疑う。

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単球は、正常末梢血液中でもっとも大きな細胞 。核は卵円形、腎臓型、馬蹄形をしている。アズール顆粒が見られる。血管の外へ遊走してマクロファージになる。末梢血中で単球の割合が増加している場合は、注意が必要。

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リンパ球は、血中に約30%に存在。リンパ球は、分化する過程で2種類に分けられます。骨髄で発生し胸腺で成熟するT細胞と、骨髄で発生し骨髄で分化成熟するB細胞で、各リンパ組織に定着します。B細胞はこの二次リンパ組織と呼ばれる扁桃やリンパ節などで抗原刺激を受けて分裂増加します。T細胞は非自己抗原を認識する細胞として教育され、全身の監視役細胞(細胞性免疫)となります。B細胞はさらに分化して抗体を専門に産生する形質細胞になります。(液性免疫)

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白血球や赤血球、血小板など、あらゆる血液細胞は骨髄(出生後から10歳代までは全身の骨の骨髄で造血が行われていますが、20歳前後からは、体の中心部にある胸や腰の骨などの限定された骨髄でのみ、造血が行われるようになります)の中でできています。骨髄に存在する造血幹細胞は、自らもコピーして増えることもできるし、どんな血液にも分化できる能力のある文字通り魔法の細胞です。造血幹細胞が、白血球になるか、赤血球、血小板になるかは、造血促進因子に影響されるといわれています。造血幹細胞は、コロニー刺激因子(CSF)で白血球に、エリスロポエチンで赤血球、トロンボポエチンで血小板へと誘導されます。

造血幹細胞

 



このページでは、岡田 定先生のお教えに従って、血算の異常パターンを8パターンに分けて整理してみようと思います。

 

(1)赤血球減少パターン

貧血のページに飛びます。

(2)赤血球増加パターン

(3)白血球減少パターン

白血球減少症

好中球
リンパ球(異型リンパ球 ウイルス感染)
単球
好酸球 増加症(サプリメントなどのアレルギー)
好塩基球(CML)
その他(幼弱な血球の増加)

薬剤性 メルカゾール H2ブロッカーなど

(4)白血球増加パターン

白血病

白血病は「血液のがん」ともいわれ、遺伝子変異を起こした造血細胞(白血病細胞)が骨髄で無秩序に増殖して、白血病細胞が造血の場である骨髄を占拠するために(正常な白血球や赤血球、血小板を作る場所がなくなる)正常な造血を阻害して、感染症(白血球減少)や貧血(赤血球減少)出血症状(血小板減少)などの症状が出やすくなり、多くは骨髄のみにとどまらず血液中にも白血病細胞があふれ出て、白血病細胞がさまざまな臓器に浸潤(侵入)して障害することもある。急速に進行する急性白血病と、ゆっくり進行する慢性白血病に大きく2つに分類され、さらにそれぞれ骨髄系細胞から発生する骨髄性白血病と、リンパ球系細胞から発生するリンパ性白血病に分けられます。

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慢性骨髄性白血病

慢性骨髄性白血病(CML:Chronic Myelogenous Leukemia)は、比較的ゆっくり進行する血液のがんで、骨髄増殖性腫瘍の1つに分類されます。フィラデルフィア染色体(Ph)という特異な染色体をもっており、この染色体の異常が病態の原因です。やや男性に多く、わが国における発症頻度は10万人に1~2人と比較的まれで、成人における白血病全体の約20%を占めます。

症状
白血球ががん化して白血病細胞となっても、ほぼ正常の白血球と同じ働きをする上にゆっくりと進行するため、初期の段階ではほとんど症状がみられません。一般的に30〜40歳代で発病することが多く、無症状で健康診断などで白血球数の増加を指摘され、偶然に見つかることがほとんどです。発見された時期により差がありますが、病気の進行とともに血液中の白血球数と血小板数はふえていきます。そして、白血球数が増加するに従って、貧血症状、全身の倦怠感や無気力、夜間の寝汗、体重減少、脾臓の増大による腹部膨満感などの症状があらわれます。

診断
著明な白血球像かにもかかわらず、貧血や血小板減少がなく、末梢血塗抹標本で顆粒球系細胞を多数認めることにより慢性骨髄性白血病(CML)を疑われます。

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骨髄芽球(myeloblast)からこの3種の顆粒球が分化します。前骨髄球(promyelocyte)は、細胞質中に顆粒が出現した段階。骨髄球(myelocyte)は、特異な顆粒が出現し始め、細胞核クロマチンが粗くなり始めた段階。後骨髄球(metamyelocyte)は、特異な顆粒を含む細胞質となり、細胞核に凹みが見られる段階。桿状核球(stabcell)の細胞核は棒状の核となる。好中球や好酸球、好塩基球は分節核細胞となり、桿状核球とあわせて末梢血中に出現する。骨髄芽球や骨髄球などを幼弱細胞は、正常では末梢血で見ることはできません。

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慢性骨髄性白血病は、急性骨髄性白血病へ移行(急性転化)する前の慢性期の間に見つけて治療しなければなりません。慢性期にゆっくり白血球が増加してくると、骨髄球や後骨髄球が増えてくると同時に好塩基球増加があれば、まず慢性骨髄性白血病を考えます

慢性骨髄性白血病の確定診断は、骨髄細胞の染色体検査からt(9:22)(q34:q11)のフィラデルフィア染色体BCR/ABL遺伝子を同定することです。

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BCR-ABL融合遺伝子を視覚化して同定する方法もあります。蛍光in situ hybridization(FISH法)は、DNAの塩基配列に蛍光色素を付け、蛍光シグナルを蛍光顕微鏡で見ます。正常細胞では赤色のABLと緑色のBCRが別個に2個づつ検出されますが、BCR-ABL融合遺伝子(9:22転座陽性細胞)では、融合された黄色が1個が検出されます。

健康成人に見られた白血球増加症は、健康診断で約1〜2%に認めます。最も関連する因子は、喫煙と肥満(BMI>25)です。

 

(5)血小板減少パターン

血小板の正常値は15万以上ですが、肝硬変になって10万を切ったとしても血小板は5万もあれば日常生活になんの問題も生じません。2万ぐらいになってくると、やっとちょっとは出血傾向がでてくるかなって感じです。紫斑など臨床症状を伴う血小板減少は、考えなければいけません。

出血傾向が強い場合、臨床的に考えなければならない病態は、
(1)血小板減少
(2)凝固線溶系の異常(DICなど)
(3)血管系の異常(血管性紫斑病、老人性紫斑病など)

血小板減少をきたす機序は、
(1)骨髄で産生低下(白血病 再生不良性貧血 巨赤芽球性貧血 骨髄異形性症候群 抗がん剤の副作用 癌の骨転移など)
(2)末梢での破壊亢進(特発性血小板減少性紫斑病 全身性エリテマトーデス 血栓性血小板減少性紫斑病 溶血性尿毒症症候群 DICなど)
(3)脾臓での貯蔵(肝硬変など)

 

DICの診断には、いろいろな検査がありますが、患者さんを診てちょっとおかしい、重症感があって、FDPとDダイマーが上昇していることが大切です。DICがある場合は、体に重大なことが起こっている証拠ですから、背景の基礎疾患を捜しに行かなければなりません。頻度が多いのは、敗血症、白血病、悪性腫瘍、産科疾患です。

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偽性血小板減少症

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血小板は低いけれど、他の血球系は正常で、なんの臨床症状もない場合は、ゆっくり考えればいいのですが、最も多いのは、偽性血小板減少症です。(血小板数が大きく変動する場合も怪しい)現在の血球数の測定(白血球・赤血球・血小板など)は、EDTAという抗凝固剤(血液を固まらなくさせる薬剤)の入った採血管で採った血液を自動血球計数器を用いて測定する方法が一般的です。ほとんどの場合はこのEDTAで血液を固まらなくさせることが可能ですが、健常人1000人に1人ほどの割合で、このEDTAとの反応により逆に試験管内で血小板の凝集が生じてしまう人がいます。自動血球計数器は、ひとつの血小板も凝集した血小板も1個と計測するため、血小板の凝集が存在する場合、本当の血小板数よりも低値に出てしまうという偽性血小板減少症になってしまいます。EDTAの代わりにヘパリン等を用いて血小板が凝集しない状態で、正しい血小板数の測定します。

 

特発性血小板減少性紫斑病

血小板だけが異常低値で、白血球、赤血球が正常ならば、まず、特発性血小板減少性紫斑病(ITP:Idiopathic Thrombocytopenic Purpura、又はImmune Thrombocytopenia)を考えます。ITPは血小板が減少し、その結果として出血の危険が高まる病気で、国が指定する難病(特定疾患)の対象になっています。明らかな基礎疾患や原因薬剤の関与がなく血小板の数が減少し、出血症状をひき起こす病気です。血小板以外の赤血球や白血球には、異常はみられません。6ヶ月以内に治癒する「急性型」と、6ヶ月以上続く「慢性型」に分類されます。

 
項目名1 急性型 慢性型
好発年齢 2〜5歳 20〜40歳
男女比 1:1 1:2〜4
発症 急性の発症 発症時期はしばしば不明
先行感染 ウイルス感染、予防接種 なし
出血症状 強い 無症状の場合もある
経過 6ヶ月以内に寛解 6ヶ月以上慢性に経過する

 

症例case study

24歳の女性。左足に発疹があり、皮膚科を受診。湿疹+皮下出血?と診断された。処方されたお薬を飲んでいると、3日後に鼻血が止まらず、内科を受診。血小板減少を指摘されて入院となる。後から考えれば、腕や足に紫斑が多く出来ていたのに気が付いていたが、アレルギーだと思って気にしていなかった。

WBC4800 Hb13.2 PLT1.1万

血小板減少性紫斑病

 

ITPの診断には、PAIgGが高値になることが有名ですが、特異的な所見ではありません。診断には、血小板減少をきたす他の疾患を除外する必要があり、これが大変なんです。なにか血小板が減少する疾患をみつければ、それが診断だし、見つからなかったら、ITPという診断になるわけです。つまり、ゴミ箱疾患なわけです。2万以下で症状があれば治療適応ですが、数万以上あり、症状もなければ経過観察です。

特発性血小板減少性紫斑病は、特定疾患になっており、申請書を作るためには以下の疾患を除外しなければなりません。

ITP 申請

2012年に厚生労働省が「成人ITP治療の参照ガイド2012年版」を発表しました。ITP 治療の基本概念として、血小板減少がすべてが治療の対象ではないことがわかっています。すなわち無治療でも510%の症例は自然に血小板数が回復することや血小板数3 万/ml 以上では、一般人口と比較して生命予後に差がありません。また現在の治療法による反応性、副作用を勘案するとITP に因る出血死と治療による副作用死亡がほぼ同じであるなど、長期予後を考えると血小板3 万/ml 以上の症例については無治療経過観察が必ずしもマイナス要因ではないとされています。治療は、重篤な出血を伴う場合です。血小板は、2万が目標です。決して正常値を目指しません。5万あれば手術も可能なので、日常生活をいわんやです。

中高年齢のITP にピロリ菌陽性率が高いことが本邦ITP の特徴である。これら陽性症例に対する除菌による血小板増加反応は約60%に認められる。その効果は長期間(1 年以上)持続し、他のITP 治療の中止が可能となり、再発がほとんど認められない特徴があります。よって、ピロリ菌に感染している場合は、最初に除菌療法を行います。ピロリ菌に感染していない場合は、プレドニゾロンを用います。約80%の症例が血小板数3 万/ml 以上に増加し,中でも約50%以上の症例が血小板数10 万/ml 以上となります。しかしステロイド減量に伴い血小板数は減少し、ステロイドを中止できる症例は10∼20%とされています。無効例には、脾臓摘出術(脾摘)を勧められます。80%に血小板増加反応が認められるが、約20%が再発し、永続的効果は約60%です。脾摘が無効な場合(約30%に見られる)場合には、トロンボポエチン受容体作動薬などが選択されます。

ITP

 

 

緊急時あるいは外科的処置などに対する対応

血小板数1 万/ml 以下で粘膜出血を伴う場合や,主要臓器内への出血(脳内出血,下血,吐血,血尿,多量の性器出血,止血困難な鼻出血,口腔内出血,外傷部位の止血困難な出血など)や血小板数5 万/ml 以下の手術時には,一時的にでも血小板数を増加させることが必要であります。

ITP外科的処置

 

血栓性血小板減少性紫斑病

血栓性血小板減少性紫斑病(TTP:thrombotic thrombocytopenic purpura )は、末梢の細血管が血小板血栓によって閉塞されて起こる病気です。

(1)血小板減少症(出血傾向のため、皮膚に紫斑ができる)
(2)溶血性貧血(赤血球が血管内で壊れる)
(3)腎機能障害(腎臓の毛細血管が血栓で閉塞する)
(4)発熱
(5)動揺性精神神経症状(症状が著しく変動する)

最近では、血小板減少症と溶血性貧血があれば、TTP(疑)で診断を進めます。一方、血小板減少症、溶血性貧血、腎機能障害を3徴候とする疾患で溶血性尿毒症症候群 (hemolytic uremic syndrome; HUS)という疾患があり、実際、臨床上ではTTPとHUSの鑑別はしばしば困難です。

先天性のものと後天性のものとがあります。後天性TTPが、全体の95%以上を占めており、発症年令は乳幼児から老人までと幅広く、男女の発症率は、全体的にはほぼ1:1です。それらは、原因不明に起こるものを原発性、また何らかの基礎疾患があって起こるものを二次性あるいは続発性と言います。近年、特定薬剤による発症も報告されていますが、定期的な検査の実施を徹底し発症予防をしています。

ADAMTS13(別名フォンビルブランド因子(von Willebrand factor; VWF)切断酵素)は、主として肝臓で産生される酵素で、VWFは互いの血小板をくっつける「分子糊」として知られていますが、これを切断するADAMTS13の活性が減少もしくは欠損するために、非常に大きなVWF重合体により、血管内で血小板血栓がどんどんできる状態となりTTPを発症します。

後天性TTPでは、体のだるさ、吐き気、筋肉痛などが先行し、発熱、貧血、出血(手足に紫斑)、精神神経症状、腎障害が起こります。発熱は38℃前後で、ときに40℃を超えることもあり、中等度ないし高度の貧血を認め、軽度の黄疸(皮膚等が黄色くなる)をともなうこともあります。精神神経症状として、頭痛、意識障害、錯乱、麻痺、失語、知覚障害、視力障害、痙攣などが認められます。血尿、蛋白尿を認め、まれには腎不全になる場合もあります。

後天性TTPに対しては、基本となるのは以下の血漿交換療法です。血小板減少に対して、初回に血小板輸血を行うと症状が急速に増悪する事がありますので、予防的血小板輸血は「禁忌」と考えられています。しかし、活動性出血などがあり、やむなく血小板輸血による止血が必要とされる場合もあります。この場合は、その後速やかに血漿交換を行うか、或は時間的余裕がある場合であれば、血漿交換後に血小板輸血を行うという方法もあります。また、この病気の治療において、全身管理は特に大切で、原因疾患がある場合には、その治療が必要です。また、急激な腎機能障害の進行のために人工透析が必要とされることもあります。

(1)血漿交換療法
血漿交換療法が第一選択です。できるだけ早期に血漿交換を開始することが重要だと言われています。
(2)ステロイド療法
多くの症例で血漿交換と同時に実施されています。短期間に大量投与するパルス療法とステロイドを内服する場合があります。
(3)抗血小板療法
TTP回復期の血小板数増加時に再血栓が出来るのを防ぐために、抗血小板薬を併用する事があります。

後天性TTPについては、血漿交換療法が導入されてから治療成績は著しく向上しました。しかし、十分に効果が認められない症例や、何度もTTP症状を繰り返す症例(難治・再発性TTP)、また、TTPの寛解後に膠原病を発症するようなこともあります。

TMAは基本的に血小板輸血をできるだけ避けるべき病態ですが、まず、血小板減少の原因がTMAであることを診断しなければなりません。その診断にはADAMTS13活性測定とVWF解析は必須となります。とりわけADAMTS13活性著減TTPでは、血小板輸血を行う事は「火に油をそそぐ(fuel on the fire)」と云う事になるため血小板輸血は禁忌です。つまり、血小板輸血する前にはADAMTS13活性の測定を実施することが重要です。

 

播種性血管内凝固症候群(DIC)

臨床的に出血傾向がある場合、血小板は2万以下になっている多いですが、血小板数が5万、7万とあって、出血傾向や紫斑などの症状が出ている場合は、播種性血管内凝固症候群(DIC)を疑います。つまり、血小板減少による出血傾向ではなく、凝固線溶系の異常によるものと診断します。DICを確定する検査としては、FDPとDダイマーの上昇です。DICが起こっているということは、尋常でないことが体に起こっているということですからDICを起こしてきている基礎疾患を見つけに行かなくてはなりません。原因として多いのは、感染症(敗血症)白血病、悪性腫瘍、産科疾患です。

(6)血小板増加パターン

血小板増加症

ほとんどは、反応性の一過性増加ですが、一部に本態性血小板血症があり、慢性的に100万近くまで増えているのを放置すると、血栓ができやすく、脳梗塞や心筋梗塞を起こすので治療が必要です。

(7)汎血球減少パターン

汎血球減少症
赤血球、白血球、血小板の3系統の異常です。
(1)肝硬変で脾腫があると、軽い汎血球減少症が起こります。
(2)APL(急性前骨髄性白血病)は白血球、血小板が減少します。心筋梗塞と同じくらいの緊急疾患で、すぐに血液内科に紹介しないといけません。

好中球減少性発熱(FN)とは、好中球が500/μl未満で、熱があるときは、簡単に重症の敗血症になって、ショックや多臓器不全に陥るので、超emergencyな状態と言うことです。(好中球が1000/μl以上あれば、ひと安心)

骨髄異型性症候群

(8)汎血球増加パターン

多発性骨髄腫

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「多発性骨髄腫は、血液のがんの一種です」と言われても、まずは、名前が?ですよね。骨髄というのは、骨の内部にあるドロ〜としたところ(鶏ガラスープを煮る時に、骨を割ると真ん中あたりにゼリー状の組織があります)つまり場所の名前です。そこでは、血液細胞(白血球・赤血球・血小板)が作られていますが、ここで形質細胞ががん化してどんどん増殖して骨髄を破壊するのが骨髄腫です。通常は、全身の複数の骨で異常に増殖するので多発性骨髄腫と言います。

 

 

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形質細胞(プラズマ細胞)とは?。白血球は顆粒球(骨髄球)とリンパ球からなり、リンパ球はB細胞、T細胞等に分類されます。B細胞の一部は成熟して形質細胞に分化し、免疫グロブリンという抗体を作り、細菌などの外敵の増殖を防ぐなどの免疫能に関与しています。

 
 

 

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多発性骨髄腫とは、血液の三大悪性腫瘍(白血病・悪性リンパ腫・多発性骨髄腫)の1つで、骨髄の中にある形質細胞ががん化する病気です。わが国の骨髄腫の発症率は人口10万人あたり2人程度と言われており(悪性腫瘍の1%、造血器腫瘍の10%)年間約4500人の方が新たに多発性骨髄腫であると診断され、患者数は約1万です。発症年齢は、40歳未満の発症は極めて稀で、50歳を過ぎると加速的に増えていき、60歳代がピーク、高齢者になるにつれて多くなります。

 



臨床症状

多発性骨髄腫は、初期ではほとんど症状がでないことが一般的で、健康診断(血液検査で貧血や蛋白を調べる)などで、偶然見つかるケースもしばしばありますが、病状がある程度進行すると、様々な症状が現れてきます。多発性骨髄腫の患者さんにいちばん多くみられる症状は骨の痛みで、約6割の患者さんが腰痛を訴えて整形外科や内科を受診されます。

多発性骨髄腫では多彩な症状が現れますが、代表的な症状(三大症状)としては、
①造血抑制により血球(赤血球、血小板、白血球)が減少し、貧血や出血などの症状が起こる。
②M蛋白が大量に作られることで、免疫機能の低下、腎臓機能の低下、血液循環の障害などが起こる。
③骨に障害が起こり、腰痛が起きたり、骨折しやすくなる。

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骨髄腫細胞は骨髄(血液の工場)の中でどんどん増え続け、しだいに正常な造血細胞(血液をつくる細胞)を押しのけてしまいます。その結果、正常な血液が造る場所がなくなり、血球が減少します。赤血球が減ると貧血(めまい、息切れや動悸、易疲労感など)の症状が表れます。血小板が減ると血が止まらなくなって出血(青あざ、鼻血、歯茎からの出血など)が起こります。また、白血球が減ると、抵抗力が落ちて、肺炎や尿路感染などの感染症にかかりやすくなります。

多発性骨髄腫では、役に立たない異常な抗体(M蛋白)が大量に生産されることで、正常な免疫グロブリンの量が減少してしまいますので、免疫力が低下して感染症(特に肺炎、尿路感染症)などにかかりやすくなります。また、M蛋白が大量に増えると血液は粘性が高くなり、循環が悪くなります。これは過粘稠度症候群と呼ばれ、頭痛や眼が見えにくい等の症状を起こします。さらにM蛋白の一部が変性し、消化管や腎臓、心臓、神経等の組織に沈着することがあります。この病態はアミロイドーシスと呼ばれ、沈着した臓器の機能を低下させることになります。例えば、このM蛋白が腎臓に沈着し(アミロイドと言う物質になる)腎臓の機能が低下し浮腫が起こります。また、患者さんによっては特殊なM蛋白(ベンスジョーンズ蛋白:BJP )をもっている場合がありますが、これは通常のM蛋白より小さいため、糸球体から尿として出て尿細管につまってしまい、腎臓の機能が悪くなることがあります。

造血抑制による血球減少は白血病などでもみられますが、骨に障害が起こるのは多発性骨髄腫に特徴的な症状です。多発性骨髄腫では、破骨細胞を刺激し、どんどん骨が溶けていきます。また、骨の中の骨髄にある形質細胞ががん化し増殖しますので、骨の内側をもろくなって、腰・背中・胸・手足などの骨の痛み(運動をすると増悪)や軽くぶつけたり、くしゃみしただけでも骨折(病的骨折)を引き起こします。椎骨圧迫骨折、腫瘤による脊髄圧迫症状として、手足のしびれや麻痺、排尿や排便障害等の症状が起こります。また、骨の破壊が進むと、骨からカルシウムが溶け出すことによって血液中のカルシウムが増え(高カルシウム血症)、多飲、多尿、口の渇き、便秘、悪心、嘔吐、精神障害、意識障害などが現れることがあります。

検査と診断

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血液検査では、CBC(貧血や血小板)や免疫グロブリン、M蛋白、LDH、BUN、Cr、Ca、アルブミン、β2グロブリンなどを調べます。尿検査では、M蛋白の一つであるベンスジョーンズ蛋白(BJP )の有無を調べます。骨髄穿刺をして、顕微鏡で骨髄腫細胞の種類、マーカー、悪性度などを判定します。画像検査では、X線写真で頭蓋骨や四肢骨、肋骨、脊椎骨などにある円形の孔病的骨折などの有無を調べます。(打ち抜き像や骨折は、77%に認める)CTやMRIでは、全身への広がりをチェックします。

多発性骨髄腫は病型や症状や進行度より、いくつかに分類されています。(IMWG分類(International Myeloma Working Group:国際骨髄腫ワーキングループ))無症候性(くすぶり型)や類縁疾患である単クローン性γグロブリン血症(MGUS)は、臓器障害を伴いません。最も患者数が多いのが症候性骨髄腫で、高カルシウム血症・貧血・腎障害・骨病変などを認めるもので、化学療法を中心とした治療が行われます。

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病期(ステージ)とは、がんの進行の程度を示す言葉で、多発性骨髄腫は、骨髄腫細胞(がん化した形質細胞)数、貧血、高カルシウム血症、骨の異常、M蛋白の量、その後の経過を左右する血清β2ミクログロブリンと血清アルブミンなどによって総合的に判断されて、Ⅰ〜Ⅲの3段階に分けられます。Ⅰ期は、症状のなく、経過観察のみで治療の必要はありません。

 
 

 

多発性骨髄腫を根治させる治療法はいまだ確立されておらず、約60%の患者で症状の緩和や進行を遅らせることができています。放射線療法は、骨の痛みなどの症状を緩和させるために行われることがあります。

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初期治療は、患者さんの年齢、全身状態(Performance Status:PS)合併症の有無、患者さんとその家族の意志等を考慮して、化学療法か自己移植かを選択します。造血幹細胞移植は、4~5年延命できるとされていますが、体力的な負担も大きいので、比較的若い患者(65歳以下)のみ適用になります。

化学療法の標準治療は、メルファラン/プレドニゾロン(MP)療法が推奨されますが、腎障害や骨病変、全身状態が悪い場合は、奏功率が高く効果発現が早いVAD療法(ビンクリスチン/アドリアマイシン/デキサメタゾン)が推奨されます。また、無効、再発例には、より治療効果が高い新薬(ベルケイド/デキサメサゾン)を用いたBD療法が行われます。多発性骨髄腫の治療後の平均生存期間は3~4年で、5年生存率はステージⅢで約50%、主な死因は、免疫力が低下することによる感染症や腎不全の合併となっています。

 




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リンパ球でリンパ芽球(lymphoblast)から分化する。末梢血で見られるリンパ球の多くはTリンパ球である。

中毒顆粒は、大小不同の濃い紫紅色として観察される。好中球の前骨髄球と骨髄球の間の発育過程においてアズール顆粒の成熟異常が起こったときみられる。好中球の需要が高まるときに出現する。

脱顆粒は、通常、好中球は微細な淡紅色の顆粒で満たされているが、細胞質が澄んでみえる。MDS の患者で多く観察される。時にPO活性の低い好中球を持つ患者でも観察される。

過分葉核好中球は、巨赤芽球性貧血、MDS のときにしばしば認められる。核は通常、 4分葉までだが 6~8分葉まで観察される。大きさも通常の好中球に比べ大きい。DNA 合成が低下したことが原因。

異型リンパは、種々のウィルス感染により反応性に末梢血に出現。Downey の分類によりⅠ~Ⅲ型までにわけられる。異型リンパ球は小児にみられることが多い。

造血器腫瘍を疑う細胞
1) 芽球様細胞 :通常末梢血には、各細胞が成熟した形で現れるが造血器腫瘍( AML AMLetc etc)では、未熟な細胞が末梢血に現れることがある。
2) 異常リンパ球 :リンパ性腫瘍でみられる。
3) Plasma 様細胞 :骨髄腫でみられる。
☆特殊な白血病☆
成人 T細胞性白血病: ATL 細胞が出現。

Blast 様細胞は、 細胞自体が大く、核小体が認められ、N/C 比が大きく、細胞質の塩基性が強い。

Plasma 様細胞の特徴 ①核形が円形で偏在性 ②クロマチン構造は粗大結節状 ③核周明庭 ④細胞質はややくすんだ青色 ⑤空砲がみられることが多い。

ATL 細胞の特徴 ①成人 T細胞性白血病でみられ特徴的な細胞。 ②リンパ球の核異型が強く、切れ込みがみられる。 ③通常のリンパ球に比べ核クロマチンが粗剛。 ④顆粒は認められない。

観察のポイントとしては、背景(血小板、赤血球etc)細胞の大きさ、核の状態N/C比、細胞の色調、顆粒の有無(封入体の存在)などです。