肝臓

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肝臓(かんぞう)は、腹部の右上に位置して、肋骨の下に収まっている最大の臓器(1000〜1400g)です。

 
 

 

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生レバー

平成24年7月から食品衛生法に基づいて、牛のレバーを生食用として販売・提供することを禁止されました。これは、牛のレバーを安全に生で食べるための方法がないため、もし生で食べると、腸管出血性大腸菌による重い食中毒の発生が避けられないからです。

 
 
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あんきも

鮟鱇(アンコウ)の肝臓(きも)です。大きな頭で、大きな口、鋭い歯が並んでいて、見た目はちょっとグロテスクで、おいしいとは思えない深海魚です。発達している。茨城県の久慈浜漁港が水揚げが多い。肝が肥大化する11月から2月が一番美味しい時期とされる。

 
 
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フォアグラ

世界三大珍味(キャビア、トリフ)として有名なフランス料理の長い伝統から生まれた食材です。ガチョウや鴨などに必要以上にエサを与えることにより、脂肪肝を人工的に作り出したものです。

 

 

門脈とは?

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肝臓には、ちょっと変わった血管があります。通常、ヒトの血管系では、心臓→動脈→毛細血管網→静脈→心臓と血液が流れます。つまり、酸素や栄養は、心臓から動脈血として、全身のいろいろな臓器(肝臓、胃、腸、腎臓、脳、筋肉など)に運ばれて行き、静脈血として、心臓にもどってきます。

 
 

 

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毛細血管は、平滑筋と結合織がなく、内皮細胞と基底膜だけで出来ており、組織と血液の間の物質交換に有利な構造であり、交換血管と呼ばれます。

 
 



肝臓も体循環の血液の流れとして、肝動脈という血管から酸素や栄養を受けていますが、もうひとつ門脈(解剖学の概念で、二つの毛細血管網にはさまれた血管を指します)という消化管と肝臓をむすんでいる血管があります。胃や腸などの消化器で吸収された栄養分は、直接静脈血として心臓にもどずに、いったん肝臓へ運ばれて、加工されたり、蓄えられたりしています。

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肝臓ってなにをしているの?

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心臓はポンプ、胃腸は栄養の消化吸収、腎臓はおしっこを作っている、脳は考えている、筋肉は、・・・だいたいイメージがわかりますよね。肝臓は何をしているのでしょうか?肝臓は、500種類以上の仕事をしています。あまりにもたくさんの仕事をしているので、わけがわからないという感じでしょうか。簡単に?言えば、肝臓は体の化学工場で、糖やタンパク質、脂質などの代謝、つまり栄養素の合成や貯蔵、分解、エネルギー産生、また、薬、アンモニア、アルコールなどの解毒作用、胆汁の産生や分泌など重要な仕事をしています。

 
 

 

肝臓は2千5000億個の肝細胞でできており、肝小葉と呼ばれる六角柱の塊の集合体です。肝臓は、7/6と切除しても肝機能は正常に働くぐらい、大きな予備能と再生能を有し、門脈という血管があって酸素不足になることも少なく、かなり悪くなっても滅多に症状が現れない「沈黙の臓器」と言われています。
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肝炎049-1

 


肝臓の病気
 
肝臓に病気を起こす原因には、肝炎ウイルス、アルコール、過食、薬などがある。 ちなみにA型とE型は急性肝炎で治りますが、B,C,D型は体の中にウイルスが残り、慢性肝炎になることがあります。
 
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肝機能異常(GOT GPT γ-GTPが高い)を指摘されたら

皆さん、健康診断で肝機能が異常で要精査と記載されていることはないでしょうか。肝機能異常は、健康診断で指摘されることが比較的多い異常です。肝機能障害と言われたら、プライマリケア医として実際にどこまで検査をしたらいいでしょうか。アルコールの摂取量(1日にどの程度飲酒しているのか)薬剤(普段常用している薬剤(サプリメントを含む)輸血をしたことがあるか?刺青は?大病院では、全ての検査を絨毯爆撃的に行っていることもしばしばですが、かかりつけ医のレベルでそれを行うとほとんど再審査をくらうか覚悟が必要かもしれません。

まずは、重要な疾患と頻度の高い疾患から順番に網をかけていきましょう。

B型肝炎、C型肝炎

まずは、B型肝炎、C型肝炎のスクリーニングから始めます。たつの市では、いままで1回も検査をしたことがなければ、無料でできます。

HBs抗原とHCV抗体をオーダーします。

HBs抗原 陰性・・・B型肝炎に基本的には感染がないとして問題ありませんが、過去の感染など完全に否定はできません。
HCV抗体陰性・・・C型肝炎の感染はほぼ否定的といえます。
HBs抗原 陽性・・・B型肝炎に感染しています。
HCV抗体陽性・・・C型肝炎ウイルスに感染したことを意味します。
もしHCV抗体陽性であれば、HCV-RNA定量検査を追加して、HCV-RNA定量が陽性なら現在も感染が持続していて、HCV-RNA定量が陰性なら過去にC型肝炎ウイルスに感染しましたが今は治癒したことを意味します。
HBs抗原が陽性の場合にHBe抗原、HBe抗体追加します。
HBe抗原 陽性・・・B型肝炎ウイルス量が多く、人への感染の可能性が高いです。
HBe抗原 陰性・・・B型肝炎ウイルス量は少なく、人への感染の可能性は低いです。
 
HBs抗体が陽性の場合は、過去にB型肝炎に感染して治癒した人とB型肝炎ワクチンを接種した人の可能性があります。
HBs抗体が陰性の場合は、過去にB型肝炎に感染したことがない人と過去にB型肝炎に感染して治癒してHBs抗体が陽性になって時間が経過してHBs抗体が測定できないくらい低くなった人の可能性があります。

HBc抗体陽性の場合は、B型肝炎に現在または過去に感染したことを意味します。

HBc抗体陰性の場合は、B型肝炎に感染したことがない人のことを意味します。(B型肝炎は一度感染すると体内から除去はできません。過去のB型肝炎の感染を診断するのに最も感度が高い)

アルコール性肝炎

飲酒歴の聴取は極めて重要です。本人の申告では飲酒量を少なく申告するする傾向があり、客観的な評価のためには、第三者(家族、友人、職場の同僚など)からの聴取も必要となります。アルコールには身体的、精神的依存性があり、アルコール関連問題のスクリーニングテストとしてAUDIT-Cが用いられます。過去1年間の飲酒状況に関して3項目の質問に答える形式となっており、男性5点以上、女性4点以上の場合はアルコール依存症の疑いとなります。

アルコール性肝障害の診断基準は、これまで、いくつかの基準が用いられてきましたが、現在は2011年アルコール医学生物学研究会から提示された「JASBRAアルコール性肝障害診断基準(2011年版)」が用いられています。

常習飲酒家(1日3合、5年以上)
大量飲酒家(1日5合、10年以上)
 

アルコール性肝障害では、ミトコンドリア分画AST上昇が特徴的です。またIgA上昇、大球性貧血などを認めることがあります。他の要因による肝障害よりも、PIVKA-IIの陽性率が高いとされます。アルコール性肝炎では、AST/ALT比の上昇、AST・ALT・γ−GTPの著明な上昇、コリンエステラーゼ低下、線維化マーカーの上昇、高脂血症、白血球増加(多核好中球増加)、ビリルビン上昇、低アルブミン血症、PT値低下、高乳酸血症などを認めます。アルコール性肝炎の組織像では、肝細胞の膨化、風船化(ballooning)アルコール硝子体(Mallory体)を認めます。肝硬変では、汎血球減少症、PT値低下、低アルブミン血症、ビリルビン上昇、高アンモニア血症などを認めます。治療は、禁酒、 VB1 シアナマイド

 

非アルコール性脂肪性肝炎

脂肪肝と指摘されたことがある方は沢山いるのではないかと思います。実は、脂肪肝から、肝硬変になる方がいることをご存知でしょうか。非アルコール性脂肪肝、つまり「脂肪肝」の状態から、何らかの原因により肝炎を生じ、肝硬変に至ります。「非アルコール性脂肪肝炎(NASH)」と呼ばれていますが原因はわかっていません。

非アルコール性脂肪性肝炎の定義は、
1. アルコールを(アルコール換算で男性:30g、女性:20g)以上飲んでいない
2. B型・C型肝炎ではない
3. 脂肪肝になる他の原因がないにもかかわらず、肝硬変になる状態を意味します。

画像検査で高度の脂肪肝と肝硬変が疑われ、最終的には肝生検を行い、非アルコール性脂肪性肝炎の診断となりました。非アルコール性脂肪性肝炎と診断するには、飲酒量が大切です。アルコール換算で男性で30g(日本酒なら1合半)女性で20g(ビール中瓶1本500ml程度)以上飲んでいる場合は、「非」アルコール性脂肪肝ではなく、アルコール性脂肪肝となります。非アルコール性脂肪肝、つまり「脂肪肝」は、日本では1000万人以上いると言われており、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)に進行する方は、100万人以上いるのではないかと考えられています。どうして脂肪肝から非アルコール性脂肪性肝炎に進展するのかはわかっていませんが、メタボリックシンドロームの原因と同じ、不規則な生活習慣や運動不足などが原因で生じると考えられています。

薬剤性肝炎

薬剤性肝障害は、中毒性のものと特異体質性のものがあります。前者は薬物自体、またはその代謝産物が肝毒性を持ち、用量が増えるほど障害が出やすくなります。中毒性のものでも過量投与だけでなく蓄積で起こる場合もあり発症に時間がかかる場合もあります。抗がん剤の一部、アセトアミノフェンなどが代表的な薬剤です。特異体質性のものは「アレルギー性特異体質」によるものと「代謝性特異体質」によるものに分類され、薬物性肝障害の多くはこれにあたります。アレルギー体質によるものは予測不可能ですが、1回目の投与では発症までに期間を要する場合があるので必ずしも直近に開始となった薬剤が被疑薬ということにならないので注意が必要です。代謝性の特異体質によるものは、薬物を代謝する酵素の量や活性度が低い場合に起こります。常用量でも発症するため、診断しにくく、特定の個人のみで生じる特異な代謝物を同定しない限りあくまで推察に基づいた診断しかできません。

薬物性肝障害(drug-induced liver injury:DILI)の診断は、薬物投与と肝障害の推移との関連と除外診断が重要ですが、診断基準としては、日本消化器関連学会週間(JDDW-Japan)2004 のワークショップで提案されたものが現在広く用いられています。これは、まず初診時のALT値とALP値(ALT値が正常上限の 2倍、ALP値が正常上限を超えたものを肝障害と定義)からALT/ASTが上昇する場合は肝細胞障害型で、ALP/γGTPが上昇する場合は胆汁うっ滞型とされます。これらの混合型の3つの肝障害のタイプ分類を行います。

 

 

 

 

次に、一番疑わしい薬に関して、1.発病までの期間、2.薬物中止後の経過、3.危険因子、4. 薬物以外の原因の有無、5.その薬物による肝障害の報告、6.好酸球増多、7.DLST(drug-in- duced lymphocyte stimulation test)8.偶然の再投与が行われたときの反応の8項目でスコアリングを行い、総スコアが5点以上で可能性が高い、3,4 点で可能性あり、2 点以下で可能性が低いと判定を行うものです。(併用薬の中でどれが疑 わしいかを 1,2,5,7 の項目から推定する)多剤を服用されている場合も多く、どの薬剤が疑わしいかを判定するのに役立つスコアリングと考えられます。服用期間が長く、除外した薬剤でも実は被疑薬である場合もあります。

薬剤性肝障害

症例1)
80才代男性。腰胸椎圧迫骨折にてトラマール25mgを1日4回服用。入院104日前、腰胸椎圧迫骨折にてトラマールカプセル・ノバミン錠開始。ADL低下・食欲不振・背部痛・肝機能異常にて当院入院。肝機能異常あり、定期内服以外で直近に開始された、トラマールカプセル・ノバミン・カロナール・クエチアピン中止。
【確定試験】トラマール LST:+ 202%(4型アレルギーの場合はLSTが有効とされている。)
主治医の意見 トラマールのみDLST+だが、DDW2004にてトラマール9点・ノバミン7点・クエチアピン8点だった。この場合は胆汁うっ滞型肝障害と判定。主治医がスコアリングを行っており薬剤性の肝障害の可能性が高いと判定されました。

 

症例2)
30才代女性。体重27kg 肺炎にてバクタ配合顆粒0.75g 1日2回服用。バクトラミン投与開始時の肝機能値AST17、ALT13、LDH169
投与終了直後(1週間後)肝機能値が上昇 AST584、ALT257、LDH415、ALP1223 投与終了7D後の肝機能値AST31、ALT55、LDH148、ALP933、LAP120 投与終了21D後の肝機能値AST19、ALT14、LDH142、ALP483、LAP69 と、時間の経過とともに徐々に平常値に戻っている。この症例は、混合型と判定されました。不明の項目は入力せずスコアを出すと5点となり、薬剤性である可能性が高いと判定されました。

薬物性肝障害の診断には、薬物投与と肝障害の出現と消退の時間的関係、他の原因の除外診断の2つがポイントとなります。また、民間薬や健康食品などで肝障害が起こる場合もあり、患者が意識していない場合もあるのでこれらについても忘れずに聴取することが重要です。典型例は、急性肝障害の症状(全身倦怠感や食欲不振など)もしくは肝内胆汁うっ滞(黄疸やかゆみ)を呈しますが、症状がなく血液生化学検査値の異常により発見されることも多い。アレルギー性の機序による肝障害が多いことから発熱、皮疹、皮膚瘙痒、好酸球増加などのアレルギー所見が得られれば診断の確実性が増加します。一方、肝細胞障害型では劇症化を早く予知するために、プロトロンビン時間の経時的変化と意識レベルとに注意します。薬剤リンパ球刺激試験(drug-induced lympho- cyte stimulation test:DLST)は保険適応でなく、疑陽性や偽陰性が起こり得るという欠点も指摘されているが、可能であれば被疑薬について行った方がよい。

除外診断としては,急性ウイルス性肝炎、ア ルコール性肝障害、過栄養性脂肪肝、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、胆石症、閉塞性黄疸、ショック肝などが挙げられ、これらの疾患を念頭に置いて詳細な病歴聴取と検査とを行う。具体的には、海外渡航歴、生ものの摂取、性交渉(以上、急性ウイルス性肝炎)飲酒歴(アルコール性肝障害)体重の急激な変化(脂肪肝や悪性腫瘍による閉塞性黄疸)右季肋部痛(胆石症)黄疸が著明な場合の尿と便の色(閉塞性黄疸、急性肝炎他)を聴取し、IgM HA (immunoglobulin M hepatitis A)抗体,HBs抗原、IgM HBc抗体)、HCV抗体(HCV-RNA)IgM CMV抗体、IgM EB VCA抗体,IgG、 IgM,抗核抗体、抗ミトコンドリア抗体の測定 と腹部超音波検査を行う。B型肝炎とC型肝炎については、できるだけIgM HBc抗体とHCV-RNAを測定するのが好ましい。さらに最近、IgA HEV抗体測定が保険適応となったので、この測定も行ってほしい。なお、肝細胞障害型では劇症化することもあるので、重症例では他の急性肝障害と同様、プロトロンビン時間の経時的変化と意識レベルに注意する.また、重症例ではできるだけ速やかに専門医に相談することが必要である。

薬物性肝障害の最近の動向についての報告です。1997〜2006年の10年間の1676例(29施設)の薬物性肝障害症例の報告では、男性が721例、女性が955例で、平均年齢は55歳。服薬開始から肝障害発現までの期間は、不明を除いた症例の期間を累積すると7日以内が26%、14日以内が40%、30日以内が62%、90日以内が84%であり、90日を超える症例が16%もありました。肝障害のタイプ別では肝細胞障害型が59%、混合型が20%、胆汁うっ滞型が20%でした。薬剤リンパ球刺激試験(DLST)は 61%の症例で施行され、陽性率は33% であった。DDW-Japan 2004 ワークショップの診断基準のスコアリングでは、可能性が高いが 87.3%、可能性あり以上が 97.8%と感度は良好でした。

1989〜1998年の症例集計との比較では、抗生物質14.3%、解熱・鎮痛・抗炎症薬が9.9%と頻度が高いのは10 年前と同様でしたが、健康食品による報告が10%と著しく増加していた。なお、健康食品と漢方薬は、服用開始から肝障害発現までの日数の平均が 各々260 日、124 日と他の薬物の平均 64日より長かったので、起因薬の検索に際して注意が必要です。高齢者では、起因薬で循環器用薬や造血と血液凝固関係製剤の割合が高く,これらの薬物を服用する頻度が増加しているためと推測されます。医薬品医療機器総合機構情報提供HPの医療用医薬品の有害事象の報告件数では、塩酸テルビナフィン、硫酸クロピドグレル、カルバマゼピン、塩酸チクロピジン、ゲフィチニブが起因薬のベスト5 でした。

薬剤性肝障害

薬剤性肝障害

全国の多施設での薬物性肝障害211症例の結果では、平均年齢 57歳(17〜84 歳)で、肝障害のタイプは肝細胞障害型が 137例(65%)、胆汁うっ滞型が 3 1 例(15%)混合型が43例(20%)で、DLSTは59%の症例で施行され,陽性率は 44%でした。発症までの期間は 30日までが 53%、60日までが 69%、90日までが 78%であり、22%の症例は 3カ月以上服用して発症していた。DDW-Japan 2004 ワークショップの診断基準のスコアは,可能性が高いが 93%,可能性 あり以上が 99%と感度は良好であった。被疑薬(重複あり))薬が 32 例(9%)、健康食品が 29 例(8%)、抗癌薬が 28 例(8%)、循環器科用薬が 25 例(7%)、漢方薬が 24 例(7%)と上位を占めていました。

薬物性肝障害を疑った場合、起因薬物を現在も服用中であれば直ちに中止するのが基本である。全身倦怠感、食欲不振などの症状が強い場合、黄疸例(例えば総ビリルビンで 4 mg/dl以上)ALT 高値(例えば400 IU/l以上)プロトロンビン時間延長例では、入院加療が望ましい。多くの場合は薬物中止により軽快し、薬物療法の必要ない場合が多く、治療が必要なのは黄疸遷延化例と劇症肝炎移行が疑われる例である。ALT値が高値の肝細胞障害型の肝障害では、エビデンスは得られていないが、グリチルリチンの静注やウルソデオキシコール酸を投与するが行われる場合も多い。胆汁うっ滞型で黄疸が長期に遷延する場合には、ウルソデオキシコール酸、副腎皮質ステロイド薬、フェノバルビタール(副作用の点からこの順に使用するのがよい)が有効なことがあります。瘙痒感が強い場合はコレスチミドの投与が有用である。黄疸が遷延した場合は、脂溶性ビタミンの補給も必要になる。プロトロンビン時間の著明な延長や意識障害など劇症化が認められた場合には、血液透析と持続的血液濾過透析を行い、無効の場合は肝移植が唯一の救命法になります。

 

原発性胆汁性胆管炎(PBC:Primary Biliary Cholangitis)

肝臓病の中には、体を守る免疫系が自分の肝臓を攻撃してしまうものがある。「自己免疫性肝疾患」と総称される3種類の病気があります。比較的珍しく、難病に指定されているが、いずれも近年患者が増えています。放置すると肝硬変になるが、早期から適切な治療を続ければ、完治は難しいものの普通の生活を送れる人が多い。食物の消化や吸収に関わる胆汁は、肝臓で1日あたり約1リットル生成されて胆管という管に排泄されます。胆汁は肝臓内の細い胆管を経て、空腹時に胆嚢で濃縮されたのち,食事(食物摂取)による胆嚢収縮によって太い胆管を経て十二指腸内に排泄されます。胆管が障害されると胆汁の流れが悪くなり、黄疸が起こることがあります。原発性胆汁性胆管炎(PBC)は、肝臓内の細い胆管が免疫系の攻撃で傷み、胆汁の流れが悪化する病気です。

 

原発性胆汁性胆管炎(Primary biliary cholangitis:PBC。旧称:原発性胆汁性肝硬変(primary biliary cirrhosis))は、原因不明な慢性進行性の胆汁うっ滞性肝疾患である。胆汁うっ滞に伴い肝実質細胞の破壊と線維化を生じ、最終的には肝硬変から肝不全を呈する。臨床的には胆汁うっ滞に伴うそう痒感、及び自己抗体の1つである抗ミトコンドリア抗体(Anti-mitochondrial antibodies:AMA)の陽性化を特徴とし、また、慢性甲状腺炎、シェーグレン症候群等の自己免疫性疾患や膠原病を合併しやすく、患者数は2万人、中年以後の女性に多い。臨床症状も全くみられない無症候性PBCの症例も多く、このような症例は長年無症状で経過し予後もよい。なお、本疾患概念が確立された当時は、大多数の症例が肝硬変まで進行した段階で発見されていたため「肝硬変」という語句が使用されましたが、診断・治療技術の進歩した現在では、ほとんどの患者が肝硬変の状態ではないことから、2016年に「原発性胆汁性胆管炎」への病名変更されました。

症状は、(1)胆汁うっ滞に基づく症状、(2)肝障害・肝硬変及び随伴する病態に伴う症状、(3)合併した他の自己免疫疾患に伴う症状の3つのカテゴリーに分けて考えることができる。病初期は長期間無症状であるが、中期・後期になると本疾患に特徴的である胆汁うっ滞に基づく皮膚そう痒感が出現してくる。無症候性PBCでは合併した自己免疫性疾患の病態・症状が表面に出ていることも多い。進行すれば、黄疸と共に、胃食道静脈瘤、腹水、肝癌等、肝硬変に伴う身体所見が現れる。

次のいずれか1つに該当するものをPBCと診断する。
①組織学的にCNSDCを認め、検査所見がPBCとして矛盾しないもの(ALP、γGTP)
②AMAが陽性で、組織学的にはCNSDCの所見を認めないが、PBCに矛盾しない(compatible)組織像を示すもの(胆管消失、肉芽腫など)
③組織学的検索の機会はないが、AMAが陽性で、しかも臨床像(自覚症状、血液・生化学検査所見、合併症を総合したもの)及び経過からPBCと考えられるもの

(1)自覚症状
皮膚掻痒感で初発することが多い。臨床上、症候性(symptomatic)PBCと無症候性(asymptomatic)PBCに分類され、皮膚掻痒感、黄疸、食道胃静脈瘤、腹水、肝性脳症など肝障害に基づく自他覚症状を有する場合は、症候性PBCと呼ぶ。

(2)血液・生化学検査所見
症候性、無症候性を問わず、赤沈の亢進、血清中の胆道系酵素(ALP、LAP、γGTPなど)活性、総コレステロール値、血清銅上昇、血清セルトプラスミン上昇、IgM値の上昇を認め、抗ミトコンドリア抗体(antimitochondrial antibody:AMA)が高頻度に陽性である。

(3)組織学的所見
肝組織では中等大小葉間胆管ないし隔壁胆管に慢性非化膿性破壊性胆管炎(chronic non-suppurative destructive cholangitis:CNSDC)あるいは胆管消失を認める。

(4)合併症
高脂血症が持続する場合に皮膚黄色腫を伴う。シェーグレン症候群、関節リウマチ、慢性甲状腺炎などの自己免疫性疾患を合併することがある。

確立した治療法はなく対症療法となる。ウルソデオキシコール酸(UDCA)は現在第1選択薬とされており、初期から投与される。90%の症例では胆道系酵素の低下がみられるが、進行した症例では効果が期待できない。高脂血症薬の1つであるベザフィブラートにも生化学的改善効果が認められており、我が国ではしばしばUDCAと併用されるが、最近この併用には長期予後の改善効果がないことが報告された。掻痒感についてはコレスチラミンを投与。PBC-AIHオーバーラップ症候群で肝炎の病態が強い場合には副腎皮質ホルモンが併用される。

無症候性PBCは無症候性PBCにとどまる限り予後は大変よいが、約10~40%(5年間で約25%)は症候性PBCへ移行する。症候性PBCでは、胆汁うっ滞に基づく症状、特にそう痒、高脂血症とビタミンDの吸収障害による骨粗鬆症に対する治療が重要である。肝硬変に進展した場合は、腹水、肝性脳症等の合併症に対する対応が必要となる。黄疸期になると進行性で予後不良である。5年生存率は、血清T.Bil値が2.0mg/dLでは60%、5.0mg/dLになると55%、8.0mg/dLを超えると35%となる。進行例では肝癌の併発にも留意する。病期が進むと、内科的治療に限界が生じ肝移植の適応となるで、血清総ビリルビン値5mg/dLをめどに、肝臓専門医、移植専門医に相談する。移植成績は、5年で約80%と優れている。脳死移植が少ない我が国では既に生体部分肝移植が定着しており、移植成績も欧米の脳死肝移植例と同様に良好である。死因は、症候性PBCでは肝不全と食道静脈瘤の破裂による消化管出血が大半を占めるが、無症候性PBCでは肝疾患以外の原因で死亡することが多い。

 

自己免疫性肝炎(AIH:Autoimmune Hepatitis)

自己免疫性肝炎は、持続性、反復性の血清トランスアミナーーゼの上昇を認め、発症年齢は60歳を中心とする一峰性を示し、多くは中年以降の発症であり(最近高齢化がみられる)女性に好発(男女比は約1:6)することが特徴で、患者数は全国に約30,000人ほどです。原則的には既知の肝炎ウイルス、アルコール、薬物による肝障害、及び他の自己免疫疾患に基づく肝障害は除外される。

原因は不明で、初発症状としては、倦怠感が60%と最も多く、黄疸(35%)食思不振(27%)またウイルス性慢性肝炎では通常ない関節痛、発熱を初発とするものがそれぞれ約15%にみられます。また、自己免疫疾患あるいは膠原病の合併はおよそ1/3の症例でみられ、慢性甲状腺炎(9%程度)シェーグレン症候群(7%程度)関節リウマチ(3%程度)と合併し、合併する他の自己免疫疾患による症状を初発症状とするものもある。

<診断基準>
1.他の原因による肝障害が否定される
2.抗核抗体陽性あるいは抗平滑筋抗体陽性
3.IgG高値(>基準上限値1.1倍)
4.組織学的にinterface hepatitis や形質細胞浸潤がみられる
5.副腎皮質ステロイドが著効する
 診断のカテゴリーには、典型例及び非典型例があり、
典型例は、上記項目で1を満たし、2~5のうち3項目以上を認める。非典型例は、上記項目で1を満たし、2~5の所見の1~2項目を認める。

治療の第一選択薬はプレドニゾロンである。血清トランスアミナーゼとIgGの改善を指標にする。2年間以上血清トランスアミナーゼとIgGが正常内で推移すれば、プレドニゾロンの中止も検討可能である。適切な治療が継続的に行われた自己免疫性肝炎症例の予後は、概ね良好であり、生存期間についても一般人口と差を認めない。しかし、血清トランスアミナーゼやIgGが持続的に正常化していない症例では、治療中止により高率に再燃がみられる。治療を中止した症例の80%で再燃がみられる。初回のプレドニゾロン治療に良好に反応した症例の多くでは、再燃時においてもプレドニゾロンの増量により血清トランスアミナーゼの正常化を得ることができる。副腎皮質ステロイド治療にもかかわらず再燃を繰り返す症例や副腎皮質ステロイドが使用できない症例では、免疫抑制剤アザチオプリンの使用が有効である。アザチオプリン投与時には、血液障害(汎血球減少、貧血、無顆粒球症、血小板減少)、感染症、肝障害などに注意が必要である。プレドニゾロン漸減時や軽度の再燃時には、ウルソデオキシコール酸を併用することで血清トランスアミナーゼの持続正常化を得られる場合がある。予後を良好に保つためには血清トランスアミナーゼの持続正常化が重要である。

 

原発性硬化性胆管炎(PSC:Primary Sclerosing Cholangitis)

原発性硬化性胆管炎(Primary Sclerosing Cholangitis: PSC)は、肝臓の中・外の比較的太い胆管に炎症が生じ、胆管の線維性狭窄や閉塞を起こし胆汁が流れにくくなる進行性の慢性炎症疾患で、最終的には肝硬変、肝不全に進展します。自己免疫性肝炎や原発性胆汁性胆管炎と同様に免疫学的異常よると考えられているが、原因は不明である。炎症性腸疾患の合併が多く、病因との関連が示唆されています。

2018年に厚労省研究班が行った全国疫学調査によると、全国のPSC患者数は推定約2,300名、人口10万人当たりの有病率は1.80であった。2007年に行った全国疫学調査では国内患者総数1,200名、有病率0.95であり、11年間でおよそ2倍に増加している。しかし欧米での人口10万人当たりの有病率は日本の約3~9倍と報告されている。2018年の疫学調査では男女比は約1:0.9であり、男性患者が女性患者よりも多い。好発年齢は若年層(20歳~40歳)および高齢層(65歳~70歳)であり、年齢分布が二峰性をとる。10歳代の子どもに発症することも珍しくはありません。

 PSC患者の診断時年齢分布

原発性硬化性胆管炎では、同じく胆管が障害される病気であるPBC同様、血液検査をするとALPやγGTPが上昇しますが、特徴的な自己抗体は存在せず、血液所見だけで診断することはできません。通常はERCP、MRCPなど胆道造影を行って診断します。診断上最も重要なのは胆道造影所見であり、数珠状所見(beaded appearance)がPSCに特徴的である。

病理組織学的には胆管周囲の輪状線維化と炎症細胞浸潤を特徴とし、典型例ではonion-skin fibrosisと呼ばれる玉ねぎ状の求心性巣状線維化がみられます。ただし、典型的な肝組織所見を示す症例は比較的少数であり、病変は不均一に存在するため一部の組織を採取する針生検では特徴的な所見を得られないことがあり、肝生検を行う意義は低く、診断基準には、肝生検は必須ではなく、参考所見とされています。また、原発性硬化性胆管炎は高率に潰瘍性大腸炎をはじめとする炎症性腸疾患を合併することが知られています。欧米諸国では70〜80%に潰瘍性大腸炎、クローン病などの炎症性腸疾患が合併し、そのほとんどが潰瘍性大腸炎です。ことに若い患者さんに多く、日本のPSC患者さん全体のおよそ40%、若い患者さんでは60%に 炎症性腸疾患が合併すると報告されています。また一般的に原発性硬化性胆管炎に合併する潰瘍性大腸炎は症状が軽く、治療によく反応することが知られています。さらに内視鏡の所見から潰瘍性大腸炎・クローン病のいずれとも診断がつかない非典型的な大腸炎を合併する場合もあります。

初期には無症状であることが多いですが、病状の進行とともに全身倦怠感、疲労感、皮膚のかゆみなどの症状が出現し、黄疸がみられるようになります。全国調査の結果によれば、診断時症状として最も多いのは黄疸(28%)次いで胆管炎、皮膚掻痒感(16%)であった。一方、症状がないまま肝機能検査値異常などをきっかけに診断される症例が半数以上を占めます。潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患を合併することが多いことから、下痢、血便、発熱、腹痛といった消化管症状で見つかることもあります。

原発性硬化性胆管炎の診断に特異性の高い症状はありません。黄疸や発熱など胆管閉塞・胆管炎があり、画像上肝内外の胆管拡張がみられ、胆膵系の悪性腫瘍や胆石症が除外できた場合PSCを考えます。上記のようにALP・γGTPが上昇するのみで症状がない症例も存在します。診断時の血液検査では、胆汁うっ滞を反映して胆道系酵素であるALP、γGTPが上昇するが、診断時ALP値が基準値上限の2倍以上であった症例は全体の半分程度にとどまり、ALPの上昇が比較的軽度で診断されている症例もみられる。

硬化性胆管炎は胆管に硬化性変化を起こし、胆道造影では胆管狭窄所見をきたし、胆汁うっ滞を示す疾患の総称であり、①原発性(PSC)の他に、近年疾患概念が確立され診断基準が作成された②IgG4関連硬化性胆管炎(IgG4-related sclerosing cholangitis; IgG4-SC)および③続発性があり、胆管炎や胆管結石、胆管癌、虚血など様々な疾患に続発する二次性硬化性胆管炎に分類される。臨床像においては胆汁うっ滞に伴う症状は共通であるが、臨床経過や選択されるべき治療方法が異なるため、PSCの診断にはIgG4-SC、および二次性硬化性胆管炎を除外する必要があります。

胆道系酵素が上昇し、画像上胆管拡張がみられる疾患がの鑑別で、もっとも重要なのは胆管癌である。全国調査ではPSCの診断時あるいは診断から1年以内に胆管癌を合併している症例が多い(7.1%)ことから、PSCと診断した際には胆管癌の合併を疑って入念に検査を行う必要がある。また、IgG4関連硬化性胆管炎は副腎皮質ステロイド薬の投与により予後良好な疾患であり、鑑別すべき疾患である。大部分のIgG4関連SCは自己免疫性膵炎を合併するため、自己免疫性膵炎合併を参考に診断可能であるが、自己免疫性膵炎自体の診断が難しい症例や自己免疫性膵炎を合併しない症例の診断は難しい。IgG4関連SCは、胆汁うっ滞による症状(腹痛、発熱、黄疸など)は同様であるが、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)の病歴は稀であり、他臓器のIgG4関連疾患を合併することがある。

同じく慢性胆汁うっ滞を呈する原発性胆汁性胆管炎(Primary biliary cholangitis: PBC)とは、PBCの標識抗体である抗ミトコンドリア抗体がPSCでは検出されないこと、およびPBCでは肝内小型胆管が障害されるのに対し、PSCでは通常肝内外の大型胆管が障害されるという違いがある。また、PSCではしばしば、潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease; IBD)を合併していることが、PSC診断の一助となる。 

現在のところ、原発性硬化性胆管炎に対する根本的な治療は肝移植の他にはなく、薬物による治療法には確立されたものがないのが現状です。日本では多くの場合ウルソデオキシコール酸が使用され、これによってALP・γGTPの値は下がってきます。これらの値が十分低下しない場合、ベザフィブラートを追加することによってALP・γGTPはさらに低下することも明らかにされています。しかし、これらの薬がPSC自体の進行を押さえ、長期予後を改善しているかどうかについては十分なデータが得られておらず、今後さらに研究が必要です。また、胆道造影によって胆管の強い狭窄が認められた場合には内視鏡による胆管拡張治療が行われます。一方、ビリルビンが常に3~5mg/dLを超えるような症例、非代償性肝硬変症例などには肝移植が唯一の根本的治療であるが、移植後のPSC再発することも少なくありません。

PSCは若年者に好発する疾患であり、学生・若い社会人が罹患することが多いが、有効性の証明された薬剤が存在しないこと、全体としてみると、PSCはいまだに予後不良の疾患である。予後が不良であるが、PSCの経過にはかなり個人差が大きく、診断後急速に悪化していく症例も見受けられるが、診断後10数年以上たっても進行しない症例も存在する。無症状のまま経過する場合、またウルソデオキシコール酸の服薬で良好な経過をたどる場合があります。PSCと診断されず治療が行われない場合や治療の効果が低い場合には、発熱や腹痛を伴う胆管炎を併発したり黄疸が出現したりしながら病気が進行し、肝硬変へと進行します。肝臓内の胆管癌の合併も知られています。進行した症例には肝移植が有効で、移植後5年生存率75%と良好です。2015年の全国調査によると、日本のPSC患者さん全体において、PSCと診断されてから5年・10年後に生存している確率は、それぞれ81.3%、69.9%、肝移植を受けずに5年・10年後に生存している確率は77.4%、54.9%と報告されています。ただし、診断時に症状がなかった患者さんに限定すると肝移植なし5年・10年生存率は87.3%、66.5%、診断時に症状がなく、かつ若い患者さんであれば91.3%、73.5%でした。