緑内障(あおそこひ)

目を閉じて、あなたの目を触ってみて下さい。眼球はゴムマリのように、一定の弾力性がありますよね。この張りが眼圧です。眼球の外壁は柔らかい皮でできていて、毛様体で作られた房水によって硝子体が押され、10~21mmHgの内圧で目の形状を保っています。緑内障になるとこの眼圧が高まることにより、視神経が圧迫され、視神経が障害されて視野が狭くなったり、視力が落ちる病気です。進行すると元に戻すことができず、失明につながる恐ろしい病気です。40歳以上では、30人に1人が緑内障にかかっていると言われています。

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ところが最近の報告(多治見study)では、眼圧は正常範囲にある「正常眼圧緑内障」の方がむしろ多いことが明らかになってきました。(緑内障全体の約7割を占める)結局、眼圧には個人差があり、視神経の抵抗力が弱ければ、眼圧は低くても発症してしまうのではないかと考えられていますが、視神経の周りの血流障害や遺伝が関係するという説もあります。(両親が緑内障なら2倍、兄弟なら4倍)

 
 

 

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また、緑内障には突然に発症するタイプ(急性型)とゆっくり進行するタイプ(慢性型)があります。急性型(閉塞隅角緑内障)はある日突然、目の充血とかすみ・眼痛や頭痛・吐き気などの症状が起こります。房水の出口(隅角)が狭くなるために、塞がって眼圧が急激に上昇することで引き起こされます。 一方、正常眼圧緑内障を含む慢性型(開放隅角緑内障)は、目の奥の房水をろ過する部分の目詰まりで眼球内の眼圧が徐々に上昇し、自覚症状が無いまま慢性に進行する緑内障で、気づいたときには既に手遅れになっている場合も多いのです。正常眼圧緑内障は、視野の検査をして視野の欠損(見えない範囲)の存在の有無を調べないとわかりません。

 

 

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眼圧と緑内障の発生率をみてみると、眼圧が高ければ、緑内障がだんだん増えていますが、正常眼圧でも緑内障の人はいますし、高くても正常の人もたくさんいるわけです。しかし、21mmHgを超えると急速に増えるようです。

 
 

 

緑内障の教科書には、視野が欠けていくイメージ像が説明されていますが、実際は、こんなふうには見えません。こんなに見えたら、患者さんはすぐに病院に駆け込みますよね。ほんとは、相当に進まないと自覚症状(視野欠損)はありません。

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たとえ、両目で見えていても(視野の欠けた部分を、無意識のうちに両方の目で補い合うため、見えない部分があることに気がつかない)初めのうちはごく小さな欠損なので、あまり気になりません。たとえ、視力がおちていなくても(視力は視野中心部のものを見る力のことをいいます。視野(見える範囲)が欠けてきても、視力が良いため、気づきにくいのです。たとえ、痛くもなんともなくても(目が痛くなるのは、急性型です)大部分の慢性型は痛みを感じることはありません。たとえ、健康診断眼圧検査が正常だと言われたとしても、正常眼圧緑内障の場合は、わからないのです。

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実際の見え方は、視野欠損している部分のバルーンが見えていませんが、見えないところは、脳が情報処理をして映像をつくる段階で、周辺の情報から判断して上手に補正されて青空に置き換えられているので、本人には全く自覚できないのです。例えば、道を歩いていて、死角(視野欠損で盲点のようになっている)から突然、目の前に人が現れてぶつかってしまった、床に落ちた薬をなかなか見つけられないというようなことが起こるわけです。

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40歳を過ぎると、無自覚でも正常眼圧緑内障の人がたくさんいるわけですが、みんなに視野検査をするわけにもいきません。眼科の先生がどうしているか聞いてみると、なにかの主訴で受診された患者さんの眼底検査を施行した時に、視神経乳頭の所見から緑内障の疑いの人にあたりをつけて、視野検査などで確認しているとのことでした。

 
 

 

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視野検査です。黒い所が見えていない場所のようです。ちなみに右端の黒い所は、マリオット盲点といって、健常者にもある視神経による盲点で生理的なものです。ネットでも自分の盲点を自覚出来るようなサイトがありますが、動いている虫が突如消えるんですね。理科の実験の様で、ちょっとびっくりしますね。

 
 

 

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緑内障はかなり症状が進行しないと自分で気づかない病気です。決して高齢の方だけの病気ではありません。40歳を越えたら注意が必要です。視神経は、約120万本の神経線維から成りますが、視神経が障害を受けて半分の60万本近くまで減ったとしてもまだ検査しても正常です。5年、10年と経過して30万本あたりまで減ってやっとじわじわと視野が欠けていきます。視覚障害の原因を調べた厚生労働省の報告によると、平成元年に糖尿病網膜症を抜いて、緑内障が第1位となっています。

 

 

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一旦やられた視神経は、もとに戻らないので、早期発見し、それ以上進まないように治療を継続して残された機能を維持するために行う治療を行います。(白内障のように治療すれば見えるようになるというものではありません)緑内障の治療は、まずは眼圧を下げる(その人の視神経が耐えられる範囲内の眼圧にする)点眼薬が中心です。視神経がどのくらいの眼圧に耐えられるかは 個人差が大きく、眼圧が正常の範囲内にあっても、さらに下げた方が良い場合もあります。緑内障の点眼薬のには、ぶどう膜強膜流出路の房水流出を促進するプロスタグランジン関連薬が第一選択で処方されることが多い。局所の副作用(充血、まつ毛が伸びたり、まぶたや虹彩に色素沈着、目が凹むなど)がありますが、全身への副作用も少なく効果も期待出来ます。次に房水産生を抑制するβ遮断薬が選択されるが、喘息や徐脈の人には注意が必要です。他、炭酸脱水酵素阻害剤やα1遮断薬、副交感神経刺激薬などがあり、眼圧のコントロールが不十分なときは、点眼薬を2剤、3剤併用します。

それでもダメな時は外科的治療を行います。レーザーを房水が排出される部分(線維柱帯)に照射し、房水の流出を促進する「レーザー療法」や、手術で線維柱帯の一部を取り除いて房水の逃げ道をつくる「線維柱帯切除術」などがあります。

 



白内障の手術で緑内障を予防できる

緑内障があると、禁忌(使用してはいけない)薬がたくさんあり、薬局より疑義紹介があります。その多くは、抗コリン作用(瞳孔を開くとともに房水の出口をふさぎ、その排出を阻害する作用)を持ち、眼圧の上昇を来たすおそれのある薬です。抗不安薬(セルシン、デパス、レンドルミン、アモバンなども軽い抗コリン作用あり)抗ヒスタミン薬、鎮痙薬、排尿障害治療薬、気管支拡張薬などがあります。抗コリン薬以外では、抗パーキンソン薬のレボドパ製剤、狭心症治療薬の硝酸薬、昇圧薬のリズミックなどがあります。また、ステロイド薬は、絶対的な禁忌ではありませんが、眼圧が上がる人がいます。また、カフェインにも弱いながら眼圧を上昇させる作用があるので注意が必要です。しかし、臨床現場でみる緑内障の患者さんのほとんどは、開放隅角緑内障であり、禁忌とは関係ありません。(禁忌なのは、閉塞隅角緑内障のみ

実際に、緑内障の急性発作なんて遭遇したこともありません。眼科の先生に聞いても、内服薬で緑内障発作を起こした患者さんは稀なようです。注意は必要ですが、必要以上に怖がらなくてもいいようです。閉塞隅角緑内障は、小柄な60歳以上の女性で、遠視の人に多くみられるようです。

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房水の出口(隅角)が狭いことが原因でおこる閉塞隅角緑内障は、加齢とともに水晶体が厚くなることでさらに狭くなり、眼圧が上昇します。(上の図では、隅角がかえって広くなってしまっていますが・・・本当は前方に押されて閉塞隅角になる)このタイプの緑内障に白内障手術が有効です。肥大した水晶体を摘出し、薄い眼内レンズを挿入することで、隅角が広くなることで眼圧が下がります。反対に言えば、両眼とも白内障の手術を施行していれば、緑内障の禁忌薬は考えなくてもいいということも言えます。

白内障(しろそこひ)

白内障とは、瞳のすぐ奥にある水晶体(ピントを合わせるレンズの役目をする部分 直径が11mm前後の凸レンズで、水晶体嚢(のう)という透明の薄い膜に包まれている)が白く濁って視力が低下する病気です。私たちが目で見ている像は、角膜、水晶体を通った光が網膜面で結像したもので、無色透明だった水晶体が濁っていると、集めた光がうまく眼底に届かなくなったり散乱して、霞んで見えたり、眩しくなったり、二重に見えたりします。

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白内障の多くは加齢によるもので、老人性白内障(加齢白内障)が7割以上を占めますが、他にも先天性や外傷性、アトピー、糖尿病など代謝性の病気、薬剤や放射線による白内障などもあります。加齢による水晶体の変化は、個人差はありますが、早い人では40歳代から始まり、80歳代ではほとんどの人に何かしらの白内障の症状がみられます。手術が必要な割合は、65~74歳ではほぼ5人に1人、75歳以上では2人に1人といわれています。片方の眼に起こるといずれもう片方の眼も白内障になる可能性が高くなります。両方の眼が同時に白内障になる場合もあります。加齢に伴う老人性白内障では、水晶体の外側(皮質)から中心部(核)に向かって混濁が進む傾向がありますが、一方、アトピー性の白内障や糖尿病による白内障は、30〜40歳代くらいの比較的若年層に発症し、アトピー性の白内障では水晶体の中心部から混濁が現れることが多く、初期のうちから違和感や見えにくさを訴えるケースが多く見られます。


症状

(1)かすんで見える
白内障の初期は、水晶体の周りから中に向かってまだらに濁ってくることが多く(皮質白内障)光が水晶体を通過する面は瞳孔の大きさで変わりますので、光が通過しないところが濁っている場合は、自覚症状はほとんどありません。徐々に進行してくると濁りのすき間から見ている状態になり、「何となく見えにくい」「ピントがあいにくい」という症状からはじまり「雲がかかったようにかすんで、物がはっきり見えない」となってきて、核の硬化(核白内障)が進行して、水晶体全体に濁りが及んでくると徐々に視力も低下し、最後は明暗のみがわかる程度にまで見えなくなります(成熟白内障)

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(2)まぶしくなる
水晶体の濁りが瞳の中にかかると、外からの光がその部分でいろいろな方向に散ってしまいます。そのため晴れた日の屋外がとてもまぶしく感じてサングラスや日差しよけの帽子が手離せなくなります。特に夜間の運転では対向車のヘッドライトがまぶしくて見えなくなり危険を伴うこともあります。また、遠くが見えにくく感じるために、近視が進んだように感じる場合もあるようです。特に後嚢下白内障というタイプでは日中にはまぶしさで見にくく、曇りや雨の日、室内では見えやすくなるという特徴があります。

(3)ものが二重に見える
核白内障のもう一つの症状に、「月がいくつにも見える」というように物が2つにも3つにも見えるようになることがあります。この場合、白内障のある片眼だけで見た時に、だぶって見えるのが特徴です。
神経や血管がないため、白内障だけでは痛みや充血はありません。


診断

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白内障で見えないと思っていても、実はメガネが合っていないだけのこともあります。まず、メガネを合わしてみましょう。細隙灯顕微鏡検査(さいげきとう)は、眼の中の組織を顕微鏡で拡大して診る検査です。(散瞳すると元に戻るのに4~5時間はかかり、その間はぼやけて見え難くなりますので車の運転は控えましょう)白内障の進行を知るために顕微鏡で眼球の中の水晶体を観察し濁りの程度や部位はもちろん、手術が易しいか難しいかも分かります。

白内障が進行して水晶体の濁りが強くなると、核と呼ばれる中心部の色が黄白色や黄色から褐色、黒褐色へと変わってきます。色の変化に一致して核の硬さも、例えば黄色では寒天、褐色では栗、黒褐色では石ころの硬さというように硬くなります。黄色の軟らかい硬さの核では手術は容易ですが、褐色の硬い核では合併症も起こりやすく手術が難しくなります。また水晶体は周りの壁にチン小帯という細い糸で支えられていますが、歳をとると歯がぐらぐらして抜けると同じように、チン小帯も歳とともに弱くなることがあります。(チン小帯脆弱、チン小帯断裂)

さて、白内障の診断はついたとしても、白内障の手術を施行するにあたって、せっかく手術しても見えないということがないように、眼底検査角膜内皮細胞検査をします。糖尿病網膜症、網膜剥離、網膜静脈閉塞症、黄斑変性症などの併発症があると白内障は手術が成功しても十分に視力が回復しないことがあるので、眼底検査は重要です。しかし、白内障自体が邪魔をして(成熟白内障で水晶体全体が濁っている場合には眼底検査はできません)眼底検査が難しい場合もあります。(強いフラッシュの光を眼にあてて網膜の反応から網膜の機能が正常であるかを大まかに調べる網膜電図(ERG)検査もあります。)

眼の表面には0.5mmほどの厚さを持つ角膜という透明な膜があります。角膜の裏側には角膜内皮細胞という 六角形の細胞が一層あります。白内障の手術で約5 ~10%の角膜内皮細胞減少をおこしますので、術前の細胞数があまりにも少ないと術後に水疱性角膜症性で見 えなくなることも予想されます。一般的には1000個以上あれば安全に手術ができるといわれています。(300~500個まで減少すると透明に保つ力が失われて角膜は濁ってきます。水疱性角膜症の場合には角膜移植が必要となります。

 

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眼内レンズ

眼の中に挿入する眼内レンズにもメガネと同じようにいろいろな度数があります。メガネを合わせるように手術中に見える、見えないで度数を選ぶわけにはいきませんので、手術前に角膜の屈折力と眼の長さ(眼軸長) を超音波で計測して眼内レンズの度数を計算してあらかじめ決めます。

眼内レンズには水晶体のように厚みを変えて、見るものにピントを合わせる機能がありません。どの位の距離に焦点を合わせた眼内レンズを入れるかによって、術後の見え方が変わります。手術前の視力や左右のバランス、仕事、本人の希望などによって、近距離、中距離、遠距離のいづれかのレンズの度を選びます。例えば、読書をすることが多ければ近距離、テレビを見たり、パソコンでの仕事が多ければ中距離、車の運転をすることが多ければ遠距離を選びます。最近は老眼用に近くも遠くも見える多焦点レンズや、乱視矯正ができるものなどがあります。術後のQOL(生活の質)やライフスタイルを考えて、自分にあったものを選びます。

眼内レンズは、シリコンやアクリルなど柔らかい素材が使われています。(着色レンズは手術後に青みがかって見えると感じるのを補正したもの)



治療

白内障は、ゆっくり進行するので、普段の生活に支障がなければすぐに手術をする必要はありません。ごく初期であれば点眼薬で進行を遅らせられる場合があります。

手術

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症状が進んで、日常生活に不便や煩わしさを感じるようになってから手術を検討します。白内障の手術は、超音波水晶体乳化吸引術眼内レンズ挿入術をあわせておこなうのが一般的です。手術は局所麻酔で顕微鏡を使っておこなわれます。水晶体は水晶体嚢という外側の袋の中心にある水晶核と周囲を覆う皮質でできています。水晶体嚢の前面を切開し、白く濁った核や皮質部分を乳化させて超音波で砕いて吸引し、その代わりに眼内レンズを水晶体嚢の中へ挿入します。

白内障手術は、簡単で日帰りもOK(患者さんの全身状態、合併症、術後の通院、夜間の緊急時の対応などの条件が揃えば)というイメージがあります。確かに散瞳が良く、軟らかい核の白内障では安全で10~20分程度で簡単に終わりますが、一般的には、難症例白内障手術は(硬い核、散瞳不良、チン小帯脆弱、角膜内皮障害など)1時間ほどかかることもあり、術後の管理も含めて3〜4日の入院を必要です。

手術後、眼の状態が安定するまでには数週間はかかります。術後の炎症を抑え、感染を防ぐことが大切なので、手は清潔に保ちましょう。直後は眼がゴロゴロする、涙が出るなどの症状がありますが、数日から1〜2週間で徐々に治ってきます。また、1週間後の診察くらいまでは、眼を保護するための眼帯や保護眼鏡を使います。しばらくは目をこすったり押さえたりしない、前にかがんだり、重いものを持ち上げることは避けます。術後に色が青みがかって見えるなど、見え方に違和感があり、まぶしさを感じたりすることがありますが次第に慣れます。まぶしさが気になる場合には、白内障手術では合併症として角膜浮腫、虹彩炎、眼圧の上昇などが見られる場合もあります。

後発白内障
白内障の手術後に眼内レンズを入れた水晶体嚢の後ろ側(後嚢)が濁ってくることがあります。これを後発白内障といいます。手術後数ヶ月から1、2年経ってから発症することが多いようです。後発白内障が発症した場合には、後嚢にレーザーを当てて切開し、光の通り道をつくる治療がおこなわれます。外来でできる治療です。

加齢黄斑変性

加齢により網膜の中心部である黄斑に障害が生じ、見ようとするところが見えにくくなる病気です。日本では比較的少ないと考えられていましたが、人口の高齢化と生活の欧米化により近年著しく増加しています。久山町研究(1998年)では、50歳以上の有病率は、0.87%でしたが、2007年の調査では加齢黄斑変性は1.3%と9年間で約2倍に急増していました。(失明原因の第4位)加齢に伴い増加し、70歳以上にさらに多くみられます。また滲出型は男性に多く、男性は女性の約3倍の頻度でみられます。約20%は両眼性に発症し、高齢になるほど両眼性の人が多くなります。また、この病気は遺伝的背景が影響していますが、高齢者に多いため、喫煙など環境因子もかなり影響していると考えられています。

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網膜はカメラのフィルムに相当し、外からの光が瞳(瞳孔)レンズ(水晶体)や目の中央部(硝子体)を通り、網膜に当たり光を感じます。網膜で光が電気信号に変換され脳に伝えられ「見える」のですが、黄斑とは網膜の中心にある直径1.5mm程度で、物を見るために必要な感度のよい視細胞がたくさん集まっている部分で、キサントフィルという色素が豊富にあるために黄色をしています。特に黄斑の中心は中心窩と呼ばれ、見ているところ(固視点)からの光が当たる部位で、見る機能が最も高く、視力が出る部分で、色の判別も行ったりします。人が目で物を見ているとき、写真のように、すべてのところにピントが合っているわけではありません。網膜は中心(黄斑)では大変良い視力が得られますが(ピントが合っている)それ以外のところでは正常の目では十分良い視力は得られません。(0.1程度)実際にすぐ近くに見える文字を注視してみてください。その文字ははっきり見えていますが、すぐ横にある文字は読めないでしょ。そういうことです。したがって、黄斑は大変小さな部分ですが、黄斑が障害されるとそれ以外の網膜には全く異常がなくても視力が著しく低下し、字を読むことができなくなったりします。網膜の下には網膜色素上皮という一層の細胞があり、その下に脈絡膜という血管に富んだ組織があります。網膜が正しく働くためには視細胞だけでなく網膜色素上皮や脈絡膜も重要です。

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加齢黄斑変性には萎縮型と滲出型(1:3)の2つの種類があります。萎縮型は徐々に黄斑の網膜の細胞が減っていくタイプで、黄斑に地図状の萎縮病巣(網膜が薄くなった状態)ができます。このタイプでは、長い間かかってゆっくり視力が低下していきます。滲出型は異常な血管(脈絡膜新生血管)が脈絡膜から網膜色素上皮の下あるいは網膜と網膜色素上皮の間に侵入し、血液の成分を漏出して網膜が腫れたり、血管が破れたりして、網膜が障害されます。網膜下に大きな出血が起こると突然、著しい視力低下が起こることがあります。萎縮型と滲出型を比べると、滲出型のほうが進行が早く、視力悪化も重症なことが多いようです。

 
 



症状

自分でチェックしてみましょう。(アムスラー検査)

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30cmほど離れて、格子を見ます。
まず、右目を右手で覆って左目の見え方をチェックします。
次に、左目を左手で覆って右目の見え方をチェックすます。
(片眼ずつ検査する必要があります)

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見え方に異変がないかどうかを定期的にチェックすることで早期発見につながります。(老眼鏡を使用している人はかけた状態で行ってください)

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網膜の腫れや網膜の下に液体が溜まると網膜がゆがみ、ゆがんだ網膜でものを見ると中心がゆがんで見えます。(変視症)さらに黄斑部の網膜が障害されると、真ん中が見えなくなったり(中心暗点)視野欠損や視力が低下して、字を読んだりすることができなくなります。症状が進んでくると色が分からなくなることもあります。


診断

眼底検査をすると、黄斑部に網膜下出血がみられ、漿液性網膜剥離や網膜色素上皮剥離と呼ばれるむくみがみられます。螢光眼底造影検査(静脈から造影剤を注入して行う検査)を行うと、脈絡膜新生血管が広がっているさまがよく捉えられます。またOCT検査(光干渉断層計)という網膜の断面をみる検査では、網膜やその下の新生血管などの状態を立体的に把握することができます。(短時間で検査ができ、造影剤を使わないので患者さんに負担が少なく、頻回に検査を行うこともできます)
治療

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残念ながら萎縮型の加齢黄斑変性には現在のところ治療方法はありません。
滲出型の加齢黄斑変性にはいくつかの治療法があります。治療の目的は脈絡膜新生血管の拡大を抑え退縮させ、それ以上病気を進行させないように視力を維持あるいは改善(正常になることはほとんどありません)することです。脈絡膜新生血管の発生には血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)が関係していると考えられており、VEGFを阻害するお薬を目の中(硝子体腔)に注射することにより脈絡膜新生血管を退縮させる治療法があります。この治療では、脳卒中の既往のある人では再発作がおこる可能性があるため、危険性と有用性を考えて使用する必要があります。 また、光感受性物質を点滴した後に非常に弱い出力の専用のレーザーを病変に照射し、新生血管を血栓で詰まらせる方法もあります。(光線力学的療法 photodynamic therapy:PDT)日本人に多いポリープを示すタイプには光線力学療法は有用で、抗VEGF薬と光線力学療法を併用する場合もあります。新生血管が黄斑の真ん中(中心窩)から離れていれば、新生血管に対するレーザー光凝固で新生血管を焼きつぶす治療法も行われます。


予防(日常生活で気をつけたいこと)
◎喫煙している人はしていない人に比べて加齢黄斑変性になる危険性が高い(3倍)と報告されています。
◎一方の目に加齢黄斑変性が発症した人には、緑黄色野菜(にんじん、ブロッコリー、モロヘイヤなど)やルテイン(キャベツ、ほうれん草、ケールなど)やビタミンC、ビタミンE、βカロチン、亜鉛などを含んだサプリメントを摂取するのが有効だという報告があります。
◎太陽光線を避けるため、サングラス、帽子などが勧められます。


近未来の新しい治療法として、再生医療や遺伝子治療などの研究も進んでおり、わが国でも臨床応用の準備が着々と進められています。STAP細胞の件では、レポート提出のハードルが挙がってしまった、なんちゃって理系学生たちからは「小保方め!」という声が漏れ聞こえてきます。網膜色素変性にもiPS細胞を用いた治療の可能性がでてきましたが、高橋先生も臨床研究をやめるとかごねだして、この波紋はいつまで続くのでしょうか?

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加齢黄斑変性が、iPS細胞の最初の臨床試験に採用されました。網膜が選ばれた理由としては、網膜色素上皮や視細胞はほとんど癌にならないということがあります。癌化しにくい細胞であることが解っているので、iPS細胞が異常に分化して増殖しても、癌になる心配がないということが、一番です。それに心臓など他の臓器と違い、命にあまり関係しないし、眼底検査で簡単に目でフォローできることも大きい利点です。さらに、網膜の病気は失明原因の80%を占めています。(2位は糖尿病網膜症、3位網膜色素変性症、4位近視性黄斑変性、5位加齢黄斑変性)目が見えなくなるととたんに困りますよね。恩恵を受ける患者さんが非常に多いのも臨床試験を行う意義が高いでしょう。また、網膜色素上皮の培養移植は30年ほど前から行われ、長い歴史があり、基礎実験の蓄積があるというのも強みであり、黄斑部は1.5ミリ~2ミリぐらいの大きさしかないので、たくさんの細胞を培養する必要がなく、網膜色素上皮細胞は一層の薄いシートは作りやすいという手技的な利点もあります。これらの理由で、網膜の臨床試験が、第一番目に行われるようになったようです。

網膜色素変性症

網膜色素変性症は目の中にあってカメラでいえばフィルムに相当する網膜という膜に異常をきたす遺伝性の病気です。視細胞のうち初期は主に桿体細胞が障害されることが多く、このために暗いところで物が見えにくくなったり、視野が狭くなったりするような症状を起こしてきます。網膜色素変性症の頻度は大体5,000人〜10000人に1人の患者がいると推定されています。日本において遺伝傾向が認められる患者さんのうち最も多いのは常染色体劣性遺伝が35%、次に多いのが常染色体優性遺伝で10%、最も少ないのがX連鎖性遺伝(X染色体劣性遺伝)で5%と報告されていますが、多くは遺伝形式が明らかではない弧発例です。

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視細胞

画像の説明ものを見るためには視力、視野、色覚の3つの機能が必要です。このうち、視力は見ている対象物を見分ける力、視野は一点を見つめたときに同時に見える範囲、色覚は色の判別です。網膜の内側にある神経網膜には、目に入ってきた光を感じ取り、光の刺激を神経の刺激すなわち電気信号に変える働きをする視細胞があります。視細胞には、桿体(かんたい)細胞と錐体細胞の2種類の細胞があり、杆体細胞は網膜全体に広がっていて、光の感度がよく暗い所でも弱い光を感知することができ、広範囲からわずかな光でも感じ取って、暗いところでものを見ることや視野の広さなどに関係した働きをしています。物の形はわかりますが、色の判別はできません。つまり、人間は暗いところでは色を認識することができないのです。錐体細胞は網膜の黄斑部に集中していて、主にものを見分ける高い視力と色覚の機能を担っています。人は青錐体・緑錐体・赤錐体の3つの錐体を持っています。これら錐体の感度の割合を利用して色を区別しています。

 

症状

眼の中で光を感じる組織である網膜に異常が起こり、暗いところでものが見えにくくなる夜盲(鳥目)や視野が次第に狭くなる視野狭窄、視力の低下が見られる遺伝性の病気です。

(1)夜盲
網膜色素変性では通常、網膜にある視細胞のうちの杆体細胞から障害されるために、徐々に光を感じ取ることができなくなり、暗いところでは、ものが見えにくくなりますが、生活の環境によっては気がつきにくいことも多いようです。
さらに病気が進行すると錐体細胞も障害され、視力低下を自覚するようになります。

(2)視野狭窄
さらに、進行すると周囲からぼやけ始め、周辺の視野が狭くなっていきます。徐々に見える範囲が中心に向かって狭くなると、中心部しか見えないので、足下が見えなくてつまずいたり、物にぶつかりやすくなったり、落とし物を捜すのに苦労する、人や車などが横から近寄ってくるのが分からないなど、日常生活に支障が出るだけでなく、危険なことも増えてきます。

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(3)視力低下
さらに進行して障害が黄斑部まで進むと、視力も低下していきます。視力の低下や色覚異常は、あとから出てくるのが典型的です。

この病気は、原則的には進行性の病気ですが、発症の時期や症状、現れ方、進行速度などは個人差が大きく様々で、幼少期に発症して40代頃に視力を失ってしまう重症な例もあれば、発症の年齢が高い場合は、その進行はとても緩やかで、数年あるいは数十年をかけて進行し、高齢になってもある程度の視力を維持できている場合もあります。長い経過の後に字が読みにくい状態(矯正視力0.1以下)になる方は多いですが、暗黒になる方はむしろあまり多くありません。



検査

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目薬で瞳を開いて(散瞳)眼底の状態を調べます。病気の初期には、網膜にばらばらと小さな黒っぽい色素沈着部分、いわゆる「ごま塩状」の眼底変化が現れ、網膜血管が細くなる所見がみられます。中期になると、黒っぽい色素沈着が進んで骨小体様色素沈着という特徴的な色素沈着が眼底の周辺部に現れます。後期になると、網膜の変性は眼底の中心に広がり、黄斑部だけに正常な眼底の色調が残ります。さらに進行すると黄斑部にも変性が及びます

視野検査は、見える範囲を調べるもので、病気の進行状況を調べる重要な検査です。初期にはリング状に視野が欠ける輪状暗点や部分的な視野欠損が生じます。進行すると中心に向かって視野が狭くなる(求心性視野狭窄)など、この病気に特徴的な視野の異常を調べます。

網膜に光が当たると電気的な信号が生じて、視神経を通して脳に伝わります。この電気信号を角膜上に載せた電極で調べる検査です。(網膜電図:electroretinogram : ERG)網膜色素変性の初期では反応が小さくなり、中期以降は反応がみられなくなります。



治療

一度障害を受けた網膜はもとに戻りませんので、現在のところ根本的な治療法はありません。暗順応改善薬(ヘレニエン)ビタミンA、ビタミンE、網膜循環改善薬、血管拡張薬などの内服を行うことがありますが効果は証明されていません。

日常生活での注意としては「残っている視機能を十分に使って生活の質を上げる」対症的な方法(ロービジョンケア)として、視細胞を保護し、強い光を避けてまぶしさを軽減させるための遮光眼鏡の着用(通常のサングラスとは異なるレンズ)文字などを見やすくするためのルーペや拡大読書器など症状に合わせた補助具を利用することが勧められます。

網膜色素変性症は、厚生労働省の特定疾患研究の対象疾患に指定されているので、矯正視力が0.6以下で視野の障害がある場合、ご本人の申請すれば、医療費の助成を受けることができます。また、視野や視力の障害が進んだ場合には、障害の度合いによって身体障害者の認定を受け公的なサービスや援助を受けることもできます。

網膜色素変性は、個人差はありますが、一般に病気の進行は緩やかで急に見えなくなることは少ない病気です。急に見えにくくなった場合、眼の中で別の病気(早期から白内障や黄斑部の病気が合併しやすい)が起こっている可能性があります。

白杖(はくじょう)を持つことにより、自分が視覚障害者であることを周囲に知らせることができます。健常者が考えているほどから見ると大変そうに見えますが、結構あっけらかんとして

 

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屈折異常、調節異常

眼の仕組みはよくカメラにたとえられます。眼でカメラのレンズに相当するのは水晶体、フィルムに相当するのは網膜です。人間の眼は、オートフォーカス機能が備わっていて、意識しなくても瞬時に、網膜にピントが合うように調整されます。水晶体は、周囲にある毛様体という筋肉の働きで、その厚みを変えて、屈折率を調節できます。近くを見るときは毛様体が緊張し、水晶体が厚くなって屈折率は強くなり、反対に遠くのものを見るとき(またはリラックスしているとき)は、毛様体の緊張がなくなり水晶体は薄くなって屈折率は弱くなり、網膜に焦点が合うような仕組みになっています。ところが、眼球の長さ(角膜から網膜までの距離=眼軸長)が、通常よりも長いためや短くなったり、水晶体の厚さの調節、屈折率の調節がうまくいかなくなることで、網膜にピントが合いづらくなることで、視力が低下(ピンぼけの映像)が起こります。

近視

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近視は網膜よりも手前に光の焦点が結ばれてしまう屈折異常です。近くのものははっきり見えても、少し距離が離れているものは、輪郭がぼーっとぼやけて見えます。原因として、角膜や水晶体による光の屈折率が強すぎることや、眼軸長が長すぎることがあげられます。凹レンズの眼鏡やコンタクトレンズで屈折率を弱めれば、網膜に焦点を結びはっきり見えるようになります。
仮性近視とは、読書やテレビゲーム、OA機器操作などで近くのものを長時間見ていると、その間、毛様体はずっと緊張しています。そのため作業を終えたあともその緊張がとれずに強い屈折率が残ってしまい、近視と同じような状態が続いてしまいます。これが仮性近視(偽近視)で、医学的には屈折異常と区別し、水晶体の調節異常とされます。仮性近視の場合、毛様体の緊張がなくなれば元の視力が戻るので、毛様体の緊張をとる点眼薬や遠くを見ることを心掛けるのも効果があります。
強度の近視の人は、近視が強いほど眼軸長は長く、網膜が引っ張られて薄く剥がれやすくなっているため、網膜剥離が起きやすいことが知られています。

遠視

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遠視は近視とは逆に、角膜や水晶体による光の屈折率が弱すぎたり眼軸長が短いために、焦点が網膜よりも後ろにいってしまう屈折異常です。このため、つねに毛様体を緊張させて、水晶体を厚くした状態を維持しなければなりません。眼精疲労を招いたり、調節しきれない場合には物がぼやけて見えてしまいます。とくに近くを見るときは、より強い調節が必要になります。近視の矯正とは反対の、凸レンズの眼鏡などで屈折率を強め、矯正します。
幼児期は眼球も小さく眼軸長が短いため、遠視であることがふつうですが、その程度が強い場合に放置していると、弱視の原因になります。また成人では、緑内障(閉塞隅角緑内障)になりやすい傾向があります。

乱視

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角膜はその頂点を中心に、全方向均一なカーブを描いています。均一でなく、方向によってゆるいカーブときついカーブがあると、光の焦点は二つに分かれてしまいます。これが乱視です。症状は、物が二重に見える、視力低下などです。乱視に近視や遠視が重なっている場合もあります。
乱視には正乱視と不正乱視があります。正乱視は、屈折した光が一点では焦点を結ばないものの、二か所で焦点を結ぶ状態です。単に乱視という場合はこの正乱視のことをいいます。これに対し不正乱視は、角膜のカーブが不規則に変化しているため、どこにも焦点が結ばれない状態です。正乱視は、一方向の屈折率を強調して変える円柱レンズを用いた眼鏡で矯正できます。

老眼(老視)
水晶体は、加齢とともに徐々に弾力性が低下し硬くなります。それに伴い調節できるピントの幅が狭くなり、光をより強く屈折させなければならない近くを見るときに、ピントが合いにくくなります。老眼は、近視や遠視、乱視などの屈折異常に対して調節異常と呼ばれます。水晶体の調節力は、実際には幼児期から少しずつ衰え始めているのですが、それが自覚症状となって現れるのは、40歳過ぎごろからです。調節力が低下すると、近くを見るときに、遠視と同じような状態になります。遠視の場合と同じ凸レンズによって、視力を矯正できます。



網膜剥離
「カーテンが垂れ下がった様に、周りから視野が徐々に欠けてくる」症状はが疑われ緊急で手術が必要となる病気です。「真ん中は見えるがその上下の視野に帯状に欠けて見えないところがある」、「鼻側の視野が欠けてみえる」などの症状は緑内障ですが初期では症状を自覚することは稀です。

 




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結膜下出血 

麦粒腫 

翼状片 

急性閉塞緑内障