インクレミン

 

画像の説明【組成・性状】溶性ピロリン酸第二鉄(一般名)

       シロップ 5% 50mg/ml(鉄として6mg/ml)

【効能・効果】鉄欠乏性貧血

【用法・用量】1日量(6〜15歳 10〜15ml 1〜5歳 3〜10ml)

インクレミン 10ml 分2

 

【薀蓄等】本来は、小児用のシロップ剤であるが、これを大人に使います。鉄剤による消化器症状は、高齢者や男性では比較的少ないが、30〜50歳ぐらいの女性では多く見られる。鉄剤が飲めるかどうかが治療の分れ目で、その処方の仕方がとても重要です。フェロミア フェロ・グラデュメット、フェルムなどは、腹痛、悪心、嘔吐、下痢、便秘などの副作用がかなり多い。鉄剤を飲んで、一度でもこのような副作用を経験すると「鉄剤は、とても飲めない」と拒絶されてしまうことがよくあります。

鉄欠乏性貧血の診断で最も特異性の高い検査は、フェリチン低値です。小球性貧血と血清鉄低値だけでは、二次性貧血の場合もあり、鉄剤を使ってはいけない場合もあります。

長期間続く重症の鉄欠乏性貧血の患者さんでは、異味症がよくみられ、氷をガリガリかじる癖のある人がいます。ちょっと聞いてみましょう。

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鉄の吸収

鉄剤は低いpHでよく溶解する。胃内で胃酸の作用で3価鉄(第二鉄)還元されて2価鉄(第一鉄)イオンとなり吸収されるため、胃内のpHが上昇する食後よりも空腹時の方が吸収率は高いとされる。鉄イオンを2価の状態に保つためにビタミンCなどの還元剤を併用することも勧められるが、2価鉄イオンは胃の刺激が強く、胃腸障害などの副作用が出やすい。一般的には、投与量は少量(50mg/日)から開始し、100〜200mg/日で維持する。服用後、1ヶ月間は、1日0.1〜0.2g/dlの割合で、その後もなだらかに増加する。

フェロ・グラディメット

フェロ・グラディメット

【組成・性状】乾燥硫酸鉄(一般名)錠105mg(剤形)

【効能・効果】鉄欠乏性貧血

【用法・用量】1日1〜2錠 1〜2回分服 空腹時 副作用の強い時は食直後

【薀蓄等】徐放剤のためか胃の中では放出されていない鉄が大部分と考えられるので胃酸の影響は少ないため、食直後でもいいのかもしれません。

 

 

フェロミア

フェロミア

【組成・性状】クエン酸第一鉄ナトリウム(一般名)

       錠50mg(鉄として)

【効能・効果】鉄欠乏性貧血

【用法・用量】1日100〜200mg 1〜2回分服

【薀蓄等】徐放剤のためか胃の中では放出されていない鉄が大部分と考えられるので胃酸の影響は少ないため、食直後でもいいのかもしれません。クエン酸との化合物であるため、ビタミンC(還元剤)を併用する必要はありません。胃切除後や副作用も少なく高齢者の鉄補充に有用な薬です。

 

フェルム

フェルム

【組成・性状】フマル酸第一鉄(一般名)

       カプセル100mg(鉄として)

【効能・効果】鉄欠乏性貧血

【用法・用量】1日1回1カプセル

【薀蓄等】可溶性非イオン型鉄剤 胃内pHに影響を受けないためか、食前、食後といった用法の支持もありません。

フェジン

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【組成・性状】含糖酸化鉄(一般名)

       静注 40mg 2ml

【効能・効果】鉄欠乏性貧血

【用法・用量】1日40〜120mg(2〜6ml)2分以上かけて徐々に静注

 

フェジン®はコロイド化製剤であり、ブドウ糖以外と配合した場合、たとえ色調・沈殿などの外観変化が認められなくても、コロイドが不安定になり、鉄イオンが遊離する可能性があります。遊離した鉄イオンは、生体に直接作用して発熱、悪心、嘔吐などの原因となる可能性があります。また、フェジン®のワンショット投与では、一過性の頭痛、全身倦怠感、心悸亢進、悪心、蕁麻疹、顔面紅潮等の副作用が報告されており、2分以上かけて緩徐に静脈内投与がするように書かれています。(20%ブトウ糖で溶解)

 

フェジンの静注

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注射による鉄剤投与は、内服のできない場合の応急処置と考えても差し支えありません。鉄欠乏性貧血では鉄の投与開始から1週間前後で少しずつヘモグロビンが増加します。注射薬で鉄分を補う場合、目標とするヘモグロビン濃度と現在のヘモグロビン濃度の差から、治療全体を通して必要な鉄分の総量を計算します。その上で、初めは鉄分20~40mgの注射、数日単位で増量して(注射の場合には多くとも鉄分120mgまで)、総投与量に到達した時点で注射を終了します。総投与鉄量は、貯蔵鉄を加えた鉄量として計算します。(中尾式)

総投与鉄量(mg)= [2.72×(目標ヘモグロビン濃度(g/dl)-治療前ヘモグロビン濃度(g/dl))+17]×体重(kg)

例:体重が40kg、鉄欠乏性貧血でヘモグロビン濃度7g/dl。鉄剤の内服ができないために、注射薬でひとまず10g/dlまで改善を目指す場合。
[2.72 ×(10-7)+17]×40 = 1006mg

治療日 投与量(鉄)   鉄の総投与量
1日目 40mg      40mg
2回目 80mg(増量)  120mg
3回目 120mg(増量)  240mg
4回目 120mg     360mg
5回目 120mg     480mg(一度、血液検査)
6回目 120mg     600mg
7回目 120mg     720mg
8回目 120mg     840mg
9回目 120mg     960mg
10回目 120mg    1080mg(再度、血液検査、Hb10mg越えたら止め時を考えましょう)

 

フェジン®のpHが9.0~10.0と強アルカリであるため、静脈内投与する場合、血管外漏出しないように充分注意する必要があります。もし、血管外漏出した場合は、局所刺激(疼痛、知覚異常、腫膿など)を伴う組織壊死を生じることがあります。またフェジン®自体の色が暗褐色であることから、少量でも漏出部位周辺に色素沈着を生じます。血管外漏出した場合は、疼痛、腫脹などの局所での炎症症状が強い場合は、冷湿布により炎症を鎮めたり、局所麻酔剤により痛みを抑えたりします。その後、温湿布やかるくマッサージをして薬剤の吸収を促進させます。色素沈着は約半年~1年で退色するとの報告はあります。

 

鉄剤 Q&A

Q お茶や牛乳と飲んでもいいか?
A 理論的には、緑茶やコーヒーなどに含まれるタンニン酸と鉄が高分子鉄キレートを形成します。牛乳もリン酸塩やホスホプロテインと鉄が高分子キレートを形成し、鉄の吸収が阻害されると考えられています。制酸剤(酸化マグネシウム H2ブロッカー、PPI等)も胃内pHの上昇により難溶性の鉄重合体を形成すると言われています。しかし、臨床上では、鉄吸収効率が高まっている鉄欠乏性貧血の患者さんには影響したという報告はなく、通常は問題にならないと思われます。心配する患者さんには少し時間をずらして服用を勧めましょう。テトラサイクリン系、セフジニル(セフゾン)ニューキノロン系抗菌薬を併用すると鉄吸収が阻害されるので、服用時間を2〜3時間ずらすよう注意が必要です。

Q 副作用(吐き気、嘔吐等)で飲みにくい人は?
A 1回の服用量を減らす。(分2分3にする)1日の投与量を減らす。食直後に服用する。寝る前に服用する。剤型を変えてみる

Q 便が黒くなるのは?
A 便が黒色(または緑黒色)になるのは、未吸収の鉄によるものです。有害ではありませんが、患者さんに説明をしておかないとびっくりされたり、飲むのを止めてしまったりする原因になり得ます。

Q いつまで飲むのか?
A 赤血球数やホモグロビン値は1〜2ヶ月で正常値になります。但し見かけ上貧血が改善してもまだ貯蔵鉄が満たされていないので、最低でもフェリチン値が十分上昇するまで(目標値は50〜100ng/ml)3〜4ヶ月は内服するべきと言われています。

Q 鉄剤とビタミンCは併用した方がいい?
A ビタミンCは還元剤としての作用があり、鉄の吸収率のよい二価鉄の状態に保つ必要があります。しかし、鉄吸収率が高まる反面、胃腸障害の副作用が増大する(二価イオンの刺激による)こともあります。なお、フォロミア錠については、鉄吸収促進物質であるクエン酸との化合物であるため、ビタミンCを併用する必要はないことが報告されています。