2019年12月31日、中国の武漢で原因不明の肺炎の患者さんが27人発生しているというニュースが報道されました。2020年1月9日には、新型コロナウイルスが分離されました。感染症法的には、日本では新型コロナウイルス感染症が正式名称ですが、国際的にはCOVID19COrona VIrus Disease 2019)ウイルス名はSARS-CoV-2と名付けられています。「コロナ」とは見た目の形が王冠のギザギザが付いている丸型をイメージです。これまで人に病気をおこすコロナウイルスは6種類ありました。そのうちの4種類は風邪で自然に治ってしまいます。ところが2002年中国でSERSと呼ばれる新しいコロナウイルス(コウモリ由来)が見つかりました。2012年には中東でMERSと呼ばれる新しいコロナウイルス(ひとこぶらくだ由来)が出て韓国に飛び火して大きなアウトブレークを起こしました。今回、武漢で発生したのが7番目のコロナウイルスということになります。

 COVID19

 

昨年12月、中国の武漢で原因不明の肺炎の患者さんが報告されて以来、 中国の春節の時期とも重なってしまい、 新型コロナウイルス感染症が、あれよあれよという間に世界中に拡がって、東京オリンピックも延期になってしまいました。8月に日本で終息していても、世界中で蔓延状態が拡がっている状況では、人々の移動もままならず、いたしかたない判断かもしれません。テレビは視聴率稼ぎのためどのチャンネルを回しても新型コロナの井戸端会議ばかりで、素人が好き勝手しゃべって不安を煽っているようにしかみえません。情報開示は大変重要ですが、ちょっと騒ぎすぎではないでしょうか。彼を知り己を知れば百戦殆からず。まずは、新型コロナウイルス感染症について正しい知識を得て、自分を客観的に見据えて、正しく怖がることが大事です。

中国の患者数は8万人を超え死亡率は3.6%、このうち8割以上が武漢市が占めています。(湖北省以外での死亡率は0.84%)この死亡率の解離は、武漢市では肺炎になった人(重症者)を中心に検査をしているため死亡率が高くなっていると言われています。日本では、1693人感染し52人死亡(死亡率は3%)となっています。(令和2年3月末)

日本では、1月16日に最初の患者さん(武漢由来)が出て、28日には最初の国内感染(中国渡航歴がない)が起こりました。1月29日からチャーター便開始され、ぞくぞくと武漢からの帰国が始まり、全員にPCR検査が実施され、検疫所が指定した施設等で、14日間待機の処置がとられました。2月1日、指定感染症(公費で治療)に定められました。2月14日に専門家会議が招集され、同日の日本で最初の死亡患者がでました。2月25日に政府基本方針が示されました。クラスター対策(一人の患者さんから次々に感染してある一定の感染者の塊ができることをクラスターと呼ぶ)と遅延受診です。クラスターを封じ込めることでさらなる感染拡大を予防するため、クラスター班が設けられました。また、今まではなにか感染症に罹るとなるべく早めに医療機関を受診しましょうと言うのが常識だったのですが、今回は風邪症状(新型コロナウイルス感染症を含めて)が出た場合にあわてて医療機関を受診しないようにし、健康で合併症のない人はまずは4日間は家で様子を見て下さいという基本方針が発表されました。

 

指定感染症とは、感染症法第六条において、既に知られている感染性の疾病(一類感染症、二類感染症及び三類感染症を除く。)であって、感染症法上の規定の全部又は一部を準用しなければ、当該疾病のまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあるものとして政令で定めるものとあります。感染症法では、感染力、罹患した場合の重症度や致死率などに応じて感染症を1類~5類、新型インフルエンザ等感染症、指定感染症、新感染症に分類します。指定感染症は、これまで感染症法に指定されていない感染症のうち、緊急で患者の行動を制限することが必要な場合に、一定期間に措置を行えるようになります。通常は1年間有効で、必要に応じてさらに1年延長して2年で、その後も必要であれば1類~5類のうちのいずれかに指定されます。「指定感染症」にしてされると(1)患者に対する入院措置、新型コロナウイルスに関連した感染症患者に入院が必要だと医師が判断したら、隔離措置を取ることができるようになります。(2)入院費の公費負担 入院費用が公費負担となり、患者の負担なく隔離措置を取ることができるようになります。(3)診断した医師に報告義務 新型コロナウイルスに関連した感染症が疑われた場合、診断した医師は保健所や行政に届け出ることは義務になり、患者の全数把握が正確になります。(4)積極的疫学調査(接触者調査)感染患者との接触者を協力ベースでしか調査できなかったことが、法律に基づいて調査ができるようになり、濃厚接触者の健康監視を行いやすくなります。

 

COVID19の特徴

中国全土552病院の入院を要しCOVID19 多施設コホート研究(NEJM 2/28/2020)では、 1099例 女性42%(年齢の中央値47歳)15歳未満0.9% 入院時発熱43.8% 胸部Xp異常陰影59%(胸部CT86%)ICU入室5% 人工呼吸器6.1% 死亡率1.4%と報告されています。潜伏期間は2〜7日平均4日、11.5日で95.7%で発症 最大14日を見積もれば、ほとんどの人が発症するとされています。新型コロナウイルス感染症の臨床像(JAMA2020)は、無症状〜感冒症状〜重症肺炎と幅広く80%は軽症に止まります。日本のクルーズ船の感染では17%でPCR陽性でしたが、そのうちの半数で診断時は無症状でした。

基本再生産数(1人の患者さんがどれくらいの人に移していくか)は、新型コロナウイルス感染症は、1.3〜2.5でした。ちなみに、麻疹は12〜18、SARSは3、インフルエンザは1〜2  基本再生産数は状況によって変化します。

再生産数

保健所のクラスター事例での濃厚接触者の追跡調査では、感染者の8割は他人に感染させていないとする一方で、一部の人が9人〜10人に移している場合もあり、飛沫感染、接触感染が主体ですが、ウイルスを移しやすい患者さんがいるのか、密閉された環境では、エアゾル感染(空気感染とは異なります)もあり得るなど環境因子によるものなのかが議論されています。2次感染者は濃厚接触者の感染率はの1〜5%(中国)0.45%(アメリカ)一定条件が伴わないと次から次へと広がっていくわけではなさそうです。要因としては、クルーズ船、屋形船、ライブハウスなどの集団感染の事例から閉鎖空間のクラスター感染が疑われ、そこで日本で提唱されているのが3つの密(三密)を避けましょうというメッセージです。

三蜜

 

臨床経過

新型コロナウイルス感染症は、発症初期は 感冒様症状、発熱、倦怠感、咳嗽、鼻汁(少ない)、時に嘔吐、下痢(1割)で始まり、初期には風邪と全く同じ症状であり区別できません。発熱は初期には4割ほどしか認められません。咳が81%に見られます。 発症から4日以上経過して7日以上感冒症状が持続しますが、8割の患者さんは風邪症状だけで治っていきます。2割の患者さんは、その後の経過で肺炎様症状(喀痰27%、息切れ31%、呼吸困難感)が出現し、 加えて筋肉痛や倦怠感を訴えます。肺炎(およそ14%程度が酸素が必要になる)を合併しても多くは2週間ほどで改善しますが、一部の方が重症化し数日にうちにARDS(急性呼吸窮迫症候群)になり集中治療室へ(5%)呼吸管理、集中治療を要する(ショック 呼吸不全、多臓器不全)状態を持ちこたえれば3〜6週間で回復しますが、2〜3%で多臓器不全が進行して不幸な転帰をとります。

経過

 

各国からの死亡率の報告は、0.7〜2%程度で、日本では1.6%でした。死亡率の解釈には分母の数がかなり影響します。韓国を始め、ドライブスルー方式など無症状者を含め、大量にPCRをしている国は低くなります。そう考えれば、日本のようにかなり絞った範囲でPCR検査を施行していることを考えれば、日本の死亡率は頑張っていると考えられます。イタリアでは死亡率が7%と高くなっています。イタリアでの死亡率の高値についてJAMAでの解析では、医療崩壊が起きてしまったことに加え、軽い人の検査に手が回らなくなったで分母が軽症者の減ったこと、日本と同様に高齢化が進んでいる国であることと、基礎疾患がある患者さんが多いことなどが重なったことが原因としています。これは、決して対岸の火事ではありませんね。小児も感染はしますが、死亡率はとても低く、インフルエンザと変わりないんではないかと思います。重症者の報告も稀なようです。一方で、80歳以上の高齢者は12%程度と高い死亡率となっています。高齢者にとってはとても怖い感染症であり、年齢によって二面性を持ったウイルスのようです。また、妊婦については、インフルエンザは重症化のリスクになりますが、COVID19は重症化や垂直感染による先天性感染のリスクは今のところが確認されておらず、羊水、新生児からウイルスは検出されていません。

死亡率

 

糖尿病、心疾患などの基礎疾患を持っていると死亡率も高くなっています。

合併症

 

診断

まずは渡航歴接触歴(暴露歴)などの病歴の聴取です。流行地域へ行っていたか?周りに新型コロナウイルスに感染した人がいるかは重要です。これが感染初期の新型コロナウイルス感染症を診断する唯一の手がかりです。渡航歴、接触歴がなければ、普通の風邪と新型コロナウイルス感染症を感染初期に鑑別することはほぼ不可能です。では、この感染初期の段階で診断をつけなければまずいのかいうとそんなことはありません。実際に、新型コロナウイルス感染症だったとしても80%は風邪症状のまま自然に治っていきます。さらに診断がついても治療薬は確立したものはありません。また、PCR検査は感度は50%しかなく、陰性でも新型コロナウイルス感染症でないとは言い切れません。つまりPCR検査陽性で新型コロナウイルス感染症と診断がついても治療薬もなく、多くの人は自然になおるわけです。だからこの段階では、全員の患者さんをPCR検査をすることではなくて自宅安静です。そして家庭で可能な範囲での接触、飛沫感染予防して周りに移さないようにしてもらって、治っていくか重症化しないか見ていただくのが現実的な対応ではないかと思います。

新型コロナウイルス感染症を疑うポイントは特徴的な風邪症状の続く期間の長さです。発症初期には風邪やインフルエンザとの鑑別は困難ですが、風邪ならば発症から3日から7日ぐらいで治っていきますが、発症から4日以上経過して7日以上と症状が続く期間が長いという特徴があるようです。特に重症化する事例では、発症から1週間前後で肺炎の症状(咳・痰・呼吸困難など)が強くなってくることが分かってきました。感冒症状が持続して、だんだん症状が増悪し、数日にうちにARDSになるのが重症化のパターンです。中国のデータでは、発症から病院を受診するまでに平均5日、そして入院までに平均10日かかることが分かっています。つまり、発症してから1週間程度は風邪のような軽微な症状が続き、約2割弱と考えられる重症化する人はそこから徐々に悪化して入院に至るというわけです。インフルエンザは比較的急に発症し、高熱と咳、喉の痛み、鼻水、頭痛、関節痛などが出現します。風邪はインフルエンザに比べるとゆっくりと発症し、微熱、鼻水、喉のの痛み、咳などが数日続きます。しかし、新型コロナウイルス感染症のように1週間以上続くことは比較的稀です(ただし咳や痰の症状だけが2週間程度残ることはよくあります)もう一つの特徴として、嗅覚障害・味覚障害を訴える患者さんが多いことも分かってきました。イタリアからの報告によると新型コロナ患者59人のうち、20人(33.9%)で嗅覚異常または味覚異常がみられたとのことです。特に若年者、女性ではこれらの症状がみられる頻度が高いようです。ただの風邪や副鼻腔炎、花粉症が原因で嗅覚異常・味覚障害が起きることもあるので「嗅覚障害・味覚障害=新型コロナ」ではありませんが、だらだらと続く風邪症状に加えてこれらの症状があれば新型コロナの可能性は高くなるでしょう。また、嗅覚障害・味覚障害のみの症状の方もいらっしゃるようですが「2週間以内の海外渡航歴がある」「新型コロナ患者との接触歴がある」「特定のクラスターに曝露している」のいずれかを満たす方では、新型コロナの検査の対象になる可能性がありますので、かかりつけ医や帰国者・接触者相談センターに相談しましょう。つまり、4日以降、風邪症状が続く方がPCR検査の対象になります。(但し、心血管病変や糖尿病など基礎疾患のある方は早めに、全身倦怠感や呼吸困難感等、症状の強い方もこの限りではありません)

PCR検査は、咽頭よりも鼻咽頭の方がウイルス量が多いことがわかっています。しかし、自分の診療所ではPCR検査を行っていないので、施行可能な医療機関に依頼します。結果がでるまでは、副鼻腔炎や咽頭周囲膿瘍、肺炎、尿路感染症、胆管炎などの診断はきちんとしなければなりません。普段の風邪診療の質が問われています。

血液検査データーは、初期では、WBC 正常から低下が90% リンパ球数低下が35%(初期からWBCが増加しているとらしくない)CRPは5程度まで(あまり高いとらいしくない)LDHが上昇76%、軽度の肝機能異常が35%、腎障害は13%に認められる。

従来の肺炎の診断は、バイタルサインと身体所見で行います。単独で飛び抜けた因子はありませんが、それぞれを組み合わせて診断します。最も有用なものは呼吸数で高齢者ではRR>24また、食事が摂れているかなどもポイントです。また、ヤギ音が聴取できれば、肺炎に特異的で、呼吸音の減弱、左右差、Cracklesが聴取などがあります。(Cracklesの聴取できない肺炎も半分以上ある)また、Heckerling scoreでは、体温>37.8℃ HR>100/min Cracklesがある 呼吸音低下がある 喘息がない 合計で1以下だと肺炎の可能性は1%以下となります。

しかし、新型コロナウイルス感染症の肺炎は、普通の風邪症状だけ(高熱や呼吸困難感などがない)でも、胸部Xpを撮像すると肺炎を合併ししている事も多く、症状が出た内のおよそ半数で肺炎像(胸部CT)が認められています。初期の胸部CTの典型像は下葉優位に胸膜直下がスペアされない両側すりガラス陰影や斑状陰影を認めるようです。これらの所見は、症状がない段階やPCR陰性でも病変が描出されることあるようです。片側であったり、浸潤影など典型例ではない症例も散見されます。PCR検査が陽性になると胸部CTは、感度97%で肺炎像を認めることから除外診断に有用な検査である。(特異度は25%)新型コロナウイルス感染症の診療で最も大事な事は、常にガードを降ろさない意識と重症化するタイミングに注意することです。重症化する症例は、1週間以上熱が続く経過の中で、呼吸のバイタル(呼吸数やSoO2)が増悪するのを見逃さないようにして、高次医療機関へコンサルトしましょう。

CT

肺炎の起因菌は、細菌性肺炎として、Streptcoccus pneumoniae、Heamophilus influenza、Moraxella catarrhalis、非定型肺炎として、Mycoplasma pneumonia、Chamydophia pneumonia、Legionella pneumoniaがありますが、どんなに新型コロナウイルスが流行っていると言っても、やはり、市中肺炎で最も多いのは、肺炎球菌になります。新型コロナウイルス感染症ばかりに目を奪われず、治る肺炎をちゃんと治療するスタンスも大事です。 (1)年齢60歳以下 (2)基礎疾患がない (3)頑固な咳 (4)胸部聴診上所見が乏しい(5)痰がない (6)WBC<10000のうち、4項目以上合致した場合は、非定型肺炎(感度77.9% 特異度91.0%)と診断されます。

 

治療

なかなか良くならない風邪、抗菌薬が効かない肺炎、原因不明の間質性肺炎は、PCRが陰性でも新型コロナウイルス感染症の疑いがより強くなります。何回も言いますが、確立した有効な治療はありません。可能性のある治療薬としてはHIVの治療薬であったロピナビル、リトナビル、新型インフルエンザの治療薬であるファビピラビル、エボラ出血熱の治療薬 レニデシビル、マラリアの治療薬 クロロキン、リウマチの治療薬であるトシリズマブ、吸入ステロイド シクレゾニドなどが期待されるが、これらは試験管内での効果である。(倫理委員会で承認)反対から見れば、新型コロナウイルス感染症は、肺炎を合併しても大多くは軽症で、確立した治療法もないので、外来治療も可能です。

ニュースで治療の切り札をして「エクモ」って言葉をよく耳にします。エクモとはなに?日本中に衝撃を与えた志村けんさんの突然の死去。新型コロナウイルス感染が確認されてからわずか6日でした。志村さんの治療にもエクもが使われました。ECMO:extracorporeal membrane oxygenation(エクモ)は「体外式膜型人工肺」という機器の略語です。ECMOは呼吸と循環に対する究極の対症療法であり、人工呼吸器や昇圧薬など、通常の治療では救命困難な重症呼吸不全や循環不全のうち、可逆性の病態に適応されます。人工呼吸器は、鼻や口、もしくは首を切開(気管切開)した場所からチューブを通して空気(酸素)を送り込む医療機器で、強制的に肺に空気を送り込み人工的に呼吸している状態を作る。しかし、肺自体の病状が進むと肺は酸素を取り込むこともできなくなる。機能低下した肺の代わりの役目を果たすのがECMOです。足の付け根の静脈などから血液をいったん体外に取り出し、人工肺で酸素を取り込んでから体内に戻す。ECMO自体が肺炎を治すわけではないが、使用中は肺を休ませることができるので、その時間を利用して肺の回復を図ることが可能という。エクモの使用期間は2~4週間と言われています。新型コロナ以外の呼吸器不全でECMOを使用した際は7割前後が回復するといわれています。しかし、1~2分間で全身の血液が入れ替わるほどのスピードで回し、血液をサラサラにするため、脳出血などの合併症の危険性もあります。2020年3月、日本呼吸療法医学会・日本臨床工学技士会の調査によりますと、エクモは全国で約1412台(兵庫47台)あるようです。僕も全く知らないのですが、エクモを一台、24時間体制で動かすのにしっかり訓練された医師4~5人、看護師10人以上、臨床工学技士2~3人の合わせて20人程度のスタッフが必要と言われています。

エクモ

新型コロナウイルス感染症患者さんの来院に備えて(診療所版)

まずは、患者さんができることですが、新型コロナウイルス感染症は、感冒様症状である発熱、倦怠感、咳嗽、鼻汁などで始まり、初期には風邪と全く同じ症状であり区別できません。だから、熱が出たとしても誰も新型コロナウイルス感染症ではないとは断言できないわけです。だから、もし感冒様症状が出たら、新型コロナウイルス感染症かもしれないので、仕事、学校を休んで下さい。外へ出歩かないで自宅待機で経過をみます。マスク、手洗い、咳エチケットを励行して、周りの家族に移さないようにして様子を見ることが大切です。具体的には、家庭内で感染を広げることを極力抑える方法として、一番大事な事は、一に手洗い、二に手洗い、三四がなくて五に手洗いです。そして症状がある人と他の家族の接触を避ける対策としては、看病する人をできる限り1人に限定すること、部屋を分ける。タオルを分ける、症状のある人はマスクは必須です。症状のある人がトイレやお風呂を使った後は触った場所をアルコール消毒をします。最後に定期的な室内換気(2時間に5分)です。そして、受診の目安とされる感冒症状、発熱が4日以上続いた(高齢者、基礎疾患、妊婦は2日以上ですが、但し症状が強い場合は、4日、2日に限らず直ぐに)場合は、帰国者、接触者センター(保健所)に電話をして相談して下さい。これは、明らかに怪しい(医者じゃない保健所の担当者が聞いたも)場合は、そのままPCR検査を行うルートに乗りますが、ちょっと大丈夫じゃない?(普通の風邪?)と判断された場合は、まずは、かかりつけ医に診てもらって下さい。と言われて、かかりつけ医を受診することになるわけです。

たつの市における新型コロナウイルス感染症はまだゼロですが、いつ来るかわかりませんが、いつかは来る可能性が高い、既に来ていたかもしれないと思われます。当院でどのように備え、対応(動線分離)しているかについてお話しします。最も地域のみなさんに近いところで診療しているわけで、いつもかかっておられる患者さんが熱を出して、新型コロナっぽくない(実際は初期は普通の風邪と鑑別できないのでわかりませんが・・・)と言われてしまえば、診ないわけにはいきませんよね。患者さんから電話が掛かってきたら、まず症状を詳しく聞いて、車で来院される場合は、駐車場の車内から電話受付をしてもらいます。患者さんの診察の順番になったら、天気がよければ、僕が診に行くこともありますし、患者さん同士が交わらない動線を確保して第3診察室、もしくは感染症待合に誘導します。診療所入り口には、発熱等風邪症状がある患者さんは、直接、診療所内に入らないで下さいと書いた書面を貼っていますが、基本的にそういった張り紙は誰も見ていませんね。まあ、自転車や徒歩で来られた患者さんや直接来られた患者さんには受付横の小部屋で聞き取りを行って、患者さん同士が交わらない動線を確保して第3診察室、もしくは感染症待合に誘導しています。患者さんの診察は基本的に僕一人で行います。標準予防策として、診療行為に応じて、適切に個人防護具(Personal Protective Equipment:PPE)を選択します。マスク、手洗いは、すべての患者さんに行っています。咳をしている患者さんは、グローブとゴーグル(フェイスシールド)とガウンを着用します。日本医師会の見解としてインフエンザ迅速検査は、鼻咽頭の拭い液採取するため、気道吸引と同様にエアロゾル発生が想定され、N95マスクや理想的には陰圧室も必要となるため、新型コロナウイルス感染症が疑われる状況において、診療所のセッティングではインフエンザ迅速検査は行わない方向で診療することを推奨しています。(僕にとっては、渡りに船です)

 

正しく怖がることが大事

以上、新型コロナウイルス感染症について、現在わかっていることもまとめてみました。最初に書きましたが、正しく怖がるって難しいですよね。案外、慢性疾患で通院されている方は平常心です。日常診療ではもっと大変な病気で通院されている患者さんもたくさんおられます。われわれ医療者の方が過剰反応しているのかもしれません。検査で早期に新型コロナウイルスと診断がついたとしても、ウイルスなので、抗生剤など特効薬はなく、対症療法以外有効な治療法は確立されていません。基礎疾患のある人、高齢者、喫煙者が重症になりやすいようです。予防としては、マスク(咳をしている人がする)手洗い、うがい(効果は限定的)いっぱい寝る、しっかり食べるなど一般的な規則正しい生活をすることが大切です。インフルエンザよりもちょっと重症な風邪ってイメージですけど、20%肺炎になるし、高齢者にとっては死亡率も高いく怖い感染症のようです。

日本の新型コロナウイルス感染症に対する対策において、一番のネックとなっていることは、「日本の集中治療の体制がパンデミック(世界的流行)に大変脆弱であった」ということです。緊急事態宣言が解除できず、経済活動が再開できない最大の原因(律速段階になっている)になっているのは、PCR検査の体制が整わないことでもなく、マスクや防護服が足りていないことでもなく、感染爆発が起きたわけでもありません。新型コロナウイルスの重症者を救命する病院の集中治療室(ICU)がいっぱいになっていてこれ以上の患者さんが増えると医療崩壊になりかねません。日本と海外ではICUの整備状況に大きな差があります。人口10万人当たりのICU病床数は日本は約5床だが、米国は約35床、ドイツは約30床。多くの死者が出ているフランスやイタリア(約12床)スペイン(約10床)も日本よりは多いんです。姫路地区から西播磨圏域の感染症指定医療機関は、姫路赤十字病院(6床)赤穂市民病院(4床)です。これだけ少ないとひとつ、ふたつのクラスター感染でもういっぱいという感じです。姫路市は、新規発症の患者さんは大分落ち着いてきましたが、神戸や阪神間からの新型コロナウイルス感染症の中等症の肺炎を受けられているようです。しかし、急には集中治療のベット数を増やしたり、人材を育成したりすることも困難です。ワクチンや治療薬の開発もある程度時間がかかります。とりあえずは、第二波、第三波がくるまでに、軽症者は家で寝ていてくれというと家族内感染が非常に懸念されることから、現在のサービス付き高齢者住宅のような少し医療的な監視ができるような施設を用意できればどうでしょうか。

 

ICU

 

 

今回の新型コロナウイルス感染症に限らないのですが、いろいろな事件が起きたときに報道がみんな横並び、どのチャンネルをひねっても判子を押したように、政策の方向性に乗っかった同じようなコメントが流れています。確かに、国民が一致団結してこの難局に立ち向かうために協力することは大切なことですが、反対意見もでずに、なんの議論もないままに、同じ方向を向いているのはなんとなく居心地が悪いと思っているのは僕だけでしょうか?あれもダメ、これもダメ。確かに、動かなければ、COVID19感染拡大は抑えられるかもしれません。しかし、命を守れても生活は無茶苦茶ですよね。三密は危険、これはみなさんでコンセンサスの得られたことだと思いますが、だから全国一律の緊急事態宣言、休業要請、学校休校などの政策との間にはかなり飛躍しすぎではないかという印象があります。最初に誤解がないように言っておきますが、国民の多数のご意見はいたしかたがないが大半だと思うのですが、個人事業主のみなさんの散々な状況を見ていると、われわれ医療関係者も危険は伴いますが仕事ができるし、国会議員さんも仕事ができるだけましです。もう少しやりようがあるのではないかと、私の個人的な見解ですのであしからず。

接触8割減らす、本当にやらなければダメ?

4月になって「人の接触を8割減らさなければ大変なこと(感染爆発)になる」東京都での感染経路不明の患者が急増を受けてのメッセージだ。試算したのは、感染者数の予測を数理モデルで解析する専門家の北海道大学の西浦博教授です。外出制限などで人の接触を8割程度減らすことができれば、潜伏期間などを踏まえ、10日~2週間後に1日数千人をピークに急激に減少させることができるとしています。これって本当?突然わいて出たような数値に戸惑った人も多かったと思います。「人の接触」は鉄道の利用状況を目安に解析されており、東京など大都市を想定しているわけで、たつの市のような1時間に1本、一両編成で汽車が運行されている地域は、人口密度も低いし、東京のように患者が急増しているわけでもありません。普段の外出でも東京の満員電車に比べれば、既に9割以上の減少にあたりそうです。この指標を全国一律にあてはめて、家から出るなというのはどんなものかと疑問でした。こんな大変なことを強いられて、誰も何のコメントもないというのはなんとなく息苦しく感じてしまします。別に、西浦教授の解析が間違っているといっているのではありません。おそらくは正しいんだと思います。しかし、こんなことをやっている専門家が日本にたくさんおられるわけもなく、なかなか議論の俎上に載せるのが難しいと感じました。

全国一斉の学校の休校は本当に必要か?

僕も学校医として、インフルエンザ流行期には、粛々と学級閉鎖、学年閉鎖などの相談にも乗っていますが、個人的には、インフルエンザ蔓延期に学校閉鎖は意味がないと思っています。学校閉鎖に関するエビデンスは、季節性インフルエンザの流行期における観察研究や疫学モデルを使った研究がありますが、エビデンス的にも早期に積極的に行えば有効とする報告もありますが、日本のようにすでに地域に感染が広く広がってしまった中でクラスの20%の児童生徒が欠席したら休校を考えるなんてやっても感染拡大を止める効果があるかははなはだ疑問です。日本では季節性インフルエンザでも学級閉鎖、学校閉鎖を行っている数少ない国のひとつですが、ほとんどの国は、学校閉鎖が感染拡大を抑える効果が乏しいことや経済的、社会的な影響もあり、学校閉鎖は行われていません。今回、3月2日より、全国一斉に学校の休校が始まりました。たしかに一部、新型コロナウイルスが流行し始めた地域では、早期に積極的学校閉鎖として有効かも知れません。しかし、なんで小学校、中学校、高校だけ(保育園、幼稚園、大学が入らないのは、政治的判断?)中途半端なんです。さらになんで全国一斉?小中学校以下の単位だた一人も発生していない地域もたくさんあります。せめて市単位か市と周囲の市町村を合わせた範囲で、新型コロナウイルス感染症が一人でたら学校閉鎖を始めるぐらいの指示があってもいいんではないでしょうか。(言葉は要請ですが、事実上の強制ですよね)理論的には、インフルエンザは、子供の罹患率が高く、子供がかかって地域社会に広めるという想定されており、学校閉鎖でその流れを止めるということですが、そもそも新型コロナウイルスは、子供はかかりにくいことがわかっています。また、安倍総理は「子供たちの命を守る」なんて言ったら、誰もなにも言えなくなります。政治家は言葉が命、本当にお上手です。うまい反則技ですが、そもそも子供は感染して重症化しても治りやすく(重症者の報告も稀)死亡率はとても低く、従来のインフルエンザとほぼ変わりありません。詭弁にあたりませんか?子供は重症化しなくても不顕性感染して高齢者にそのウイルスを広める、どこかで見てきたよう説明をされていますが、本当ですか?子供達が感染伝搬の中心ではないと言われています。これだけ核家族化された社会で、子供がおじいちゃん、おばあちゃんに移しますか?(三世代同居の田舎では、新型コロナウイルス感染症はほとんどゼロという状況)多くの子供たちや親御さんにどれだけ負担をかけて、全国一斉の学校の休校にどうれほどの効果があるか?新1年生は残念だろうし、受験生は本当にかわいそう、たいへんなんてもんではないですよね。新型コロナウイルス感染症のどさくさにまぎれて、全国一斉休校の副作用(副産物)として9月入学が取りざたされていますが、どうなることやら。

PCR検査はなぜ増えないか?どこまでやる必要があるか?

PCR検査がなぜ増えないのか?誰も言わないのであえて言わしてもらうと、僕を含め医師自身が、現状の日本(たつの市を含めほとんどの地域)における新型コロナウイルスの状況でPCR検査があまり必要ないと思っているからです。必要ないというと語弊があるかもしれません。確かに韓国や中国みたいに軍隊式で医師に無理矢理、PCR検査を全土で強制できる国家はそうすることによって新型コロナウイルスをもっている人の情報管理して感染拡大を防ぐのは確実で手っ取り早い方法です。(このような手法を日本国民がよしとするかですが)しかし、日本で政治家がPCRを増やす増やすと言っても実際にするのは現場の医師です。そんなの強制力もないし、現場の医師が、今の現状でPCR検査を無理して(PCR検査がなんのリスクもないなら問題ないのですが、マスクや防護服が診療所で不足している状況で、PCR検査をする必要性とリスクを天秤にかけて)やらなくてもあまり関係ないと思っているから増えないわけです。かかりつけ医も高齢化が進んでおり、なるべくやりたくないという心情がないと言えばうそになるんでしょうが、本当に必要ならがちがちにガードしてやりますよ。(揖龍急病センターには防護服などは備蓄あり)PCR検査は、国民の不安解消のたけにするわけではありません。例えば、当院ではインフルエンザの迅速検査(抗原検査)も全然流行っていない時(現在のたつの市の新型コロナウイルス感染症の状況も同じ)にやってもあまり意味はありません。少し流行し始めた時に(検査する前に20〜30%ぐらいの確率でインフルエンザかもしれない)迅速検査をすることによってインフルエンザである確率を90%以上に持ち上げて、迅速検査の結果が陽性か陰性かで、その後のアクションが変わる場合に検査をする意味があるわけです。だから流行期(蔓延期)にはほとんどやっておりません。というかやる必要がないということです。流行期になると、家族内が既にインフルエンザに罹患した人がいたり、38.5℃以上の発熱、倦怠感、食欲不振、関節痛など典型的な症状が揃うとほぼ臨床的にインフルエンザ確定なんです。わざわざ感度が60%ぐらいしかない検査をして、陰性が出たら患者さんへの説明がややこしくなる(陰性でもインフルエンザですよと説明しても理解してもらえない)だけなんです。しかし、患者様扱いしている医療機関では、患者さんの満足度を挙げるためというか、患者さんに十分理解できるまで説明するのが大変なので片っ端からインフルエンザ迅速検査を行っている(陽性でも陰性でも関係なし → インフルエンザの治療をする)のが現状と思います。実際、僕も揖龍急病センターの当直では患者さんに説明する時間がないので、希望者には行っています。PCR検査はどういった人に必要でしょうか?ひとつはクラスター対策です。渡航歴や暴露歴があったり、濃厚接触者としてのPCR検査は囲い込みの段階で必要です。弧発例については、臨床経過のところでお話ししたように、新型コロナウイルス感染症の80%は風邪として自然に治っていくので、発症初期の3〜4日の段階で現実的な対応は全員の患者さんをPCR検査をすることではなくて自宅安静です。この段階で、PCR検査をして陽性になって新型コロナウイルス感染症と診断がついても治療薬もないので、入院してもなにもすることはなく(今後はホテルなどに振り分けられる)そして80%は自然に治っていくわけです。特に日本のように感染症指定医療機関の病床数や救急病床が少ない場合、安易なPCR検査で軽症な新型コロナウイルス感染症患者が大事なのベットを埋めてしまうことも大きな問題です。(大都市のようにホテルを借り上げられればいいんですが、田舎には人も物もお金もありません。)4日から7日を過ぎても治らない場合は、風邪とは違う可能性が高くなってくるわけで、副鼻腔炎、扁桃周囲膿瘍、市中肺炎、尿路感染症、胆管炎などの鑑別診断の中に新型コロナウイルス感染症が入ってきて、この段階で、PCR検査を行うのが適切なやり方だと思います。たつの市では、一人の医師が孤軍奮闘でPCR検査をされています。それでなんとか回っているのは、PCR検査をしなければならない患者さんを適切に選んでいるからです。(なにかあった時の体制は整えて置かなければなりませんが)PCR検査を100人以上調べてまだひとりも出ていません。たつの市(全国のほとんどの地域)のようなまったく流行していない集団で、PCR検査を片っ端からやる必要はまったくありません。たつの市でももっと調べたら新型コロナウイルス感染症の患者さんがいるかもしれないという議論もありますが、少なくとも10人いれば、2人は肺炎になる病原体です。熱が続いたり、呼吸困難感を訴えて肺炎になった時点ではどこかの医療機関を受診して発覚するはずです。PCR検査ってそんな万能な検査ではありません。検査は間違うんです。たしかに特異度はかなり高いでしょうが、感度も50%しかありません。(ゴールデンスタンダードは、PCR検査かウイルス培養)人がやる検査なので偽陽性も必ずあるわけです。(新型コロナウイルスにかかっていないのに陽性と言われて患者になってしまう)そして、いつかは、東京のように風邪の患者さんの2割ぐらいがPCR検査陽性になるぐらい地域全体として流行してきたら(事前確率が20〜30%)東京都医師会が行っているようにPCRセンターとしてドライブスルー形式とか発熱外来を設置して本腰でPCR検査をして調べることに誰も異存はないと思います。患者さんが増えてくると指定医療機関の負担が増えてきます。この頃には、感染症指定病院とかなんとか言ってられなくなるので一般の病院でも新型コロナウイルス感染症をガードを固めて診なくてはならなくなるだろうし、さらに流行が蔓延して、みんな新型コロナウイルス感染症になると逆にPCR検査をやる意味はなくなります。最後に疫学調査としてある集団に対してPCR検査をすることには意義はあるでしょう。

サーフィンに行くことは本当にダメなのか?

あの広い海でサーフィンをしていてCOVID19の感染が広がるでしょうか?うっかり聞いているとサーフィンが悪者になっているように誤解してしまいそうです。当然ご承知のことと思いますが、あのニュースの本意は、東京都周辺の人の移動を抑制して下さいというお願いのヤリ玉にサーフィンが挙げられただけで、千葉や神奈川に他都道府県からCOVID19を運んでこられるのが困ると言っているわけです。大バッシングして浜辺に誰もいないのがさもしてやったりみたいな感じでしたが、みなさんが散歩するように、地元の人が運動がてらサーフィンするのは全く問題ないわけです。強いて言うならCOVID19がそんなに流行っていない県でサーフィンをしてもCOVID19の感染拡大とは関係ないと思います。基本的に屋外での活動の制限は必要ないのではないかと思っています。毎週、火曜日にテニススクールに通っていましたが、4月7日の緊急事態宣言で休講になってしまいました。実際にクラスターが発生した事例がある屋形船やライブハウス、カラオケ、飲み会などは制限が必要なのは仕方がありません、夜の接待業でクラスターが発生したのでそれも加える、それならばみんな納得です。(闇営業はなくならないでしょうが)いわゆる三密(密接、密集、密閉)の条件ですねよ。それに加え、密接、密集、密閉それぞれ単独での条件を十分に注意しながら対応すれば、クラスター発生させた事例のない活動は様子を見るのが順番ではないでしょうか。ただ密接といっても散歩してて挨拶するぐたいの立ち話では移らないと思いますよ。おそらくは、屋外の個人スポーツは大丈夫ではないでしょうか。ゴルフしかり、マラソンしかり、山登りしかり。ブログでも書きましたが、Jリーグも途中で止めてしまいましたが、サポーターもアイデアを出し合っていろいろと協力しながらやってました。コンタクトスポーツなので選手間での感染が懸念されますが、観戦も屋外なので試行錯誤しながらやりようによってはなんとかなるのでは、できるだけ早く再開できたらなと思っています。(プロゴルフツアーから再開するのが無難でしょうか?)

パチンコに行くことは本当にダメなのか?

パチンコでクラスターが発生したという事例はないんではないでしょうか?(間違っていたらすみません)そんなに感染しないのかも知れません。パチンコなんて対面で話しながら興じるものではありませんし、みんな黙ってパチンコ台に向かって座っているわけです。行政も規制、規制ばかりでなく、手洗い、マスク(僕は必要ないという立場ですが)パチンコ店自体もお客さんをひとつ置きにするとか、窓や入り口は開放するとか営業継続するアドバイスをしてあげるとか歩み寄りがあってもよさそうな気がします。休業補償のことでも他の業種と違って融資を受けられない制度になっているとの報道もあり、上から目線だけでは解決しない問題かも知れません。他府県まで行くお客さんなどは、一部はギャンブル依存症という病気なので、自粛、自粛と連呼するだけでなく治療が必要なのかもしれません。

ギャンブル依存症

マスクは本当に必要か?

マスク議論については、以前から一貫して感染防御にマスクは効果がないという立場です。CDCも日本政府も当初は、マスクは無意味ですよと言っていたと思うのですが、いつのまにか、マスク必須に変わっていて、マスクをしないと何処にも行けないという雰囲気が、社会不安を増長してマスク不足に拍車がかかったという状況になってしまいました。日本の医療体制は世界に誇れると思ってはいますが、最前線で新型コロナウイルスと闘うために必要なガウンやマスクなどの資材の在庫があまりにも貧弱であったことが指摘されています。確かにマスクが十分にあるのなら、日本人はマスク大好きな国民なので、みなさんの不安解消のためにマスクを配るのもいいかもしれません。しかし、今、僕ら末端の診療機関や感染症指定医療機関などの病院などの新型コロナウイルス感染症との闘いの最前線の現場で、本当に必要なマスクが足らなくなっているということを考えるとやはり、順番が違うのではないか?、この現状を鑑みれば、まず、感染症指定医療機関などの絶対にマスクがなくては困る場所に十分量、配布した上で(それこそ政治的な強制力をもってできないものでしょうか)余裕があるなら市中でなにも症状のない人にマスクを供給すればいいと思います。世界から見れば、これだけ押さえ込むのが難しい新型コロナウイルスをロックダウンもせずに、こんなちぐはぐな政策をとりながらもおおむねうまくいっている。ほかの国の現状を考えると、患者数も死亡率も低く抑えられている事実は、なにか日本人特有の習慣や特性などのファクター(高い衛生意識やBCGなど)が取りざたされていますが、マスクの取り扱いについてもCDCも方向転換しており、今後一考の余地があるのかもしれません。マスクの効果があるとすれば、近い距離で大きな声で話をするだけでも感染するウイルスですので、自分が新型コロナウイルスにかかっているかもしれない(特に医療従事者は感染機会が多い)リスクがあるわけです。インフルエンザは、高熱が出て、体が痛いなどで自分が罹患したことを自覚できて、それからマスクをしても間に合うわけですが、新型コロナウイルスは、発病(咳や熱などの症状がでる)する2日前から人に感染させるウイルスです、さらに感染しても症状のでない人もたくさんいます(特に若い人)つまり、自分が咳がでるからマスクをしようでは間に合わないわけです。感染が拡大している地域に住んでいる場合は、さらなる感染拡大を予防するためには、自分が新型コロナウイルスにかかっていることを想定して常にマスクをつけておくことが必要なのかもしれません。もともとマスクが効果がないというエビデンスも状況証拠の積み重ねです。(エビデンスレベルは低い)効果があることも証明されているわけではありませんが、マスコミも政府も(医療界も)その方向に舵ときった今、エビデンスがどう、科学的にといっても始まりません。マスクは感染防御に効果がないという立場でマスクをしないのであれば、同時に相手もマスクをしていても感染防御に効果がないことを考えれば、自分が新型コロナウイルスに罹患していることを完全には否定できない状況で、自分がマスクをしないことで、相手がマスクをしていても感染させてしまうと考えれば、公共の場ではマスクを着用するのは、社会人のマナーとして定着するのは仕方がないでしょうね。

マスク

岩田健太郎先生に賛成 or 反対?

僕は岩田先生あっぱれ!と言いたい。神戸大学の岩田先生がクルーズ船内部の状況についての動画をYouTubeで公開(本人は不本意ながら2日で削除)されたのはびっくりしましたが、ダイヤモンドプリンス号で何が起こっているのかやっとわかって、みなさんガッテンガッテンしたんではないでしょうか。なにせ、クルーズ船の中は、あれよあれよという間に感染が広がって、中国の武漢よりひどい状態になっていました。まさに、船内はコロナウイルスで炎上して誰も手をくわえて見ているだけがつけられないって感じ、高山先生も医学的な対策や現状の評価については否定していない、つまりクルーズ船の対応は失敗ということは認めているわけで、事務にどう説明してやったらできるかが大事と言いたいことはわかるけど、どうしてこういう状況になってしまったのかをみんなは知りたかったわけで、ゾーニングが無茶苦茶だったわけねって。そのために、あってはならない厚生労働省の職員2名、検疫官2名、救急隊員1名、看護婦1名と次々に感染が明らかになりました。2003年のSARSに始まり、MARS、新型インフルエンザと感染症対策の問題を先送りにしてきたつけがまわった感じですね。日本には未だCDC(疾病予防管理センター)のような感染症に対応する専門機関がなく、厚労省の役人主導になっているわけです。確かに日本のトップの頭脳明晰な集団であることは否定しませんが、常時感染症対策だけやっているわけでなく、いつもは健康、医療、子ども、子育て、福祉、介護、雇用、労働、年金などの膨大な仕事に忙殺されているわけで、今回、突如湧きでた新型コロナへの対応を短期間でそれも少人数でこなせというのはそもそも酷な注文です。橋本学副大臣も一生懸命やっていたんだと思います。しかし、突然飛び込んできたやんちゃな人にダメ出しをくらって、パニクったわけです。クルーズ船というのは閉鎖的な空間にたくさんの人がいて、おまけに高齢者が多い。非常に感染しやすく、リスクも高い。感染症対策上は下船させることが正しくても、実際には周辺の医療機関にそれだけの受け入れる能力がなければ、ただ下船させるというわけにはいかないため、感染リスクが高いクルーズ船の中に14日間とどめ置いて検疫をするという判断を日本政府は行いました。そういう判断をしたのであれば、船の中の感染対策は完璧にする必要がありました。官僚の頭の中、机上では、こんな感じで大丈夫と思っていた清潔ルート・不潔ルートの感染対策は、グローバルな視線の批判的吟味に耐えられず、墓穴をほった恰好になってしまいました。アメリカやカナダ、韓国、イスラエルなども見るに見かねて、自国民をダイヤモンドプリンセス号から連れて帰って2週間の隔離をしている対応を見ていると日本のことを全く信用していないのは一目瞭然ですね。ところが日本は、14日間検疫やったからいいじゃないかということでそのまま下船させてしまいました。つまり、PCR検査が陰性になったので下船を許可したわけですが、PCR検査陰性という結果の解釈じたいが間違っているわけです。PCR検査は感度が50%しかありません。特異度は高いので陽性に出れば新型コロナウイルスに感染していると判断しても言い訳ですが、陰性=感染していないとはならないわけです。クルーズ船という、まさに三密の空間に高齢者がたくさんいて、感染のリスクも高い。こんな集団は、PCR検査が陰性でも、さらに言うならば、実はPCR検査をする必要もなかった、せずに全員感染しているかもしれないとして、下船後さらに14日間の経過観察が必要でした。あんなに長くクルーズ船に閉じ込められて、さらに14日間はかわいそうとういう感情と科学的に必要と言うことは別に考えなくてはいけません。下船後、スポーツクラブに行った人の感染がわかり、臨時休館せざるをえなくなった。周辺の人の検証もしなくてはならなくなりました。新型コロナ禍も落ち着けば、喉元過ぎれば熱さを忘れるではありませんが、日本版CDCを作るという話がどこかに行ってしまわないようにしてほしいものです。誰もが初めてのことなので、実際の正解はわからない状況で、政府や専門家委員会のえらい先生方の打ち出す対策がどこが政治的な話でどこからが科学的な話なのかがわからないことがあります。岩田先生以外の感染症専門の本当の現場で活躍されている先生方が、今回のコロナウイルス感染症のいろいろな問題についてどう思われているのか正直なところを聞いてみたいです。また、プライマリーケア学会などで本音を聞けるのを(自分の答え合わせ)楽しみにしています。

 

日本経済新聞(新型コロナウイルス感染)世界地図によると、世界170カ国以上に広がり、令和2年5月23日現在、感染者数512万7853人 死者数 33万5751人となっています。

 

Q & A

 

Q:新型コロナワクチンとそれ以外のワクチンは、どのくらい間隔をあければ可能ですか
A: 新型コロナワクチンとその他のワクチンは、互いに、片方のワクチンを受けてから前後2週間、間を開けて接種して下さい。原則として、新型コロナワクチンとそれ以外のワクチンは、同時に接種できません。(例) 4月1日に新型コロナワクチンを接種した場合、他のワクチンを接種できるのは、4月15日(2週間後の同じ曜日の日)以降になります。前も2週間です。なお、創傷時の破傷風トキソイド等、緊急性を要するものに関しては、例外として2週間を空けずに接種することが可能です。
Q:1回目のワクチンを打った後、ファイザーのワクチンは通常、3週間後に接種することになっていますが、どのくらいずれても大丈夫ですか。
A:ファイザー社のワクチンは、標準として、1回目から3週間後(3週間後の同じ曜日)に2回目を接種することになっています。一番早くて19日後(木曜日に1回目の接種を受けた場合、3週間後の火曜日)に接種を受けられますが、それより前には受けることができません。接種できる間隔の上限が定められているわけではありません。なお、標準の接種間隔を超えた場合のデータは限られているものの、効果は期待できることから、WHO、米国や、EUの一部の国では、3週間を超えた場合でも、1回目から6週間後までに2回目を接種することを目安として示していますので、こうした目安も参考になると考えられます。12週後に接種しても十分な抗体が得られたという報告もあるようです。
Q:1回目のワクチンを打った後、3日後に新型コロナウイルスに罹患してしまいました。自宅療養で治療しすぐ軽快、14日で隔離解除になっています。2回目の接種は1回目から3週間後にしても大丈夫ですか。
A:急性疾患(新型コロナウイルス感染症も含む)に罹患した場合、1〜2週間経過して体調が良ければ、ワクチン接種は可能です。1回目接種から3週間後の時点で元気であれば、そのまま2回目の接種をしても大丈夫です。
Q:ワクチン接種の際、接種途中で、注射器と針の接続が甘く、液漏れし、充分な接種量が、確保できていないと考えられる場合の対応はどうしたらいいでしょうか。
A:ワクチンが、0.3ccの半量以上入ったようならそのままで対応、もし0.3cc半量未満しか入ってないようなら(実際どのくらい入ったか判断するのは難しいと思いますが)同日(続きで)0.15cc追加接種する事例が多いとのことです。(開発先生が厚生省の新型コロナワクチン相談窓口に電話して聞いてくれました)
Q:抗SARS-CoV-2モノクロナール抗体(ソトロビマブ:セビュディ)投与とワクチンはいつ打てばいいでしょうか。
A:以前は90日以上の間隔を空けることが推奨されていたが、現在では関係なくワクチン接種をしても問題ないと考えられている。

 

治療(令和4年6月現在

2021年末から始まった新型コロナウイルス変異株・オミクロン株の流行は現在も続いている。オミクロン株は、5つの系統(BA.1、BA.2、BA.3、BA.4、BA.5)に分類される。オミクロン株の流行が始まってから数か月間は、BA.1系統に属する株が世界の主流だったが、その後BA.2系統への置き換わりが進み、7月以降、国内を含む多くの国々でBA.2系統からBA.5系統への置き換わりが急速に進んで第7波に突入したところです。

COVID-19に対する薬物治療は、重症度と発症からの時間経過で治療薬を検討することになっていて、発症後数日はは多くの患者さんは軽症でウイルス増殖し、そして発症後7日前後からはウイルス量はだんだん減ってきますが、宿主免疫による炎症反応が主病態になって肺炎になって呼吸不全へと進みます。したがって、発症早期には抗ウイルス薬又 は中和抗体薬、そして徐々に悪化のみられる発症7日前後以降の中等症・重症の病態では抗炎症薬の投与が重要となります。ここでの重症度は、軽症は肺炎がなく酸素投与が必要のない状態、中等症は肺炎があるかSpO2 94%未満又は酸素投与が必要な状態、 重症は人工呼吸管理やECMOを要する状態を指します。具体的な治療薬の選択は、臨床試験で示された治療効果、発症からの日数、内服薬か注射か、薬の相互作用、流通制限の有無などを考慮して最終的に決定します。

 

(新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する薬物治療の考え方 第13版)

 

軽症から中等症

 

軽症から中等症のCOVID-19患者さんで重症化リスクのある場合で、N IHのガイドラインで有用性が認められているのは

(1)ニルマトレルビル/リトナビル(パキロビッドパック)抗ウイルス薬
(2)ソトロビマブ(ゼビュディ点滴静注)中和抗体薬
(3)レムデシビル(ベクルリー点滴静注)抗ウイルス薬
(4)モルヌピラビル(ラゲブリオカプセル)抗ウイルス薬

注)カシリビマブ/イムデビマブ(ロナプリーブ)中和抗体薬は、濃厚接触者の発症抑制にも使用できたが、オミクロン株(BA-1)には効かないので使用できない。

現時点での第一選択は、パキロビッドパック(ベクルリー点滴静注は入院が前提)、ゼビュディ点滴静注はオミクロン株に対する効果減弱のおそれあり、ラゲブリオカプセルはその他の薬剤が使用できない場合に処方(既感染者には無効なので、ワクチン接種者も効果は期待できないかも)但し、重症化予防のエビデンスは、アルファ〜デルタ株流行期に行われたもので、正直、重症化リスクの低いオミクロン株での効果は分かりません。

 

(1)ニルマトレルビル/リトナビル(パキロビッドパック)

ニルマトレルビルは、SARS-CoV-2 のメインプロテアーゼに作用し、その働きを阻害 することによりウイルスの増殖を阻害する。リトナビルは、ニルマトレルビルの代謝を遅ら せ、体内濃度をウイルスに作用する濃度に維持する目的で併用される。プラセボ対照二重盲検RCT(EPIC-HR試験 NEJM:デルタ流行期)において、高リスク群(ワクチン未接種群を含む)に対し28 日目までの入院又は死亡の相対的リスクが 88%減少した。禁忌でなければ、第一選択です。既往があっても効果あり。

(1)重症化リスクのある患者(薬により若干異なる)
(2)軽症から中等症I(無症状患者は適応でない、また重症度の高い COVID-19 患者に対する有効性は確立していない。なお、重症度が高いとは、概ね中等症II以上が該当)
(3)発症から5日以内に投与開始
(4)重度の腎機能障害患者(eGFR 30mL/min 未満)透析患者への投与は推奨しない。
中等度の腎機能障害患者(eGFR30mL/min 以上 60mL/min 未満)には、投与量を減量
(5)活動性肝炎の既往あり(HBV、 HCV、PBCなど)
(6)併用禁忌薬(併用注意薬)いっぱいあり。

(1)次に掲げる重症化リスク因子を有する者が、本剤を投与する意義が大 きいと考えられる。60 歳以上、BMI 25kg/m2 超、喫煙者(過去 30 日以内の喫煙があり、かつ生涯に 100 本以上の喫煙がある) 免疫抑制疾患又は免疫抑制剤の継続投与 ・慢性肺疾患(喘息は、処方薬の連日投与を要する場合のみ) ・高血圧の診断を受けている ・心血管疾患(心筋梗塞、脳卒中、一過性脳虚血発作、心不全、ニトログリセリンが処方された狭心症、冠動脈バイパス術、経皮的冠動脈形成術、頚動脈内膜剥離術又は大動脈バイパス術の既往を有する)、1 型又は 2 型糖尿病、限局性皮膚がんを除く活動性の癌慢性腎臓病 ・神経発達障害(脳性麻痺、ダウン症候群等)又は医学的複雑性を付与するその他の疾患(遺伝性疾患、メタボリックシンドローム、重度の先天異常等) ・医療技術への依存(SARS-CoV-2 による感染症と無関係な持続陽圧呼吸療法等)、等

(6)併用禁忌薬
アゼルニジピン(カルブロック)オルメサルタン メドキソミル(オルメテックアミオダロン、ベプリジル(べプリコール)フレカイニド(タンボコール)プロパフェノン(プロノン)キニジン、リバーロキサバン(イグザレルト)ジアゼパム(セルシン)クロラゼプ(抗不安薬)エスタゾラム(ユーロジン)フルラゼパム(抗不安薬) トリアゾラム(ハルシオン)ミダゾラム(麻酔薬)リファブチン(抗結核薬)リファンピシン、アンピロキシカム(NSAID)ピロキシカム(NSAID)エレトリプタン(レルパックスエルゴタミン酒石酸塩・無水カフェイン・イソプロピルアンチピリン(クリアミン)カルバマゼピン(テグレトール)フェノバルビタール、フェニトイン(アレビアチン)ホスフェニトイン(抗てんかん薬)ブロナンセリン(SDA)ルラシドン(SDA)ピモジド(SDA)エルゴメトリン(子宮収縮薬)ジビドロエルゴタミンメシル酸塩、メチルエルゴメトリン(子宮収縮薬)シルデナフィル(PDE5阻害薬)タダラフィル(PDE5阻害薬)バルデナフィル(PDE5阻害薬)ロミタピド(MTP阻害薬)ベネトクラクス(抗悪性腫瘍薬)リオシグアト(血管拡張薬)ボリコナゾール(抗真菌薬)アパルタミド(ホルモン療法薬)セイヨウオトギリソウ(St. John’s Wort、セン ト・ジョーンズ・ワート)含有食品

   併用注意薬
アムロジピン、ジルチアゼム(ヘルベッサー)フェロジピン(Ca拮抗薬)ニカルジピン(ペルジピン)ニフェジピン(アダラート)ニトレンジピ ン(バイロテンシン)ニルバジピン(ニバジール)ベラパミル(ワソランジゴキシンアトルバスタチン(リピトール)シンバスタチン(リポバス)ロスバスタチン(クレストールワルファリンテオフィリンクラリスロマイシン、エリスロマイシン、サルメテロール(セレベント)フルチカゾン(フルタイド)ブデソニド(パルミコート)トリアムシノロンアセトニド(ケナコルト)ロペラミドラモトリギン(抗てんかん薬)バルプロ酸ナトリウム(デパケンシルデナフィル(バイアグラ)タダラフィル(シアリス)アルプラゾラム(ソラナックスデキサメタゾン、キニーネ、クエチアピン(セロクエルトラゾドン(レスリンブ ロモクリプチン(パーロデルイトラコナゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール、フルコナゾール、ホスフルコナゾール(抗真菌薬)タバココルヒチン、フェンタニル、リドカイン、グレカプレビル水和物・ピブレンタスビル(抗C型肝炎治療薬)ゲフィチニブ(イレッサ)ダサチニブ、ニロチニブ、アファチニブ、イブルチニブ、エンコラフェニブ(分子標的薬)ビンブラスチン、ビンクリスチン、イリノテカン、タモキシフェン、トレミフェン、エベロリムス、ベネトクラクス(抗悪性腫瘍薬) ボセンタン(エンドセリン拮抗薬)シクロスポリン、タクロリムス(免疫抑制薬)エチニルエストラジオールエストラジオール安息香 酸エステル(ホルモン療法薬)ジドブジン、ネビラピン、エファビレンツ、エトラビリン、アタザナビル、マラビロク(抗HIV薬)

通常、成人及び12歳以上かつ体重40 kg以上の小児には、ニルマトレルビルとして1回 300 mg 及びリトナビルとして 1 回 100 mg を同時に 1 日 2 回、5 日間経口投与する。中等度の腎機能障害患者(eGFR[推算糸球体ろ過量]30mL/min 以上 60mL/min 未満)に は、ニルマトレルビルとして 1 回 150mg 及びリトナビルとして 1 回 100mg を同時に 1 日 2 回、5 日間経口投与すること。重度の腎機能障害患者(eGFR 30mL/min 未満)への投与 は推奨しない。

本剤は、現状、安定的な入手が可能になるまでは、一般流通は行われず、厚生労 働省が所有した上で、対象となる患者が発生した医療機関及び薬局からの依頼に基づき、無償で譲渡される。

 

(2)ソトロビマブ(ゼビュディ点滴静注)

ソトロビマブ(ゼビュディ点滴静注液 500mg)はSARS(重症急性呼吸器症候群)に感染した患者から得られた抗体を基にした抗SARS-CoVモノク ローナル抗体であり、SARS-CoV-2を含むベータコロナウイルス属サルベコウイルス亜属 (Sarbecovirus)に対して抗ウイルス作用を発揮することが期待されている中和抗体薬である。中和抗体薬は、発症から時間の経ってい ない軽症例において重症化を抑制する効果が示されている。プラセボ対照二重盲検RCT(COMIT-ICE JAMA アルファ流行期)において、高リスク群(ワクチン未接種群を含む)に対し28 日目までの入院又は死亡の相対的リスクが 80%減少した。重症化予防効果は高いが、ワクチン接種者へに効果は検討されておらず、BA-2への効果は低くなっており、現在は使いにくい薬剤になっている。

(1)重症化リスクのある患者(薬により若干異なる)
(2)軽症から中等症I(無症状患者は適応でない、また重症度の高い COVID-19 患者に対する有効性は確立していない。なお、重症度が高いとは、概ね中等症II以上が該当)
(3)発症から7日以内に投与開始

通常、成人及び 12 歳以上かつ体重 40 kg 以上の小児には、ソトロビマブ(遺伝子組換え) として 500 mg を単回点滴静注する。

 

(3)レムデシビル(ベクルリー点滴静注)

レムデシビル(ベクルリー点滴静注用100 mg)はRNAウイルスに対し広く活性を示すRNA依存性RNAポリメラーゼ阻害薬で、元来はエボラウイルス感染症の治療薬として開発されたが、in vitroでSARS-CoV- 2 に対し良好な活性を示す。プラセボ対照二重盲検RCT(NEJM アルファ流行期)において、発症から7日以内の重症化リスクのある酸素投与を要しない非入院 COVID-19患者を対象にレムデシビル(1日目に200 mg、2日目及び3 日目に100 mg)に対し28 日目までの入院又は死亡の相対的リスクが 87%減少した。

(1)重症化リスクのある患者(薬により若干異なる)
(2)中等症以上(軽症での投与は適応外使用3日間 重症化予防)
(3)発症から7日以内に投与開始
(4)最低3日間の点滴が必要なため入院が前提。一般流通している(薬価収載済 100mg  63342円)

 

通常、成人及び体重40 kg以上の小児にはレムデシビルとして、投与初日に200 mgを、投与2日目以降は100 mgを1日1回点滴静注する。通常、体重3.5 kg以上40 kg未満の小児にはレ ムデシビルとして、投与初日に5 mg/kg を、投与2日目以降は2.5 mg/kgを1日1回点滴静注す る。なお、総投与期間は10日までとする。現時点での適応は肺炎を有するCOVID-19患者。 生理食塩液に添加し、30分から120分かけて点滴静注すること。目安として、5日目まで投与し、症状の改善が認められない場合には10日目まで投与する。レムデシビルはすでに挿管や高流量の酸素投与に至った重症例で は効果が期待できない可能性が高いが、サブグループ解析の結果からは、そこまでに至らな い酸素需要のある症例では有効性が見込まれる。投与期間に関しては、原則として5日間の投与が推奨されるが、個々の患者の背景に応じた判断を行う。高齢者施設などで治療を余儀なくされる時は、レムデシビル3日間投与を考慮(1日目に200 mg、2日目及び3 日目に100 mg)

 

(4)モルヌピラビル(ラゲブリオカプセル)

モルヌピラビル(ラゲブリオカプセル 200 mg)モルヌピラビルは、リボヌクレオシドアナログであり、SARS-CoV-2 における RNA依存性 RNA ポリメラーゼに作用することにより、ウイルス RNA の配列に変異を導入し、 ウイルスの増殖を阻害する。プラセボ対照二重盲検RCT(NEJM アルファ〜デルタ流行期)において、重症化リスク群に対し28 日目までの入院又は死亡の相対的リスクが 30%減少した。Sibgroup解析で既感染者では効果がない(ワクチン接種者へも効果薄?

(1)重症化リスクのある患者(薬により若干異なる)
(2)軽症から中等症Iの患者(重症度の高い COVID-19 患者に対する有効性は確立していない。なお、重症度が高いとは、概ね中等症II以上が該当)
(3)発症から5日以内に投与開始
(4)腎機能や肝機能を気にせず、内服可能(カプセルが大きく、1日8カプセル)
(5)小児や妊婦には使用できない。
(6)他の薬剤が使用できない場合のみ適応。
(7)副作用 下痢、嘔気、めまい

(1)COVID-19 の重症化リスク因子を有するものとして、61 歳以上 ・活動性の癌(免疫抑制又は高い死亡率を伴わない癌は除く) ・慢性腎臓病 慢性閉塞性肺疾患 肥満(BMI 30kg/m2 以上) ・重篤な心疾患(心不全、冠動脈疾患又は心筋症) 糖尿病 ダウン症 脳神経疾患(多発性硬化症、ハンチントン病、重症筋無力症等) ・コントロール不良の HIV 感染症及び AIDS 肝硬変等の重度の肝臓疾患 臓器移植、骨髄移植、幹細胞移植後

通常、18 歳以上の患者には、モルヌピラビルとして 1 回 800 mg を 1 日 2 回、5 日間経口投与する。

 

重症(肺炎あり、SpO2 95%以下)

(5)デキサメタゾン

重症COVID-19患者は、肺障害および多臓器不全をもたらす全身性炎症反応を発現する。コルチコステロイドの抗炎症作用によって、これらの有害な炎症反応を予防または抑制する可能性が示唆されている。酸素投与していない患者さんに対する副腎ステロイドは効果がないことが示されているため(むしろ予後は悪くなる可能性があり、90日死亡の上昇を示した観察研究もある)デキサメタゾンは投与しない。プラセボ対照二重盲検RCT(RECOVERY試験 NEJM)において、呼吸不全を呈する重症COVID19患者高リスク群の28 日死亡を優位に減らした(22.9% vs 25.7%)人工呼吸器を使用していない患者さんの場合、人工呼吸器導入リスクも減少。致死率改善効果は重症度が高いほど大きい。

入院できない医療環境で、SpO2が93%以下になった場合は、投与が検討される。(在宅酸素施法中にデキサメタゾン6m/日最長10日間)高血糖に注意が必要である。

デキサメタゾンとして6 mg 1日1回 10日間(経口、静注) 静注:デキサート注射液6.6 mg/2mL 1バイアル全量
1) 40kg未満ではデキサメタゾン0.15 mg/kg/日への減量を考慮する。
2) 妊婦・授乳婦にはデキサメタゾンは使用しない。コルチコステロイド投与が必要な場合、プレドニゾロン40 mg/日を考慮する。
3) 高血糖に注意

 

(6)バリシチニブ

バリシチニブ(オルミエント)はヤヌスキナーゼ(JAK)ファミリーのJAK1及びJAK2分子に高い選択性を有するJAK阻害薬であり、国内では関節リウマチに適応があり、2021年4月、COVID19患者に対する保険適応が認められた。プラセボ対照二重盲検RCT(COV-BARRIER試験 Lancet)において、副腎皮質ステロイドを使用している重症肺炎を呈しているCOVID19患者(人工呼吸器使用している患者は除外)において、28 日死亡を有意に減少した(8.1% vs 13.1%)サブグループ解析において、高流量鼻カニュラ酸素療法、非侵襲的換気を使用していた群で28 日死亡を有意に減少した(17.5% vs 29.4%)

通常、成人にはレムデシビルとの併用にて、バリシチニブ4 mgを1日1回経口投与し、総投与期間は14日間まで。腎不全患者では減量が必要。(eGFR>60:4mg/日、30<eGFR<60:2mg/日)

注)投与前には結核・非結核性抗酸菌症やB型肝炎のスクリーニングが推奨されている。

 

(7)トシリズマブ

トシリズマブ(アクテムラ点滴静注)は、ヒト化抗ヒトIL-6受容体モノクローナル抗体で、インターロイキン-6(IL-6)の作用を抑制し免疫抑制効果を示す分子標的治療薬である。関節リウマチなどの膠原病疾患に使用される薬剤であるが、国内外で新型コロナウイルス感染症の治療の有効性について検討が行われてきた。プラセボ対照二重盲検RCT(REMAP-CAP試験)において、重症呼吸不全を呈しているCOVID19患者(高流量鼻カニュラ酸素療法、非侵襲的換気、人工呼吸器使用中)ICU入室24時間以内、副腎皮質ステロイドを併用している重症患者の病院死亡が減少(28% vs 36%)プラセボ対照二重盲検RCT(RECOVERY試験)においても、28 日死亡を有意に減少した(31% vs 35%)

通常、成人には、副腎皮質ステロイド薬との併用において、トシリズマブ(遺伝子組換え) として1回8 mg/kg(max800mg)を単回、点滴静注する。現時点では2回目の投与は推奨されていない。

B型肝炎と結核のスクリーニングを検討する。2022年1月、酸素投与を要するCOVID19患者に対するトシリズマブの投与が保険収載された。

 

(8)ヘパリン

入院中のCOVID19患者(特にICU入室患者)は、深部静脈血栓症/肺塞栓症の発生リスクが高いことが知られています。予防投与として入院患者さんに対して、未分画ヘパリン1回5000単位1日2回皮下注射(酸素投与終了かつ歩行可能になるまで)外来患者さんに対する抗凝固療法は推奨されない。

 

その他、取り沙汰されて消えて行ったお薬として、

ファビピラビル(アビガン) メタ解析(9つの比較試験)で症状改善、死亡とも効果なし。

イベルメクチン(抗寄生虫薬) 症状、重症化、死亡とも効果なし。効果ありとされたメタ解析もあったが、データ改ざんで撤回された論文などが含まれたおり無効。

ブデソニド(パルミコート) 症状の改善が早まる?

シクレソニド(オルべスコ) 症状の改善、入院、死亡 全て効果なし

回復期血漿 呼吸不全を呈しているCOVID19患者さん(人工呼吸器管理中の患者さんは除外)に対する呼吸改善、死亡抑制効果はなし。

 

後遺症

新型コロナウイルスに感染した後、1ヶ月以上様々な症状が続くことがあり、海外では「LONG COVID」「Post COVID」などと呼ばれていますが、日本国内では「後遺症」と呼ばれています。新型コロナ後遺症の定義は国内では定まったものはありませんが、海外では「発症から4週間経っても続く症状」を後遺症と定義しているものもあります。

新型コロナ後遺症が起こる原因についてはまだ多くが未解明ですが、単一の病態ではなく、4つの病態が複合的に絡み合った病態ではないか、と考えられています。(1) 肺、心臓への恒久的障害 (2) 集中治療後症候群(post intensive care syndrome:PICS) (3) ウイルス後疲労症候群(post-viral fatigue syndrome) (4) 持続する新型コロナの症状、これらがオーバーラップしていると考えられています。その他、発症から6ヶ月後まで脳梗塞、脳出血のリスクが高くなるとも言われています。

 

新型コロナ後遺症でみられる症状(筆者作成)忽那賢志作

診断後から退院時まで、3ヶ月後、6ヶ月後にみられた症状の頻度(厚生労働科学研究班)

診断後から退院時まで、3ヶ月後、6ヶ月後にみられた症状の頻度(厚生労働科学研究. 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の長期合併症の実態把握と病態生理解明に向けた基盤研究(福永班)より)

新型コロナ後遺症の頻度は報告(慶応)では、診断から3ヶ月経過した後も1割以上の人にみられた症状は、疲労感・倦怠感、息苦しさ、脱毛、嗅覚障害、筋力低下、睡眠障害、思考力・集中力の低下でした。

大阪府新型コロナ受診相談センターに相談のあった後遺症の症状の頻度と重症度(第58回大阪府新型コロナウイルス対策本部会議 大阪府新型コロナウイルス感染症 後遺症への対応について)

基本的に新型コロナ後遺症の症状は、時間とともに消失していくと考えられています。後遺症の症状は、急性期に重症度が高かった人ほど長期に続くようです。またイギリスの携帯アプリを用いた調査では、新型コロナに感染した4182人のうち558人(13.3%)が28日以上、189人(4.5%)が8週間以上、95人(2.3%)が12週間以上症状が続いていました。この調査では、後遺症は、高齢者、肥満、女性、発症時の症状が5つ以上あるといった人で起こりやすいということが分かりました。

新型コロナ後遺症は、軽症だった人でも決して稀ではありません。自宅隔離となった軽症の新型コロナ患者247人と入院患者65人を含む312人の患者の後遺症に関する調査で、発症から6ヵ月経過しても全患者の61%で何らかの症状が持続しており、この後遺症の頻度は、重症度とは関係なくみられたとのことです。16~30歳の若年層の52%が6ヵ月後になんからの症状を呈しており、味覚や嗅覚の喪失(28%)、疲労感(21%)、呼吸困難(13%)、集中力の低下(13%)、記憶障害(11%)などの症状が認められました。

大規模な観察研究では、診断時に無症状であった人でも倦怠感などの後遺症の症状がみられることがあるようです。小児でも新型コロナ後遺症が起こることはありますが、その頻度は大人と比べると低く、持続期間も短いと考えられています。イギリスの携帯アプリを用いた調査では、1734人の小児の症状の持続期間は、発症から28日後に症状が持続していたのはわずか4%、56日後では2%でした。28日時点で最も多かった症状は、頭痛、疲労感、嗅覚障害で、長期化した症例の多くは年長児に見られました。

これらの症状に対して、どう対応するかについての診療の手引きが厚労省より罹患後症状のマネジメントとして、2021年12月に発刊されています。呼吸器症状、循環器症状、臭覚・味覚症状、神経症状、精神症状などへのアプローチについて、それぞれ診療のフローチャートで専門医、拠点病院への紹介の目安、タイミングなどが示されているので、参考にしてできることをやっていくしかなさそうです。

新型コロナワクチンを2回接種した人では、発症から28日時点でも症状が続いている人の割合が減少していたと報告されています。新型コロナワクチンを接種しても感染してしまうことはありますが、後遺症が起こるリスクを下げることができます。また、新型コロナ後遺症を確実に回避するには、新型コロナに感染しないようにするしかありません。

 

5類感染症移行後の対応について

新型コロナウイルス感染症の位置づけは、これまで、「新型インフルエンザ等感染症(いわゆる2類相当)」としていましたが、令和5年5月8日から「5類感染症」になりました。

 

第7波までの死亡者数・致死率

2021年7月のデルタ株による第5波以降、致死率が大きく低下しています。この波は、多くがワクチン接種を完了していたため、被害が小さかったと思われます。救急医療は逼迫しましたが、死亡者数が少なかったのは不幸中の幸いでした。2021年12月以降、オミクロン株による第6波が始まりました。死亡者数が1万2,000を超えたものの、致死率は0.17%に半減しました。若年層への感染が多かったことに加えて、ウイルス自体が弱毒化していたことと、経口治療薬が使用されることになったことなど、複合的な要因が考えられます。第7波でも、過去最大規模の約1万2,000人の死亡者数を記録したものの、致死率は0.11%とパンデミック当初の16分の1にまで低下しました。

 

ワクチンはどのくらいの死亡を防いだか

新型コロナワクチンの有効性が高ければ、接種率が高いほど死亡者数が少なく、接種率が低いほど死亡者数が多くなるという相関関係になります。日本人口の3分の2以上がワクチンを3回以上接種しています。国際的にみても高い接種率を誇る国です。デルタ株およびオミクロン株の流行があった期間において、2回以上のワクチン接種率、新型コロナによる死亡者数、超過死亡数を比較したデータがあります。アメリカの中で、接種率が高い州と低い州についての比較でアメリカのワクチン接種率が低い州では死亡者数が多いことが分かりました。接種率が高い10州と低い10州を比べると、死亡者数に2倍の差がありました。この論文では「アメリカのワクチン接種がもう少し進んでいれば、最大で約36万人の命が救えた可能性がある」と言われています。世界185の国・地域を対象に、新型コロナワクチンが存在しなかったと仮定した場合の死者数を予測した研究があります。これによると、2021年にワクチンが無かったら3,140万人の超過死亡が生じたと推定されており、このうち1,980万人の死亡をワクチンが防いだとされています。ワクチンによる感染予防効果だけでなく、医療逼迫が回避できたことによる間接的な効果も加味されています。