ワーファリン

【禁忌】妊婦、グラケー(骨粗鬆症治療薬)

【用法・用量】1日1回 1〜5mg(半減期 60〜133時間)

【薀蓄等】

「血がさらさら」ってなんとなくよさそうな気がしますね。しかし、生きていくには、怪我しても血が止まらなくても困りますよね。反対に、血管内で血液が固まっても困るし、血管の中では、ちょうどいい塩梅でバランスをとっているわけです。

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一次止血と二次止血

血管が傷つくと、そこにVWF(フォン・ヴィレブランド因子)がくっつきます。次に血液中にある血小板が傷口に集まってきて、VWFを仲介して結合し、血小板同士は、フィブリノーゲンを介して重合して、血栓となり、傷口をふさぎます。これが一次止血(血小板血栓)と呼ばれます。

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血小板だけの血栓では、血を止めるには脆くて不安定なので、一次止血に引き続き、血液中の凝固因子と呼ばれる12種類の凝固因子が次々に反応を引き起こして、最後にフィブリン(第Ⅰ因子、フィブリノゲンが変化したもの)の網の膜を作って血小板血栓をおおい固めて、止血が完了します。これを二次止血(フィブリン血栓)と呼んでいます。

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この凝固因子の中で、第2(プロトロンビン)Ⅶ、Ⅸ、Ⅹ因子は、肝臓でビタミンKの存在下で、蛋白合成されるので、この4つの凝固因子をビタミンK依存性凝固因子と言います。

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前置きはこれくらいにして、ワーファリンの歴史についてお話しをしましょう。1920年代に北米で牛が関節や筋肉内に出血を起こして死んで行く病気が流行しました。よくよく調べると湿度の高い夏にスイートクローバーを食べた牛に起きていることがわかり、この原因不明の病気は出血性スイートクローバー病と呼ばれ恐れられました。1933年、ウィスコンシン大学のリンク博士はこの病気で死んだ牛の血液に興味を持ちます。5年もの歳月をかけて、腐ったスイートクローバーから数mg のジクマロールを単離しました。これをウサギに投与すると血液が固まらなくなることを確認し、ついに病気の原因が明らかになりました。1948年、リンク博士はジクマロールを基にして、より強力な作用を持つ化合物を創製します。こうして生まれたのがワルファリンです。この新しいクマリン骨格をもつ化合物は、リンク博士が研究を続けた機関である Wisconsin Alumni Research Foundation (WARF) とクマリン (coumarin) の語尾を合わせて Warfarin (ワルファリン) と名づけられました。当初、ワルファリンによる出血はコントロールが難しく致命的な作用を及ぼすため、主に殺鼠剤として使われていました。その後、プロトロンビン時間を調べる血液検査が迅速に行えるようになり、ワルファリンが人に対して使われるようになっていったのです。

ワーファリンの作用機序
ビタミンKは、ビタミンK依存性凝固因子(Ⅱ、Ⅶ、Ⅸ、Ⅹ)のグルタミン酸残基をγ-カルボキシル化することによって正常な凝固活性を有する蛋白となります。ワルファリンは肝細胞内で下記のビタミンKサイクルの酵素活性を非可逆的に失活させ、凝固活性を持たないPIVKA型凝固因子がたくさんできる。つまり第Ⅱ因子、プロトロンビンの出来損ない をPIVKAⅡということになります。

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ビタミンK依存性凝固因子(Ⅱ、Ⅶ、Ⅸ、Ⅹ)は4つあるわけですが、それぞれの半減期は大きく異なります。最も半減期の短いのは、第Ⅶ因子で数時間です。当然のことながら第Ⅶ因子が一番最初に枯渇します。プロトロンビン時間は、この第Ⅶ因子の欠乏状態を鋭く反映するので、ワーファリンのモニタリングに利用されるのは理にかなっているわけです。

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ワーファリンジレンマ

ビタミンKは、ビタミンK依存性凝固因子(VII, IX, X, II)およびビタミンK依存性凝固阻止因子のプロテインCとプロテインSを産生するのに必要なビタミンです。ワーファリンは、これらの因子を枯渇させることで効果を発揮します。つまり、抗凝固と凝固亢進といった相反する作用が起こります。ワーファリン投与後のすぐは、プロテインCは、半減期が短いため最も早く枯渇するため、投与後1日程度、一過性の過凝固状態となります。Ⅶ因子の半減期は4〜6時間で投与開始後すぐにPT延長するが、それはⅦ因子の分であり、Ⅱ因子の半減期が最も長く約3日あり、ワーファリンの十分な効果発現まで3日程度かかります。(平衡に達するのは7日程度必要)

先天性プロテインC欠損症(ヘテロ接合体:プロテインC活性が半減)の患者様に対して、ワーファリンを投与しますと、全てのビタミンK依存性凝固阻止因子活性が低下する前に、半減期の短いプロテインCが速やかに低下して0%に近づいてしまうと、著しい血栓性病態のことを、電撃性紫斑病(purpura fulminans)と言っています。皮膚の微小循環レベルで、DICと類似した著しい微小血栓が多発して血管が閉塞するために、二次的に紫斑を来します。

納豆、クロレラ、青汁などは、ワーファリンの天敵でビタミンKが大量にあると凝固因子の産生を邪魔しきれなくなります。

ビタミンKは、骨代謝に絶対必要なビタミン
様々な薬がワーファリンと相互作用(増強と減弱) NSAIDsや風邪薬を初め

ワーファリンがモニタリングができるので安全とは言えない
オーバーラップしている 安全域と



ワーファリンは、心房細動による脳塞栓症の予防のために内服します。心原性脳塞栓症の予防効果については、アスピリンを中心とする抗血小板薬よりもワルファリンを含む抗凝固薬で効果が高いことが複数の試験から示されています。ACTIVE W試験(メタ解析でも)では、心房細動患者6,706例を対象に、ワルファリンと抗血小板薬併用療法(クロピドグレル+アスピリン)の有効性(脳卒中、全身性塞栓症、心筋梗塞、血管死からなる1次エンドポイント発生率44%有意に低下)が証明されています。日本でもJAST試験で、心房細動患者の脳血管イベント発生率は、アスピリン群と無投薬群との間で差が認められず、アスピリンの効果は否定されています。

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ワルファリンの治療域は、PT-INR(プロトロンビン時間・国際標準化比)で2.0~3.0です。PT-INRがその治療域を下回れば、脳梗塞を防ぐことができませんし、治療域を上回れば頭蓋内出血が増加することが報告されています。

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INRは、1.6〜2.6(日本人 70歳以上)

血液のサラサラ度が、問題で、サラサラしすぎても、脳出血などの重篤な副作用が起こると大変だし、反対に、作用が弱くて血管内で血液が固まっては、元 も子もありません。1ヶ月に1回、血液検査をして、INRという指標で、ワーファリンの内服量を調節するのですが、ちょうどいい塩梅にコントロールするのが、結構、大変なのです。アジア人は、脳出血が多い民族で、日本人での至適INRは、70歳以上では、1.6〜2.6とされています。

05 INRと出血リスク

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最近、ワルファリンによるINRの良好なコントロールの指標としてTTR(Time in Therapeutic Range;PT-INRが治療域にある期間の割合)が使われています。これは、全投与日数に占めるINR目標達成期間の割合を示すもので、横軸に投与経過日、縦軸にINRをプロットして線で結びます。1例を挙げると、INR 2.0~3.0を目標としている患者では、273日のうち194日がその範囲内に入っておりTTRは71%と計算されます。

ワルファリンは、PT-INRを至適範囲内(2.0~3.0、我が国では70歳以上は1.6~2.6)に維持することによって、血栓・塞栓症に対する予防効果が期待できる薬剤です。そのためTTRを高く維持する必要があり、実際、TTRが高いほど累積生存率が高まるとの報告があります。同報告では、71%以上では極めて高い生存率になっていますが、臨床現場でPT-INRを目標治療域に長期間維持するのは難しいのが現状で、日本では欧米と異なり、外来を受診する頻度が高いので、ワルファリンのコントロールは比較的うまくいっているのではないか言われていましたが、実際は50%台と考えられています。(出血に対する恐れが強すぎて、PT-INRを低目に設定しているのかも知れません)TTRが50%程度であればワーファリンを処方されていない患者と比べて優位性はなく、最低でも60%以上の管理が必要とされています。

前述したACTIVE W試験では、ワルファリンを含む経口抗凝固薬群は、抗血小板薬2剤併用群より、脳卒中の発症リスクを有意に減少させていますが、TTR 別に解析すると、TTR<65%ではクロピドグレル+アスピリン群とワルファリン群間の有意差は消失しました。この結果をふまえて、最近の心房細動を対象とした臨床試験では、TTR≧60%が目標としています。

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Warfarinが効きすぎた時の対処

◎INRが5未満で臨床上大出血を認めない場合
ワーファリン減量もしくは休薬してINRが望ましい範囲に入ってから低用量で再開
◎INRが5~9の範囲で出血を認めない場合
1〜2回分のワーファリン投与を休薬し、INRが治療域まで低下してから低用量で再開
◎INRが9を超えても臨床上大出血を認めない場合
INRが24時間以内に低下することを見込んでビタミンK1 3~5mgを経口投与する。

◎重篤な出血またはワーファリンの重大な過量投与(例えばINR>20)のために速やかな中和が必要な場合
ビタミンK1 10mgを緩徐に静脈内投与し、緊急度に応じて新鮮凍結血漿または濃縮プロトロンビン複合体製剤を投与する。
◎緊急手術や抜歯を行うため急速な中和が必要な場合
24時間以内のINRの低下を見込んでビタミンK1 2~5mgを経口投与する。

ワーファリンを再開

我々、かかりつけ医の場合は、心房細動を管理し、脳塞栓症を予防するために、抗凝固療法を行っているわけで、その副作用(実は正当な作用)で消化管出血を起こすと、大変申し訳ないのですが、我関せぬことも多いわけですが、知らない間に、消化器内科の先生に丸投げしているわけです。そこで、内視鏡で止血処置などお世話になっております。消化管出血の後に、なるべく早くワーファリンを再開するほうがいいかな?っとなんとなくはわかっていますが、せっかく苦労して止血したのに、治療を再開してまた再出血させると消化器内科の先生に合わせる顔もありません。

研究デザインは,後ろ向き(retrospective study)コホート研究ですので、あしからず。対象:442人、ワルファリン再開の中央値は消化管出血後4日です。「再開、早いなぁ、勇気あるな」って感じです。消化管出血90日後で評価しています。

Figure (1)

A 全身の塞栓症はワルファリン再開群で明らかに少なかった。(0.4% vs 5.5%; ハザード比0.05, 95%信頼区間 0.01 – 0.58)

B 消化管出血の再発率ですが、数字上はワルファリン再開群で高いですが、統計学的有意差はありません。(10% vs 5.5%; ハザード比 1.32, 95%信頼区間 0.50 – 3.57)

C 死亡はワルファリン群で少なかった。(5.8% vs 20.3%; ハザード比 0.31, 95%信頼区間 0.15 – 0.62)

D 消化管出血から7日以内の死亡もワルファリン群で少なかった。(5.8% vs 20.3%; ハザード比 0.31, 95%信頼区間 0.15 – 0.62)

この研究は、観察研究なので、ワルファリンを再開しなかったという背景により重症だったなんて別の交絡因子が関与しているかも知れません。しかし、程度がひどくないと判断したら,早期にちゃんとワルファリンを再開したほうがよさそうですね。ちなみに、塞栓症は、消化管出血後、最短で8日目で生じているので、1週間以内に再開がよさそうです。

リアルワールドでは、まだまだトップシェア

2011年、NOACが世に出て5年、ワーファリンに比べ、出血性のイベントが少ないのははっきりしたエビデンスがあるにもかかわらず、リアルワールドでは、ワーファリンがまだまだトップシェアを稼いでいるのはどうしてでしょうか?

 



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多くの薬物との相互作用を有します。
ワーファリンの作用が減弱 テグレトール スピロノラクトン サイアザイド 制酸剤 緩下剤
ワーファリンの作用が増強 デパケン アスピリン プロノン アミオダロン ジゾピラミド ベラパミル ベサフィブラート プラバスタチン アルガトロバン シメチジン ラニチジン オメプラゾール メルカゾール 抗がん剤

ワルファリンへの影響が少ない薬剤を憶えておきましょう。

ボルタレン ブルフェン アセトアミノフェン インドメタシン ジキタリス フロセミド βブロッカー ACE阻害薬 ファモチジン アシノン インスリン

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食事の影響
ただ、海草類や緑黄色野菜などの、ビタミンKを含んでいる食品を、通常の食事で適量摂る場合は、ほとんど問題ないようです。むしろ、一切ビタミンKを摂らないことのほうが、栄養バランスが崩れ、健康上よくないといえます。しかし、納豆や青汁、クロレラなどは、ワーファリンの凝固抑制の働きをかなり弱めてしまうので、食事のメニューからはずしておきましょう。

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PIVKAⅡ(Protein Induced by Vitamin K Absence or antagonist)
凝固因子12種類のうちのⅡ(プロトロンビン),Ⅶ,Ⅸ,Ⅹの因子は,ビタミンKの存在下において肝臓で合成されます。だからビタミンKが不足すると、肝臓での4つの凝固因子の合成が正常に行われなくなり,異常な凝固因子ができてきます。この異常な凝固因子を protein induced by vitamin K absence or antagonist と言います。通常は PIVKA と略し,たとえばⅡ因子の場合は,PIVKAⅡと呼びます。PIVKAⅡという検査は、もともとは、ビタミンKが欠乏しているかどうかを調べる検査でした。ところが,ビタミンKの不足がなくても,肝細胞癌の多くは(約6割)正常な凝固因子を作れず,PIVKAⅡを産生することがわかりました。さらに、胆管細胞癌・転移性肝癌のような悪性疾患、血管腫・肝嚢胞・限局性結節性過形成のような良性疾患では、上昇せず鑑別に役立ちます。

抜歯時の対応は?
そのままで、ワーファリン内服継続下での施行が望ましいとされています。抜歯後の出血に対しては、ガーゼによる圧迫止血、抜歯後の適切な縫合等で適切に対応して頂ければ幸いです。

妊婦、胎児への影響は?
禁忌となっています。妊娠3〜9週までに服用した妊婦から生まれた子供の1/3が死産またはなんらかの異常をもって生まれたと報告されています。

出血性合併症への緊急の対応は?
ワーファリンを中止し、ビタミンKの投与、重症ならば、乾燥人血液凝固第Ⅸ因子複合体製剤(保険適応外)500〜1000単位や新鮮凍結血漿の投与も考慮する。

ワーファリン
2mgより開始し、2週間毎にPT-INRを測定し、2を目標に、1mg増量、PT-INR1.5で0.5mg増量、PT-INR1.6〜2.6で1ヶ月毎に測定。PT-INR>2.6で0.5mg減量、PT-INR<1.6で0.5mg増量。

Do No Harm

心臓病がなければ、Ⅰ群 だめなら、カテーテルアブレーションは、再発率が抗不整脈よりは全然有効。 0.2%死亡率、2〜3%の副作用あり。
WPW症候群やPSVTは根治術
何年持つかわかりません

1週間入院 、根治ではない。毎日に苦しい患者さんに

冠動脈疾患があり、アスピリンが切れない
心房細動があればワーファリン
高度の腎機能低下例 禁忌例
後遺症のため嚥下が難しい 認知症 脳塞栓は1/4

伏見スタディ
実施率 48% 重症度に変わりなし
アンダー